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日本における「英語学習者」のボリュームゾーンを考えると、妥当な教材はTOEIC300~600点あたりを対象としたものとなります。本当は中学・高校のテキストで充分なのですが、ここの層は教材などがとても充実しています。

しかしTOEIC900を超えると、本屋で販売されている教材の選択肢の範囲が段々狭くなってきます。通訳になりたい!という人からすると、

  1. TOEIC満点を目指して勉強することがどれだけ役に立つのか分からない
  2. 通訳になりたい人向けの教材などはとても限られているし、値段が高い
  3. 勉強をしても自分の英語力が伸びた気がしない

など、様々な問題があります。ここでは、私が通訳学校の外でどのような勉強をして、TOEIC900から通訳になったかを書きたいと思います。

私は通訳になるために、辞書を一冊暗記しました。

私がおそらく最も時間を割いた勉強方法は、「辞書を一冊覚える」という方法でした。

(ちなみに辞書暗記に関してはアンチバベルの塔という超ハードコアなサイトがあります。私の考えはこのサイトの影響を多分に受けていますので、ご了承ください。興味がある方はいくつか記事を読んでいただくと、ウェブマスターの狂気に近い勉強への熱心さが理解できると思います。これと比べると私などはまだまだのレベルです。)

私が辞書を一冊暗記した理由をまとめると、以下の3点になります。

  1. この記事で書いたように、ノンネイティブの自分が通訳をするには単語力が足りないから
  2. 単語力が足りないという自覚があっても、効率の良い単語集がなかった(市販のレベルでは、買っても学べる事が薄くコストパフォーマンスが悪いと感じた)
  3. 英字新聞や英語ニュースから知らない単語を拾って調べるのが面倒に感じた

ちなみに、実際に暗記した辞書は、ワードパワー英英和辞典でした(今では結構忘れてしまっている単語もあると思いますが・・・)。

どうやって辞書を覚えたのか?

私の辞書暗記の方法をざっくりと紹介します。

単語カードを大量に買ってきます。(紙の枚数が少しでも多い製品を買いましょう。)


 
辞書をAからZまで読み進める。知らない、または覚える必要があると思った表現をカードの片面に英語で書き、もう片面には日本語で書く。(最初は以下のように、単語カードの束を、読んだ辞書のページ数で管理しました。)


 
ストックして、ひたすら覚える。(英語をみたら日本語を言える、日本語を見たら英語を言えるようにする)


 
ちなみに私の場合、辞書を一冊AからZまで読んで合計で82束(1束に80枚)できました。つまり覚える単語や用法が、80x82で6,560個です。単語カードを作成した時に1度覚えたとして、1日3束復習する計算だとほぼ1カ月で1サイクルできます。

辞書暗記って本当に効率いいの?

「単語を暗記したとしても簡単に忘れてしまうので非効率的」「文の流れの中などで覚えたほうが効率的」「自然な形で出会って覚えたほうが身につく」

等、様々な意見があります。私が辞書暗記をしたところの見解ですが、辞書暗記が一番効率がいいと思います(「辞書暗記をしていない自分」との比較はできません。ですので客観的ではない面もあるかと思います。)。

逆に、このカード暗記方法を否定する方に、以下の質問をしてみたいと思います。

質問1)新聞などを読みながら6,500個の新出単語を見つけるたびに辞書を引く・オンライン辞書で検索する手間を考えたことがありますか?

自然な形で出会ってから初めて辞書を引くよりも、1度覚えた後、忘れた頃に自然な形で再び出会い、そこで思い出したとなったらいいと思いませんか?本当の初見より、そのほうが定着しやすいと思いませんか?

質問2)自分が新聞などを読んで集めた表現と辞書作成者のスクリーニングが入った表現とを比較して、どちらの方がより公に認められている表現か、或いはどちらの方がエントリー通訳志望者が覚えるべき表現に近く、使用頻度が高いか、などを考えたことがありますか?

辞書を作成する側は、私よりも遥かにレベルの高い語学のプロです。そのプロが厳選した単語が掲載されているのが辞書です。

私の場合、29,000語という「通訳を志すものにとっては多分初歩的な単語」を覚えていないと厳しいと判断し、ワードパワー英英和辞典を選びました。

質問3)検索した6,500個で、定期的に効率よく復習するにはどうしますか?どうマネジメントしますか?

私の場合、「自分はどうせ覚えても簡単に忘れる」という前提に立って何度も繰り返し復習しました。私にとって最も効率がいい(無駄が無い)のが、単語カード形式でした(作成する時間はかかりますが)。

カードの束を、「最近覚えた」「最近復習してない」「復習しないで結構経つ」等のカテゴリーでざっくりと分けた上、上記の箱のような形で管理しました。

カードが復習に一番適しているのは、以下のように利便性に優れているからです。

  1. 組み替えたりシャッフルするだけで簡単に練習ができるので便利
  2. いつでも、どこでも、カードさえあればできる
  3. 苦手な物だけを集める、など束間での調整もしやすい

上記の質問にしっかりと回答できる方法を編み出せるのであれば、カードでなくてもそれをしていただければいいと思います。

辞書暗記だけしていればいいの?

通訳学校に通っている間に勉強したことで一番力になったのは以下をしつこくやり続けたことでした。

通訳学校の資料をしっかりと100%理解して暗記はもちろん、他にも、②英字新聞の多読・精読(時に量をこなす、時にちゃんと辞書を引いてしっかり読む)

Ipodで英語ニュースの多聴・精聴(量&質のバランスよく)・シャドーイングもした上で、④辞書暗記をしました。④の辞書暗記をすると、①②③の全てに対して良い影響を与えます。

単語暗記で覚えたものは「最初は使いにくい」。これは事実です。カードで1度覚えただけの単語は、認識言語であって使用言語ではありません。食物連鎖で例えると、最下層のミジンコぐらいのレベルからスタートします。

そこから、表現と何度も出会って使いこなせるように努力し、肉食動物ぐらいの上位のレベルまでランクアップさせないと意味がありません。

そのためには大量の英語に自分をさらす(Expose)必要があります。すると、覚えた単語が登場し、何度も触れる事で「定着」します。

例えるなら、辞書暗記で初見で出会って畑を耕して、英字新聞を読んだりポッドキャストでニュースを聴いて出会うことで種を撒いて、辞書暗記の復習で忘れていたのを思い出して刈り取って使いこなせるようになる、といった感じです(順番は状況で前後する事が良くありますが)。

ある英語教育業界の方が、「20回単語と出会うと使いこなせるようになる」とおっしゃっていました。だから20回出会うよう多読・多聴して勉強する必要があります。

でもそのサイクルを20回でなく8回くらいに、または5回くらいに減らせるのが辞書暗記の強みです。どこかで見たことがある単語や表現は一般的に覚え易い、それなら人工的に「見た経験」を作り出せばいいのです。

英語記事や英語ニュースなどに大量に接することも勉強パッケージに含めて6,500個の表現を覚えるとすれば、決して「非効率」ではない、むしろ「効率的」だと思います。

辞書暗記を続けるコツ

最初はつらいですが、一度やり始めると結構スムーズに作業に入れるようになってきます。運動と同じで、ある程度勢いがつくまで大変ですが、軌道に乗ると結構いけます。

ただ、辞書暗記をしたからといって、記憶力がよくなる訳ではありません。相変わらず忘れてしまう自分が嫌になったり、本当に悲しくなる事もあります。

そんな時こそ、カードに書いた単語や熟語を復習して使いこなせたらどんなに通訳が楽になるか、どれだけ新聞を楽に読みこなせるか、を想像しながら続けましょう。

1年位かければ全て日→英・英→日を言えるようになるだろう、それを夢見て頑張ろう!という気持ちで気長にコツコツ取り組むと案外楽しいですよ。

ただし、全ての英語学習者にお勧めというわけではありません。通訳学校の講師に「辞書を覚えている」と言ったらドン引きされたことがありますし、全くメインストリームの勉強法ではないという点をご了承ください。

私の体験談として読んでいただいて、エッセンスを感じていただければと思います。ちなみに、私が辞書暗記を始めたばかりの頃に知り合いと飲みにいったことがありました。

その席で、「学校の英語教員を辞めて、家に篭って英語の辞書を覚えている」と伝えると、私の気が狂ったかと思われました。しかし上記の様な説明をすると、しっかりと理解してもらえました。個人的には、本気で辞書暗記をやってよかったと思っています。

次回は、通訳・翻訳のキャリアの駆け出しについてまとめます。通訳としての始めの1歩を踏み出すには、どうしたらいいのでしょうか。

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矢野 文宏 (fumihiro yano)

現在は在シンガポール日系メーカーで通訳・翻訳として勤務。以前に印度で2年翻訳、1年半マレーシアで通翻経験もあり。通訳・翻訳者になる第一歩をサポートするやのなのね通翻研究所でSkype相談随時受付中! 他、海外の生活や旅行を書いた電子書籍を6冊出版。日々の海外での生活はブログにて紹介。 ツイッター@yanonanone
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