この記事では、英語学習法「パラフレーズ」についてご紹介します。
英語を話す時に「いつも同じような単語を繰り返しているかも...」と感じることってありませんか。
それも新しく単語やフレーズを覚えたからといって、すぐに活用できるかといったらそうでもありません。使える言葉にするのって意外と難しいんですよね。
パラフレーズとは英文の言い換えをするトレーニング。
とりあえず話せる英語から卒業して、ワンランクアップの英語に引き上げたい人におすすめの学習法で、スピーキング力、特に表現の幅を広げるのに有効です。
パラフレージングのやり方や効果、おすすめの教材などをくわしくご紹介しますので、ぜひ英語学習の参考にしてください。
英語のパラフレーズとは?
英語学習のパラフレーズとは、
英文の意味を変えずに、別の言葉を使って言い換える練習
を指します。
これはたとえば、
- I bought a huge apple.(私は巨大なりんごを買った)
という文を
- I purchased a king-size apple.
のように、別の単語やフレーズなどを使って意味を変えずに新しく作ること。この練習をすることで、実際の会話で使える言葉を増やしていきます。
ライティング力を鍛えるために、スクリプトを見ながら書いて行うやり方もありますが、ここではスピーキング力をアップする、聞いて話す方法についてご紹介します。
効果的なパラフレーズのやり方
パラフレーズの効果的なやり方をご紹介します。
- 音声とスクリプトのある英文を準備
- 英文全体を聞き、内容をつかむ
- 音読やリピーティング、シャドーイング
- 1文ずつとめて、パラフレージング
- 辞書などで答え合わせ
準備する音声素材はどんなものでも構いませんが、スクリプトがあるものを探してみてください。
まずは音読やシャドーイング、リピーティング(リプロダクション)などをおこなうと効果的です。リスニング力を鍛えることができて、パラフレーズもやりやすくなります。
言い換えしやすそうな文で行うことが大切で、パラフレーズしにくそうな文は飛ばしてOK。1文が長い場合は途中で区切って行ってください。
パラフレーズは自分が持っている知識のデータベースから、語彙やフレーズを引っぱり出して「使える言葉」にすることが第一の目的です。最初は何も見ないでおこなうと効果的。
とはいえ、間違った使い方が定着してしまうとよくありません。気になったものは、すぐに辞書の例文などで用法をチェックする習慣をつけましょう。
パラフレーズトレーニングの具体例
続いて、具体的なパラフレーズ例をご紹介していきますが、言い換えには、
- 単語や熟語を言い換える
- 構文を変えていく
- わかりやすく説明する
- 定型フレーズを練習
などのようにいくつもの種類があります。
文によってできるものとできないものがありますので、その文章でできそうなものを見つけてやってみてください。
それでは、それぞれのパターンでご説明していきます。
単語や熟語を言い換える
まずは単語や熟語などの言い換えですが、これはほとんどの文章でできます。
たとえば、このような文章の場合で考えてみます。
Please stop at the bookstore and look for a popular mystery novel.(本屋に寄って人気の推理小説を探してみてください)
やりやすいのは、名詞の入れ替えからスタートすること。
bookstore は、bookshop でもいいですし、駅の売店は bookstall とも言います。推理小説 mystery novel は、刑事モノならば detective story でもいけますね。
次に動詞を見てみましょう。
stop at(立ち寄る) は、go や visit などの動詞に置き換えられます。
- stop by
- go to
- visit
もしくは、stopを動詞から名詞に換えた熟語に言い換えることもできますよね。
- make a stop(立ち寄る)
次は形容詞や副詞などを見ていきます。この場合は、popular は、best-selling などでもいいですし、
- which sells the most(よく売れている)
のように形容詞句に変えることもできます。
ほかにも使える単語やフレーズはないだろうかと、とにかく頭をひねってみてください。
この場合、「Please」の代わりに「Why don’t you」を使って「ぜひしてみて」という提案のニュアンスに変えることもできますね。
知識として知っていても、データベースの奥底にしまっておくだけでは一生使えるようになりません。これはそこからひっぱりだしてあげるトレーニングです。
できあがった文章は、こんな感じになりますね。
「Please make a stop at the bookshop to find a best-selling detective novel.」
「Why don’t you go to the bookstore to find the mystery book which sells the most?」
構文を変えていく
次は構文を変えるパラフレーズについてご紹介します。
これはどの言葉から始めても文章を作りだせるようにする練習。注目するのは「主語」で、どんどん入れ替えていきます。
たとえば、次のような主語が「I=私」となる文章で試していきます。
I studied French in college.(大学でフランス語を勉強しました)
主語を「フランス語」に置き換えると、
French was what I studied in college.
になり、「フランス語を学ぶこと」にすると、
Studying French was what I did in college.
となります。また、構文は最初と変わりませんが、「大学では〜」から話し始めた場合は、
In college, I studied French.
と言えますよね。この4つの文章は若干ニュアンスは異なりますが、大きく意味は変わりません。
文章を一旦頭の中で組み立ててから話さないと心配で、なかなか口から英語がでないことってありますよね。この練習をしていくことでその不安が軽減されていきますよ。
実はこの方法を応用したパラフレーズは、プロの通訳者の訓練でも使われています。彼らは多くの選択肢の中から伝わりやすい最適な文をみつけるために利用しています。
つまりこのやり方は、最初は「こわがらずに話す」ための練習になりますが、次第に「伝わりやすい文を話す」ための訓練に変わっていくため、全レベルの人にとって有効なんです。
わかりやすく説明する
どんなに語彙力を鍛えていても、突然単語がでてこなかったり、適切な単語が思い当たらなかったりすることってありますよね。
そんな時に焦らずに対処できるようにするための練習としておすすめしたいのが、難しめの言葉をやさしい言葉で言い換えたり、解説をいれていくパラフレージング。
たとえば、
The demand for bicycle parking space surged in these three years.(自転車置き場の需要が急速に高まった)
という文章の中の動詞 surged(高まった)はややレベルの高い単語ですので、この場合、
The demand for bicycle parking space increased in these three years.
と、 increased (増えた)というやさしい言葉で言い換えてみます。単語の難易度を上げたり下げたりする頭の体操にもなります。
また、わかりやすく解説を入れていく練習をしたい時は、英語にはない日本特有の単語を使うとやりやすいです。
たとえば、次のような文章ですが、
She opened a Kodomo Shokudo once a week. (彼女は子ども食堂を週に1回オープンした)
「子ども食堂」は英語でぴったりな言葉がないので、「子どもたちのために無料もしくは格安で食事を提供する場所」だという説明を入れてみてください。
She opened a Kodomo Shokudo once a week, which is a place providing free or reduced-price meals to children.
これは、日本文化や習慣を説明する時にいつもしていることなのですが、日頃この練習をしているせいか、単語が浮かばない時に焦ることってあまりありません。
また、この練習をすることで、「相手に伝わりやすい言葉選びをしているかな?」と、常に考える習慣もついてきますよ。
定型フレーズを練習する
最後に、定型フレーズを次々とパラフレーズして、バリエーションを身につける方法をご紹介します。これは、特に会話文などを用いて進めやすい方法です。
たとえば「How are you ?」と聞かれて「元気です」と答えたい時、
I’m fine.
しか、手持ちカードがないと心もとないですよね。しかもこの言い方は、声のトーンや表情によっては「問題ないからほっといて」ととられることさえありますし...(汗)
なので、
「I’m good.」
「Pretty good.」
「Not bad.」
「I’m doing great.」
など、様々な定型フレーズを日頃から声に出して練習しておくといいです。
この方法を応用して、もう少し長い定型フレーズもどんどんパラフレーズして自分のものにしてしまいましょう。
その時大切なのは、なるべくいつも使っているものとは違うバージョンのフレーズを意識的に使ってみること。
たとえば、
Hold on, please.(少々お待ちください)
と言う電話応答の一場面のセリフが出てきた場合、
「Just a moment, please.」
「Could you hold on for a moment, please?」
「Could you hold the line, please?」
などのように思いつく限りのパラフレーズをしてみてください。
思いつかない場合はそういうタイミングで調べるのがベスト。その文章の情景を思い浮かべながら感情をこめて声に出してみると、印象に残って定着しやすいんですよね。
また、フォーマルな場面で使う定型フレーズも同じように練習することができます。
たとえば、お祝いの挨拶でこのような文があったとします。
Congratulations on the convocation of this symposium.(シンポジウムの開催、大変おめでとうございます)
この中の「Congratulations(おめでとうございます)」ですが、日本語でも
- 心よりお祝いいたします
- 心よりお慶び申し上げます
などと、いくつも丁寧な言い回しがあるように、英語でもフォーマルな定型フレーズがあるんです。
「I heartily express my congratulations…」
「I am delighted to extend my sincere congratulations…」
「I would like to extend my sincere and heartfelt congratulations…」
日本語でも同じですが、定型フレーズって練習しておかないといざという時にでてきません。
練習方法としては、フォーマルな文章を使って行ってもいいですが、普通の会話文を丁寧な言い方にする方法などもありますよ。
パラフレーズの効果とは?
効果① 語彙・フレーズの幅が広がる
パラフレーズを続けていくことで、語彙力、それも自分の言葉として使える言葉が増えていきます。
言葉は使うことによってのみ、自分のものとなっていきます。最初は借り物だった単語も、次第に自分の言葉になっていきます。
日本語でも大人の言葉遣いを習得していく過程と似てますね。
効果② 単語がでてこなくても焦らなくなる
言い換え力がついてくると、たとえ単語がでてこない時でも別の表現で伝えられるという安心感が生まれるので、英語を話す自信がついてきます。
また、相手の話した内容がはっきりしない場合でも「今言ったのは〜ということ?」と確認できるようになるので、英語でのコミュニケーション力がアップしますよ。
効果③ 適切な言葉選びができるようになる
パラフレーズ力がついていくと、言葉の選択肢が増えるだけでなく、その中から最適な言葉を選びとれるようになります。
相手やシチュエーションに応じて使う言葉は変わります。パラフレーズを続けていくと、内容を伝えるだけの英語から、正しく伝えるための自然な英語に変化していきますよ。
パラフレーズをする時のアドバイス
パラフレーズを行う時のポイントとして、
- わからない単語がほぼない文章で行う
- オンライン英会話などを活用しよう
- 類義語辞典を活用しよう
などがあります。
パラフレーズは、わからない単語がほぼないレベルの文章を使用することをおすすめします。ですので、シャドーイングなどをして既に慣れた文章を使うのは正解です。
初中級者は学習テキストからスタートするのがおすすめ。今は多くの教材で音声がついていますし、音声を1文ずつポーズできるので使いやすいです。
オンライン英会話なども、大いに利用することをおすすめします。単語の微妙なニュアンスなどはネイティブに教わるのがベストです。
「この2つの単語の違いは?」「こういう場面でこの単語を使ってOK?」「ほかにいい言い方はある?」などと、どんどん聞いてみてください。
独学のみで進める場合は、ぜひ英英辞典を活用してみてください。言い換えの語彙探しは類義語辞典が便利です。Thesauraus.comなど、オンライン辞典もありますよ。
リテリング、サマライズとの違いは?
英語のスピーキング力を鍛えるトレーニングとして、ほかには「リテリング」や「サマライズ」などがあります。
どれも英文の意味をとらえて自分の言葉で言い換えるトレーニングですが、内容は少しずつ違います。
内容 | もとの文章の長さと比べて... | |
---|---|---|
パラフレーズ | 1文ずつ、内容を変えずに自分の言葉で言い換える | ほぼ同じ長さ |
リテリング | まとまった文章を聞いたあと、自分の言葉で説明 | 少し短くなることが多い |
サマライズ | まとまった文章を聞いたあと、自分の言葉で説明 | 短くなる |
パラフレーズは、自分の言葉で英文を再構成するトレーニングです。1文ずつ内容を変えずに言い換えていくので長さはそこまで変わりません。
リテリングやサマライズは、まとまった文章を聞いたあとにおこなうもので、作り出す文章の長さが短くなるところがパラフレーズと異なります。
それぞれのトレーニングで効果が異なるため、組み合わせて行うこともできます。
パラフレーズにおすすめの教材
音読パッケージトレーニング(初級〜中級者向け)
おすすめの教材としてまずご紹介したいのは、ベストセラー学習教材の「音読パッケージトレーニング」シリーズです。
音読、リピーティング、シャドーイング用につくられた良質なテキストです。当サイトにもたくさんの口コミが届いているので、ぜひ確認してみてください。
本に沿ってシャドーイングまでのステップを行ったあとに、パラフレージングするのがおすすめです。
スーパーエルマー(初級〜上級者向け)
スーパーエルマーは、アメリカのニュース番組を素材にした英語教材です。TOEICのリスニング対策に効果があると評判で、英語を語順通りに理解できるように鍛えます。
音読パッケージと同様にこの教材では、1文ずつポージングもできるのでパラフレーズをするのにも便利です。
編集部では実際に体験もしていますので、気になった人はこちらの記事ものぞいてみてください。
NHKラジオ英会話(初級〜上級者向け)
ラジオという名前はついていますが、聞き逃し配信をウェブサイトに1週間アップしているので、今では多くの人がネット上で視聴しているNHKのラジオ英会話講座。
音声スピードを変えることができますし、テキストを購入すればスクリプトも全て揃います。紙版だけでなくデジタル版もあります。
レベルに合わせて講座を選んでみてください。中学英語を振り返る初級レベルから、上級者レベルの時事英語まで幅広く揃っていますよ。
TEDトーク(中級〜上級者向け)
中上級者以上で、教科書的ではない英語に触れたい人におすすめしたいTEDトーク。あらゆる分野の面白い人たちのプレゼンを無料でネット視聴できるってすごい時代ですよね。
英語のサイトですが、使い方は簡単です。テクノロジー、エンターテイメントなど、興味のある分野を選んで、言語と動画の長さを選ぶだけ。スマホで見る際は最初に「Browse all talks」をクリックしてみてください。
学習教材と違って話すスピードが速いのが難点なのですが、再生速度を遅くしたり、英語字幕を出すことが可能です。自分がなじみのある分野のものから始めるのがいいですよ。
まとめ
パラフレーズは言い換えをするという単純なトレーニングなので、あらゆる素材を教材に変えることできる学習方法です。
効果的に行うことができれば、リスニング力、記憶保持力、語彙力、瞬間英作文力、文法力など、様々な力を合わせて鍛えることができます。
いつもやっている英語学習の中に少し取り入れることもできますので、気になった人はぜひチャレンジしてみてください。