今回は、STRAILの中上級者向けの新教材を体験したのでレポートします。
どこのコーチングスクールも「初心者から上級者まで対応しています!」とうたっていると思いますが、実は本当に上級者まで満足させられるところってそんなに多くないんです。
というのも、上級者向けの高度な教材をつくるのは簡単ではありません。また、その教材をちゃんと教えられる講師を育てるのも大変で、時間とコストがかかるんですよね。
2022年夏、STRAILでは教材がリニューアルされて、中級〜上級者用の新教材が加わりました。
これはTOEIC900点超えの上級者にも対応した内容になっていて、教材の開発と合わせて、指導者の育成にも力をいれてきたとのこと。
そこで早速体験してきたのですが、先に結論から言ってしまうと、かなり高度なアウトプットトレーニングができる教材で、上級者でもスピーキング力アップの効果が期待できるものだと思いました。
この記事では、体験レポートと合わせて、今回のリニューアルされたSTRAILの教材内容などをまとめましたので、ぜひご参考にしてくださいね。
STRAIL(ストレイル)とは?
STRAIL(ストレイル)は、ベネッセグループのスタディハッカーが運営する話題の英語コーチングスクール。
コースは、以下の3種類。
- ビジネス英語コース
- TOEIC®L&R TESTコース
- 初級者コース
姉妹ブランドのイングリッシュカンパニーと共に、講師の専門性の高さが評判のスクールです。言語学やその周辺領域を大学や大学院で学んだプロが、第二言語習得論の知見に基づいたサポートをしてくれるので安心感があります。
STRAILの最大の特徴は、英語学習のコンサルティングに特化し、自習をメインにすることで価格を通常のコーチングスクールの半分以下に抑えていること。
週に1回、60分間のコンサルティングを受けて、自分の課題に合わせた自習プログラムを作成してもらうというスタイルです。そのため、どちらかというともともと独学で英語を勉強してきた方が多いようです。
当サイトにも受講者からの口コミがたくさん届いていますので、ぜひご確認くださいね。
コース | ビジネス英語コース TOEIC®︎ L&R TESTコース 初級者コース |
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コンサルティング | 3か月 60分 x 週1回 |
校舎 | 新宿、銀座、恵比寿、梅田、オンライン受講も可能 |
料金 | 336,600円 (別途入会金 55,000円) |
※ 料金は税込です
教材はどうリニューアルしたの?
今回の教材リニューアルのポイントは大きく2点です。
- The Japan Times「精選模試」シリーズの文章の導入
- ビジネス英語コースに最強の新教材が追加
The Japan Times発行のベストセラー問題集「精選模試」の文章が教材内で使われるようになりました。英文のクオリティが上がって、TOEIC対策にもしっかり取り組めます。
また、ビジネス英語コースに新教材「Listening & Speaking Practice」が加わりました。これは中級〜上級者向けのハイレベルな自習用教材だとのこと。
「リプロダクション」「リテリング」「サマライジング」など、通訳のプロも扱う手法を取り入れている本格派で、高い負荷をかけて「聞く&話す力」を鍛えます。
一つの英文を組み立て直して、それぞれの目的に応じてトレーニングしていきます。これによって超上級者の人でも課題を発見しやすくなったとのことですよ。
STRAILの中上級者向け新教材を体験!
早速、ビジネス英語コースの新教材「Listening & Speaking Practice」をオンラインで体験した様子をご紹介します。
STRAILコンサルタントの土井講師が担当してくれました。
このトレーニングで鍛えるのは、聞いた英文を
- メモ取りする力
- 説明する力
- 言い換える力(リテリング)
- 要約する力(サマライズ)
の4つです。
全部で9ステップあり、所要時間は1回40〜60分。3日間同じスクリプトを使ってトレーニングをするとのことなので、1週間で2本をこなす計算になりますね。
STRAILでは毎日1〜1.5時間ほどの自習プログラムが課せられるのですが、こちらを使う場合はこれがメイン教材という位置付けになるのかなと思います。
ステップ1:1st リスニング
まずはスクリプトを見ないで、全体の音声を1回だけリスニングする力試し。音声はスマホでテキストにあるQRコードを読み取って再生します。
今回は、「犬のしつけ教室の宣伝」という内容のスクリプトでした。
ただ、ここで負荷をかけられました。。。
講師:リスニングと一緒にメモをとってみてください。ビジネスシーンでミーティングの議事録をとったり、長めの英文を理解しないといけない時の良い練習になりますよ。
これは本格的な通訳トレーニングでも行う「ノートテイキング」で、ただリスニングをするのと比べて何倍もの負荷がかかります。
メモを取りながら聞くのってラクそうに感じますが、書くことに気を取られるので聞く作業に集中しにくいんです。私は英文は全て聞き取れましたが、メモはボロボロでした...(涙)
メモ取りに正解はないので、既に自分のやり方がある人はそれでOKとのこと。でも「コーネルメソッド」などのアイデアを入れたメモ設計法を教えてもらえるので、特に自分のスタイルがなければこれに慣れてみるのもいいと思いますよ。
ステップ2&3:単語確認〜2nd リスニング
文章中にでてきた単語やフレーズなどを確認し、再度リスニングします。
すると1回目より随分聞き取れるようになってきているので、先ほど書いたメモに情報を加えていきます。私も2回目は自分なりに記号を使うなどの工夫ができるようになりました。
講師:ノートテイキングは、一言一句メモする必要はありません。英語を英語の語順のままで理解することを体にクセづけするためのトレーニングです。
英語は日本と語順が異なるので、英語の語順で聞きながら、文の主要要素を拾い上げる必要があるんですよね。
ノートテイキングができるようになれば、英語でのビジネスミーティングなどで、相手がどんなに話が長い人であってもこわくなくなりますね(笑)
ステップ4&5:音読&サイトトランスレーション
ここでやっとスクリプトを目にして、音読します。一見簡単そうに思える「音読」ですが、ここでも中〜上級者にやってもらいたい大切なポイントがあるとのこと。
講師:音読の際、内容を考えずに文字を読むことだけに集中してしまうと、効果が薄くなってしまいます。小説を読む時のように、頭の中で内容が整理できている状態を目指します。
内容がしっかりと理解できたところで、先ほどのメモに情報を加えていき、完成版を作ります。これは次のステップで利用しますよ。
続いて、チャンク(意味のかたまり)ごとにパッと日本語で意味を答えるサイトトランスレーションの練習。英語と日本語を行き来することで、瞬発力が鍛えられます。
ステップ6:リテリング
続いて、リテリングを行います。このあたりから負荷がグッと高くなっていきます。
リテリング(retelling)とは「re(再び)+ tell(伝える)」、つまり自分が経験したことや見聞きしたことを伝えること。スピーキングの基礎力を鍛えるためのトレーニングです。
たとえばAさんとBさんの会話文スクリプトの場合、「Aさんと友人のBさんが、◯◯でXXについての話をしていて...」と状況の補足を加えながら第三者に伝えるための英文を作成します。
詳しく知りたい方はこちらのリテリングのやり方を紹介した記事もご確認くださいね。
講師:でもいきなり文章全体をリテリングするのは難しいですよね。まずは単語のパラフレーズをやってみましょう。
パラフレーズとは、言い換えの練習のことです。たとえばこの文章だと「controlled canine」は文脈上、「犬のトレーニングプログラムを提供している店」だと言い換えられますね。
講師:普通の一般名詞や副詞、形容詞の場合は、ぜひ英英辞典を活用しながらパラフレーズしてみてください。
英英辞典って電子辞書などに入っていたりしますが、どのように使えばいいのかわからなくて封印している、幻の英語学習ツールの代表格ですよね?(笑)
でも、英英辞典を使うことで、英語圏の人がその単語にもつニュアンスをつかみ取ることができます。上手に学習に取り入れられるととても強いツールになるんですよね。
このパラフレーズのために英英辞典を使い始める人も多いとのこと。細かいことですが、こうやってさりげなく正しい英語の自習法を教えてくれるのは嬉しいサポートだと思います。
ここまできたら、リテリングするための語彙やフレーズのベースができあがっています。
ステップ5で完成させた日本語メモと、パラフレーズした語彙メモを見ながら、リテリングにチャレンジ!するとあら不思議、自分の言葉でスクリプトを説明することができました。
ステップ7:リプロダクション
続いて行うリプロダクションは、英文を再現するトレーニングです。
ここで多くの人がやりがちなのは、英文を呪文のように覚えてしまうこと。
私も以前通っていた英会話スクールで、リプロダクションの宿題がでていたので、まさに無心で暗唱した経験がありますが(笑)、それだと全く身につきませんでしたね...。
リプロダクションのトレーニングには暗唱も含まれます。しかし単なる暗唱ではなく、発言の目的を意識しながら取り組むことでスピーキング力アップの効果が得られるんです。
講師:話す相手を具体的に想定しながら、英文を暗唱すると効果的ですよ。表面上の暗唱になってしまわないように、話す内容を自分で一旦整理してみることが大切です。
なるほど!
- 1文目は「勧誘」
- 2文目は「自社の訴求」
- 3文目は「問い合わせの誘導」
などのように、文章を分析するところからスタートしましょう、とのこと。文章の趣旨が理解できていると記憶にも定着しますし、文章の組み立てを考えながら暗唱できますね。
文中にでてくる名前を友人の名前に変えたり、電話でのやりとりをスマホ片手で暗唱したりすると、臨場感や適度な緊張が生まれて効果が高まるらしいですよ!
ステップ8:サマライジング
だいぶ負荷がかかってきましたが、ダメ押しで行うのが、文の要点をまとめるサマライジングというトレーニングです。
以前こちらの記事ではサマライジングを独学で行う際、最重要ポイントをピックアップして、それに肉付けする方法をご紹介しましたが、ここではステップ7の分析メモを利用して情報を統合して、そこから削っていくとのこと。
まずは日本語でサマライズ。それから、英語に直して完成させます。
「日本語で要点をまとめて、そこからまた英語にするのはまどろっこしいのでは?」と思い、土井講師に質問をしてみたところ、
講師:いきなり英語でやろうとすると、長くなりがちなんです。その理由は、なんとなく意味はつかめているけれど、抽象化して文章を整理できていないから。
とのこと。
今回は元の英文も短めでしたが、どんな長さでも通常サマライジングは3〜4文程度にすることが多いんです。長めの英文をいきなり英文サマライジングすると、5文、6文とついつい長くなってしまうそうです。
講師:サマライジングは、情報を分解して統合・編集するという言語能力を鍛えるトレーニングなので、英語にこだわらずに一旦日本語で行うとやりやすいです。
母語で編集ができないようであれば英語でもうまくできないということですね。納得です!
ステップ9:シャドーイング
最後はシャドーイングで締めます。音声をしっかり聞いて、正しい発音やリズムなどを体に染み込ませます。
内容、語彙、文法、言い換え表現などを全て確認したあとのシャドーイングになるので、イメージを頭に浮かべながら音声を聞き取ることができて効果が増します。
STRAILでは音声変化の記号を入れた独自のテキストがあって意外と便利なんですよね。シャドーイングが苦手な方でもきっと楽しくできると思いますよ。
STRAIL卒業生からも「この記号付き教材が欲しい」という声が多いオリジナルテキスト。今年から英語学習アプリ「イングリッシュカンパニーモバイル」でも見れるようになってますよ。
コンサルタントに質問してみました
体験後、コンサルタントの土井講師に気になったことを伺いました。
Q:ビジネス英語コースはどのような人向けのコースですか?
A:会議や商談の場面で通用する英語力を鍛えるだけでなく、コミュニケーションを円滑にするためのスキルを学んだりと、ビジネスシーンで必要な英語スキルを全て網羅したコースです。
Q:今回の教材は難易度が高いと感じました。ビジネス英語コースはこれをこなせるレベルが必要ですか?
A:今回体験していただいたのは、ビジネス英語コースの中でも最上位レベルの自習用教材です。初中級〜上級まで幅広いレベルの教材があり、生徒さんの課題に合わせて選びますのでご安心ください。
また、中学・高校英語からやり直し学習したい人向きの「初級者コース」や、トレーニング付きの姉妹ブランド「イングリッシュカンパニー」などもありますので、迷われている方は体験レッスンの際にご相談ください。
Q:このトレーニングは3日間同じスクリプトを使うとのことですが、毎日同じことをするのですか?
A:2日目はステップ5から、3日目はステップ6からスタートします。後半トレーニングのパフォーマンスの精度を上げていくことで、力がついていきます。
Q:これは自習用教材とのことですが、特に後半のステップで文法が正しくできているかなど気になるのですが...。
A:STRAILの自習プログラムの中には、「自己完結型」のものと、添削やネイティブスピーカーと話す必要がある「対人型」のものとがあり、これは自己完結型のものです。
英語の語順で理解するクセをつけたり、アウトプットを練習したりするための教材のため、文法などをさほど気にせずに進めてもらって大丈夫ですよ。
Q:やはりシャドーイングなどのトレーニングは、同じ文章を使ってなるべくたくさんやったほうがいいのでしょうか?
A:重要なのは完成度だと思います。1フレーズがまるまる落ちてしまうのであれば、そのスクリプトでまだやれる余地があるということ。
また、人によってリテリングは得意でもシャドーイングができないなどのようなこともあるのでバランスをみることも大切です。
私たちコンサルタントは、生徒さんの状況を見ながらオーバーラッピングを加えたり、シャドーイングの再生速度を遅くしたりと、プログラムを組み立てていくようにしています。
STRAILの新教材を体験した感想
良い点
- 最強の自習アウトプット教材!
- 本格的な通訳トレーニング法を利用
- 丁寧なステップ構成でわかりやすい
- メモ取りや英英辞典利用法も学べる
STRAILでは昨年からアウトプットトレーニングを強化していて、アセスメントにアウトプット問題を追加したり、VERSANT®スピーキングテストを利用したりしています。(くわしくはこちらの記事へ)
そこに加えて、今回は英語のプロが利用するメソッドをいくつも取り込んで、ひとつのスクリプトで総合的に鍛えられる自習用教材を完成させたので、これは最強だと思いましたよ。
アウトプットトレーニングを自己完結型で効果的に行うのって意外と難しいんです。この教材ではステップを踏むことで一人でも進められるようにうまく作られているなと感じました。
また、さりげなくビジネスシーンで困る会議のメモ取りの方法を学べるところや、英英辞典を使う機会を提供してくれるところもいいなと思いました。
気になる点
- 一人で続けるのは楽ではない
とはいえ、やはり高度なトレーニングであることは間違いないです。
特にステップ6以降は単体でも負荷のかかるトレーニングなので、慣れるまでは大変だと思いました。
投げ出さずに続けるためには(笑)、英語を上達させたいという強い気持ちが絶対に必要ですね。
まとめ
STRAILは本格的英語コーチングスクールでありながら、自習をメインとすることで低価格を実現しているスクールです。
そのため、どうしても自習でカバーしにくいアウトプットトレーニングが少なめな印象がありましたが、今回の教材を体験してその心配は消えたのではないかと思います。
もちろん英語力を伸ばすのにはインプットトレーニングで基礎力を構築することが最も大切です。それは近年の第二言語習得研究論などからもわかってきています。
とはいえ、やはり中上級者になると高度なアウトプットトレーニングも合わせて行いたいですよね。この教材はそのニーズにも応えるものになっていると感じました。
気になった方はぜひ体験レッスンで試してみてくださいね。