この記事では、英語学習法のリテリングについてご紹介します。
英会話ができるようになりたいと思って、単語やフレーズを練習したり、英語のドラマなどでリスニング力を鍛えたりしている人は多いと思います。
それは正しい英語学習です。多くの研究から、
- 語彙・文法の基礎力
- 聞く・読む
- 話す・書く
のステップで学習を進めるのが効果的だといわれていますので。(各学習法のステップについてくわしく知りたい人はこちらの記事をご確認ください)
とはいえ、いよいよ話す練習をしたいと思った時に「一体どこから始めたらいいの?」と、迷ってしまう人って結構多いんですよね。
そういう場合はオンライン英会話など気軽に始められるものからやってみるのも手です。しかし、聞き取りなどはある程度できても、英語が全然口から出てこなかった...という人もいるのではないでしょうか。
そんな人におすすめしたいのが、リテリング。自分の言葉で英文をつくる練習ができて、スピーキングの素地をつくります。
リテリングの効果的なやり方や、おすすめ教材などをご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
リテリングとは?
英語学習におけるリテリングとは、
英文を聞いて、それを第三者に英語で伝える
ことです。「ストーリー・リテリング」と呼ぶ場合もあります。
たとえばこのような会話文を聞いたとしましょう。
Bob:What did you have for lunch?(お昼は何食べたの?)
Tom:I had coffee and sandwiches.(コーヒーとサンドイッチを食べたよ)
Bob:What kind of sandwiches did you have?(何サンド食べたの?)
Tom :I had ham sandwiches.(ハムサンドだよ)
リテリングとはその文章を、
- Bob asked Tom what he had for lunch. And Tom answered that he had ham sandwiches.(ボブはトムにランチに何を食べたかを聞きました。すると、トムはハムサンドを食べたと答えました)
というように、誰かに内容を説明する練習です。
英語を話す時、多くの場合「英語を聞く→意見を考える→英文をつくって声にだす」というステップを踏みますが、リテリングでは「意見を考える」という部分が省かれます。
また、元の文章から使う単語などのヒントをもらえるので、「英文をつくって声に出す」ことにより集中できるんですよね。
つまりリテリングは、今までインプットしてきた知識をアウトプットにつなげるための、スピーキング初心者に最適なトレーニングといえるのではないかと思います。
VERSANTや学校教育でも活用
リテリングはスピーキング力を鍛えるのに効果的な学習法だと言われていて、話す力を評価する指標としても使われています。
スピーキング力を測るテストとして有名な「VERSANT」でも、リテリングを行う問題が含まれていますよ。
VERSANTのパートEはリテリング問題(公式サイトより引用)
また、学校教育でも近年注目されていて、中学校や高校の授業でも取り入れられ始めています。
というのも、学習指導要綱が刷新され、今や中学でも「自分で考えて簡単なスピーチができる英語力」の養成が求められているんですよね。
学校で行うリテリングは、クラスの前での発表がセットになっていて、自分の意見を加える方式などの発展型も現れていますが、この記事では独学でできる学習法についてご紹介します。
効果的なリテリングのやり方
リテリングを効果的に行うには、
の順番でおこないます。
それでは、ひとつひとつご説明していきます。
ストーリー性のある英文を聞く
まずはストーリー性のある英文の音声とスクリプトを準備してください。会話文でも説明文でもどちらでもOKですが、最初は30秒くらいの会話文がやりやすいと思います。
例として、NHKラジオ英会話のウェブ上のオンデマンド音声+市販テキストを使って学習した場合についてご紹介します。
最初のリスニングではスクリプトは見ないようにしましょう。大切なのは内容や流れを頭の中でしっかりイメージしていくことです。
この英文は、ヘレンとギャリーの二人が、最近公開されたアクション映画「ラーミネーター15」についての感想を話し合っているというお話。
映画自体は二人とも楽しんで鑑賞したようですが、ヘレンはいつも同じセリフで終わるエンディングにがっかりしてしまったようです。シリーズものでありがちなことですね(笑)
キーワードを挙げる
次は、音声を聞きながら、内容を説明するのに必要だと思うキーワードをピックアップしていきます。
今回私は、
- Ramenator 15
- last ten minutes
- I’m back
- fans
の4点をメモしました。
このステップでは、基本キーワードを挙げるまででOKですが、慣れてきたらここで一度リテリングにチャレンジしてみてみてください。
リピーティング、音読で語彙・表現の確認
次は1文ずつ声に出しながら、語彙やフレーズなどを確認していきます。
様々な研究結果から、リテリングと音読を組み合わせると語彙などが定着しやすいとわかってきています。ぜひしっかり声にだして発音してみてください。
最初はスクリプトを見ないでリピーティングし、その後スクリプトを見ながら音読。
オーバーラッピングやシャドーイングで、発音やリズムを確認するのもおすすめです。
ラジオ英会話の場合は、語彙やキーセンテンスなどの説明がありますので、そこを聞いて再度リピートします。パラフレーズをして、表現力の幅を広げるのも効果的。
ここで、先ほど挙げたキーワードを精査して追加や入れ替えを行います。私はテキストで紹介されていたキーセンテンスを加えることにしました。
- The movie was spoiled by the ending.(エンディングで映画は台無しになったよ)
英語でリテリング
いよいよ、リテリングを行います。
スクリプトを伏せて、先ほどのキーワードを参考にしながら、内容を知らない誰かに伝えるつもりで英語で説明してください。
まずはキーワード「Ramentor 15」を使って、全体の状況を説明。
Helen and Gary are talking about the movie “Ramenator 15”.(ヘレンとギャリーは映画「ラーミネーター15」について話しています)
続いて、二人の全体的な映画の感想です。
They both enjoyed the movies.(二人とも映画を楽しんで鑑賞しました)
次にキーワード「the last ten minutes」と追加した「the movie was spoiled by the ending」を使って、ヘレンの感想を伝える文を作ります。
But Helen didn’t like the last ten minutes and thinks that the movie was spoiled by the ending.(しかし、ヘレンは最後の10分が気に入らず、エンディングのせいで映画は台無しになったと思いました)
それに対するギャリーの考えを「I’m back」や「fans」で表します。
However, Gary thinks that the last line “I’m back” was expected by fans.(しかしギャリーは、”I’m back” のセリフはファンが期待したものだったのではないかと思いました)
意味が合っていれば、言葉や構文を変えたりと、文章をパラフレージングしてしまってOKです。暗記する練習ではありませんので。
大切なのは、頭にイメージとして記憶したことを自分の言葉で英文として組み立てること。新出単語などを意識的に使ってみることで、言葉の幅が広がりますよ。
リテリングの効果とは?
リテリングにはどのような効果があるのでしょうか。
- スピーキングの基礎力が高まる
- 要点がつかめるようになる
- 語彙や表現が定着する
ひとつひとつご紹介していきます。
効果① スピーキングの基礎力が高まる
リテリングを続けていくことで、自分の言葉で英文をつくることに慣れていくため、スピーキング力がついていきます。
リテリングは、今までインプットしてきた知識をアウトプットにつなげる役目を果たします。リスニングはできてもアウトプットが苦手という人におすすめです。
効果② 要点をつかめるようになる
リテリングは英語表現を再現するのではなく、内容を理解してそれを伝える練習です。
そのため、ストーリーをイメージとして記憶することに意識がいきますので、単語や構文などに意識をもっていかれずに、話の要点を聞き取れるようになります。
効果③ 語彙や表現が定着する
リテリングをしながら学習すると、語彙や表現が定着しやすいと言われています。やはり受け身ではなく、自分で考えて英文をつくる過程があることが大事なんですよね。
効果的に学習するためには、本文の音読やリピーティングを合わせてしっかり行ってください。定着力がぐっとあがりますよ。
リテリングをするときのアドバイス
次は、効果的なリテリングをするためのアドバイスをご紹介します。
- 単語の意味がほぼわかる文章で行う
- イメージをつくって記憶しよう
- オンライン英会話も活用しよう
単語の意味がほぼわかる文章で行う
リテリングは、キーワードを挙げるところまではスクリプトを見ないで行うのが効果的。そのため、単語はほぼわかるレベルの英文を使うことをおすすめします。
自分の読める英文レベルより、一段階やさしい英文を選びましょう。ちょっと簡単すぎるかなと思っても、リテリングしようと思うと意外と難しいと感じると思います。
イメージをつくって記憶しよう
英文を何文か続けて聞いていくと、次々と登場する単語に意識がいってしまって、どんどん内容が流れていってしまうことってありますよね。
記憶にとどめるためには、文章をできるだけ鮮明にイメージしてみることが大切。これはプロの同時通訳者などもおこなっている技。
登場人物はどんな表情をしているのかな、この食べ物はどんな味がするのかな、などのように五感を使って想像を膨らませながら聞くといいですよ。
オンライン英会話も活用しよう
リテリングは、実践スピーキングの準備練習だとはいえ、自分で新たな文章をつくる学習法。きちんと伝わる英語を話しているのか心配になることもあると思います。
そんな時に活用したいのがオンライン英会話。いつでも入退会できますし、通学型のスクールに比べて格安です。自然なフレーズに直してもらいたいのであれば、やはりネイティブ講師に教わるのがおすすめです。
たとえば、キャンブリーだとネイティブ講師の週1レッスン x 30分で月4,219円〜。「リテリングをやりたい」とレッスンの冒頭に講師にお伝えしてみてくださいね。
パラフレーズ、サマライズとの違いは?
リテリングと同じようにスピーキング力を鍛えるトレーニングとして、「パラフレーズ」や「サマライズ」などがあります。
どれも英文の意味をとらえて自分の言葉で言い換える手法なのですが、若干内容が異なります。
内容 | もとの文章の長さと比べて... | |
---|---|---|
パラフレーズ | 1文ずつ、内容を変えずに自分の言葉で言い換える | ほぼ同じ長さ |
リテリング | まとまった文章を聞いたあと、自分の言葉で説明 | 少し短くなることが多い |
サマライズ | まとまった文章を聞いたあと、自分の言葉で説明 | 短くなる |
パラフレーズは1文ずつ行いますが、リテリングとサマライズはまとまった文をひと通り聞いてから文章づくりを行うところが違います。
リテリングとやり方が最も似ているのはサマライズ。
リテリングだと若干長さが短くなるのに対して、サマライズだと長い文章でも通常は3文程度にまとめるので少し高度かもしれません。
それぞれのトレーニングで効果が異なるため、組み合わせるのも効果的です。
リテリングにおすすめの教材
イングリッシュカンパニーモバイル
話題の英語コーチングスクール「イングリッシュカンパニー」が運営するスマホサービスのイングリッシュカンパニーモバイル。Nikkei AsiaとThe Japan Times Alphaの英文記事を使用した教材が、週に11本配信されます。
買い切りの教材と違って話題が新鮮なので、世界の情報をキャッチしながら英語学習をしたい人におすすめのサービスです。レベルも初中級から上級までありますよ。
これはアプリとはいえ、英文を読むスピードをあげるための本格的な英語トレーニングができるサービスなんです。リテリングと合わせてシャドーイングなどにもチャレンジしてみてください。
料金は月4,378円〜。気になる人は、編集部で体験をしてみたこちらの記事を読んでもらえると様子がわかると思います。
音読パッケージトレーニング
「音読パッケージトレーニング」シリーズは、初級者から中級者向けのベストセラー英語学習教材。定価1,870円です。
この本には30秒ほどの、中学英語レベルで書かれた英文が数多く掲載されているので、リテリングをスタートするには最適な一冊です。
もともと、音読やリピーティング、シャドーイングができるように作られた教材ですので、リテリングと合わせて行うことをおすすめします。
当サイトにもたくさんの口コミが届いているので、ぜひ確認してみてください。
スーパーエルマー
アメリカのニュース番組を素材にしている、スーパーエルマー。英語を語順のまま理解できるように工夫されたTOEIC対策としても人気の英語学習教材です。
初中級用と中上級用の2タイプありますのでレベルによって選んでみてください。どちらも1セット32,780円です。
音声はCD、PCブラウザ、スマホの3種類の方法で聞くことができるので使い勝手がいいですよ。
教材の内容についてもっとくわしく知りたい人は、こちらの体験記事をご確認ください。
NHKラジオ英会話
幅広い英語レベルの講座があるNHKラジオ英会話。小学生の英語からビジネス英語まで揃っています。
リテリングにおすすめなのは、中学英語を総復習する「ラジオ英会話」。
ウェブ上に聞き逃し配信を1週間アップしているので、いつでも聞くことができますし、テキストも1ヶ月ごとに購入できますので、思い立ったらすぐに始められますよ。
まとめ
リーディングやリスニングはある程度できるのだけれども、スピーキングは苦手だという人におすすめしたいリテリング。スピーキングの基礎力をつけることができます。
また、リテリングをしていくことで、話の流れや要点などをつかむ練習にもなるので、英語の読み・書き・会話が全て同時に鍛えらる学習法です。
ぜひ興味のある内容の教材をみつけて、楽しみながら練習してみてください。