こんにちは。英検1級、TOEIC満点のKyokoです。オーバーラッピングの進め方、効果、教材について書いていきます。
オーバーラッピングは、音読やシャドーイングに比べるとマイナーな学習法ですよね。「オススメされたけどどうやるの?」「どんな教材がいいの?」「効果あるの?」と悩んでいる人も多いのではないでしょうか。
そこで、約20年の英語学習経験のなかで色んな学習法を試してきた私が、オーバーラッピングについて詳しく解説します!先に書いておくと、オーバーラッピングの効果には、
- ネイティブらしいリズムや強弱に近づける
- スピードの速い英語に口が慣れてくる
などがあります。が、オーバーラッピングだけを何百時間もやっても、思ったほどの効果はないかもしれません。シャドーイングなど他の「音を聞いて声を出すトレーニング」とかしこく組み合わせるのが大切ですよ。
オーバーラッピングとは?
オーバーラッピングとは、
スクリプト(文字)を見ながら、お手本の音声と同時に声を出す
という学習法です。
英語はコミュニケーションのためのものですよね。静かに文章を読むだけでなく、耳や口を使うこと、音を聞いたり声を出したりすることはとても大切です。
これはスポーツとも似ています。本を読んでボールの蹴り方やルールを学んでも、筋トレしたりプレイしたりしないとサッカーは上手くならないですよね。
英語も同じで、初心者でも「耳から情報を入れる」「口の筋肉を動かす」ことは大切。文法や読解ばかりやってきた私たち日本人にとって、オーバーラッピングは、いい稼働系トレーニングなのです。
シャドーイングとはどう違うの?
オーバーラッピングとシャドーイングを混同してしまっている方が意外といるようです。シャドーイングとは「お手本の音声の0.5~1秒後(1~2単語後)を追いかけるようにして声を出すトレーニング」です。
英語上級者であれば、初めて聞いた英語をシャドーイングすることもできます。
一方でオーバーラッピングは、音声とまったく同時に声を出すので、スクリプトを見ずにいきなり行うのは不可能ですよね。これがシャドーイングとオーバーラッピングの大きな違いです。
オーバーラッピングの効果って?
最初に書いたとおり、オーバーラッピングには、
- ネイティブらしいリズムや強弱に近づける
- スピードの速い英語に口が慣れてくる
などの効果があります。それぞれ見ていきます。
ネイティブらしいリズムや強弱に近づける
オーバーラッピングではネイティブ音声と同じタイミングで自分も声を出しますよね。そこでスピードやリズムに気をつければ、ネイティブらしいリズムや強弱に近づくことができますよ。
ですが、なぜネイティブらしいリズムや強弱に近づくことが大切なのでしょうか。実は「英語らしく聞こえる」ためだけではないんです。
コミュニケーションにおいて、話の中身や言葉のチョイスが大切なのはいうまでもありません。ですが、感情や真意を伝えるうえで「リズムや強弱」もかなり重要。
例えば、まったく同じ文章でも、どの単語を強めるかで印象が変わることはよくあります。
例えばAかBか迷ってAにしたけど、やっぱりBが正解だった、という場面。左の「I knew it.」がよく使われます。「分かってたのに!」というイメージ。
一方でみんなが驚いている新事実に対して「自分は知ってたけどね」とドヤるときには「I knew it.」となります。全然ニュアンスというか、使うべき状況が違いますよね?
他にも「Excuse me.」だと「(通りたくて)すみません」と相手の注意を引きたいときに使えますが、「Excuse me?」でトーンを上げてしまうと「何言ってんのよ!」とケンカを売ってしまうことに。
オーバーラッピングは、シチュエーションや自分の意図に合わせた「リズムや強弱」を身につけるのに役立つのです。
スピードの速い英語に口が慣れてくる
オーバーラッピングは、自分の好きなスピードで声を出せる音読と違って、お手本の音声のスピードについていく必要がありますよね。
英語とスポーツは似ています。ネイティブスピードで英語を声に出す「実践」は、口の筋肉トレーニングとなり、繰り返していれば段々と体が慣れてくるのです。
そうすれば自分がスピーキングをするときにも、少しは口が動きやすくなります。英語の口ができあがるという感じでしょうか。
ですがオーバーラッピングだけで、リスニングやスピーキングのスピードが飛躍的に上がるとは思わないようにしましょう。
何度も読んだスクリプトを見ながら声を出すのと、初めて聞く話を理解したり自分で考えた意見を発したりするのは別モノです。ネイティブとの会話やディベートなどの練習も不可欠ですよ。
オーバーラッピングの進め方
オーバーラッピングの効果が分かったところで、詳しい進め方を見ていきましょう。
まず「お手本の音声を聞く+自分も声に出す」というトレーニングにはいくつか種類があります。難易度は、
というような感じでしょうか。
音読やオーバーラッピングはスクリプトを見て行うので、ハードルは低め。一方でリピーティングやシャドーイングは最終的にスクリプトを見ずにできるのが目標なので、かなり難しいのです。
それぞれの学習法には異なる効果があるので、ひとつの教材を使って上記の学習法を組み合わせるのがいいですよ。前置きが長くなりましたが、オーバーラッピングの進め方です。
- スクリプトを見ずに音声を聞いて、概要を把握する
- スクリプトを見ながらリピーティングをする
- 音読をする
- 分からない単語やフレーズを調べる(=精読)
- オーバーラッピングをする
- スクリプトを見ずにリピーティングやシャドーイングをする
数々のヒット本を出している森沢洋介著の『音読パッケージ』を参考にしつつ、オーバーラッピングを加えてみました(ちなみに各ステップを「できた!」と思えるまで繰り返しやってみましょう)。
ステップ5で初めてオーバーラッピングをするわけですが、そのとき気をつけるべき点がいくつかあります。
オーバーラッピングの注意点とアドバイス
文脈がある、簡単めな教材を選ぼう
見たことも聞いたこともないというレベルの単語は、ほぼゼロという教材を選びましょう。つまりスクリプトを見れば、楽々と意味が理解できるレベルということです。
これは知らない単語が多いと、その場では意味を調べて文章全体のイメージがつかめても、お手本と同じスピードで声を出すのは難しいためです。
また音読やシャドーイングでも同じですが「意味を理解しながら聞く/読む」ことで英語力は伸びていきます。なので意味をイメージしながらオーバーラッピングするためにも、簡単めな教材を選びましょう。
お手本との「ズレ」に注意を払おう
オーバーラッピングは「音声と同時に自分も声を出す」トレーニング。ひとつひとつの小さな音の違い(子音や母音)は聞こえにくいのですが、お手本と自分のスピードがズレだしたら気がつきますよね。
またお手本にはポーズがあるのに自分はポーズを入れず読んでしまったり、お手本が強調している部分を自分は棒読みしてしまったり、ということも。このような「スピードやリズムのズレ」に注意を払いましょう。
そして1回目より2回目、2回目より3回目のほうが、お手本と自分の声に「ズレが少ない」状態にしていきまましょう。これを意識すれば、先ほどの「ネイティブらしいスピードや強弱が身につく」という効果を実感できますよ。
スマホで録音して再生しよう
オーバーラッピングが初めての方だと、小さな「ズレ」に気づくのは難しいかもしれません。そんなときは、オーバーラッピング中の音(お手本の音声+自分の声)をすべて録音してしまいましょう。
そして録音した音声を聞けば、スピードやリズムのズレがよりリアルに聞こえてきます。
オーバーラッピングにオススメのアプリや教材
実はオーバーラッピングに特化した教材というのは、ほとんどありません。音読やシャドーイングの教材と同じように、
- ニュースや会話など、文脈があるもの
- 音声とスクリプトがついているもの
- 自分にとって難しすぎないもの
という基準で選べばOKです。
ちなみにドラマやYouTubeなど、字幕はあるが全スクリプトがいっぺんに表示できないものはNG。字幕が切り替わる瞬間には音声が始まるので、オーバーラッピングが間に合わないからです。
またドラマやYouTubeだと人によってスピードやリズムが違いすぎるので、英語学習用の教材や、はっきりと丁寧に話されているプレゼン動画が向いていると思いますよ。
音読パッケージトレーニング
「リピーティング+音読+シャドーイング」を組み合わせて効果的にリスニング力を伸ばせる教材。
音読のあとにオーバーラッピングを入れてみましょう。そうするとスピードやリズムに慣れることができ、最終目標である「スクリプトを見ないシャドーイング」が楽になると思いますよ。口コミ(14件)はこちら。
TOEICや英検のリスニング問題集
TOEICのリスニングは、内容自体は難しくありません。特にTOEICを控えている方は、公式の問題集を使って、リスニングパートをオーバーラッピングしてみるのはいかがですか?
ちなみに英検は5級~1級まで選べるので、どんなレベルの方にも対応していますよね。
TED Talks(サイト)
TEDとは、政治家やノーベル賞受賞者、ジャーナリストなど、色んな分野で活躍している人のプレゼンや講演会を無料で閲覧できるサイトです(口コミはこちら)。
興味のある分野のプレゼンを選んでオーバーラッピングしてみるのがオススメ。ハードルは高めですが、スピードやリズムに注意すれば、ネイティブらしさがアップすると思いますよ。
スタディサプリ(アプリ)
リクルートによるスマホ用アプリ。レベルに合ったストーリーを選んで、音声を聞きながら、自分も声を出してみましょう。
楽しいストーリやナチュラルな会話が多いと評判なので、これを使ってオーバーラッピングしてみるのもアリですね(口コミはこちら)。月額2,178円~です。
Audipo(音声の速度変換アプリ)
最後にオーバーラッピングに役立つアプリの紹介。「音声が速すぎる!」と感じたら、まずは0.8~0.9倍速にしてみましょう。
Audipoという音声速度変換アプリは、iOSにもAndroidにも対応しています。iPhoneだとApple Musicに入れた音源を、自由に速度を変えて再生できます。
私はWESTLIFEというアイルランドのアーティストのIt's Youという曲を選択。そうすると曲がこのアプリ上で再生されるので、右下の「x1.0」というボタンを押します。
すると「0.5~2倍速」までスピードを変えられるのです。スピードを変えてもトーンが高くなったり低くなったりはしませんよ。使いやすくて便利でオススメです!
オーバーラッピングはスピードやリズムに効果あり!
オーバーラッピングは、スクリプトを見ながらお手本の音声と同時に声を出すトレーニング。オーバーラッピングそのものには、
- ネイティブらしいリズムや強弱に近づける
- スピードの速い会話に慣れることができる
などの効果があります。ですがオーバーラッピング自体はスクリプトを見るためハードルが低め。
まずはスクリプトを見ずにリスニングし、耳からの情報を理解するトレーニングをすること。最後は負荷の高いシャドーイングに挑戦すること。その過程でオーバーラッピングを取り入れるのが効果的ですよ。
ぜひ試してみてください!