年の大半を外国のお客さんと旅する通訳ガイドのMarikoです。岡田祥吾氏の「英語学習2.0」を読みましたが、これはやる気がでる英語学習本だ!と思いましたのでご紹介します。

「英語学習2.0」

英語を本気で身につけるぞと思っても、まず何からやったいいのか、そして忙しい日常の中で果たして学習時間を捻出して続けられるのかなど、いろいろ心配ですよね。

私はこの本を読んで迷いが晴れました。超多忙なビジネスマンであった著者が、1日3時間の学習時間を確保して、苦手だった英語を克服した様子が書かれていましたので。

とはいえ、これは気合でがんばれ!という本ではありません。岡田祥吾氏は現在、短期で効率的に英語力をあげると評判の英語コーチングスクール「プログリット」の代表。

科学に基づいた効率的な学習法などを、リアルな経験談をはさみこみながら理論的に解説しています。

この本のすごいところは、まず多くの英語学習者が挫折しがちな学習時間の捻出法から丁寧に説明しているところ。私でもできそうだと学習意欲が湧いてきますよ。

この記事では、この本の中で特に面白かったポイントや、よかった点、気になる点、読んでもらいたい人などをご紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。

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    著者プロフィールと出版の背景

    まずは、著者と出版の背景についてご紹介します。

    著者の岡田祥吾氏は元マッキンゼー

    岡田祥吾氏は1991年、大阪生まれ。大学卒業後、世界的な外資系コンサル会社・マッキンゼーに入社し、日本企業の海外進出などのプロジェクトに携わります。

    マッキンゼーに入社したからには、昔から英語が得意だったのだろうと想像されがちですが、入社当時は英語がとても苦手で相当苦労したとのこと。

    英語の会議で全く聞き取れず、発言もできない。英語ができないことで仕事の能力が低いとみなされてしまう。これではいけないと一念発起して英語を徹底的に学習したといいます。

    そんな岡田氏は2016年に英語教育をおこなう会社を起業します。英語で苦労した自分だからこそやる意義がある。そんな思いでプログリットという英語コーチングサービスを開始したそうです。

    世界で戦えるビジネスパーソンを増やすために

    岡田氏は自分自身でも英語に苦労してきていますが、英語ができないことで活躍の場が狭くなっていたり、実力を低く評価されたりしている日本企業のビジネスパーソンをたくさん見てきました。

    起業の際、世界で戦える日本のビジネスパーソンを一人でも多く輩出するために、共同創業者と「日本一英語力が伸びるサービスを創ろう」という目標をたてたそうです。

    マッキンゼーのビジネスで用いる問題解決アプローチを使いつつ、最先端の言語学の知見を取り入れた、科学的根拠に基づいた効率的な勉強法。

    それがプログリットでの学習メソッドであり、「英語学習2.0」に書かれている内容なんです。

    「英語学習2.0」の特徴

    「英語学習2.0」

    この本は約200ページで、じっくり読んで2〜3時間ほど。価格は単行本で1,540円です。

    内容は大きくわけて、

    1. 著者の学習経験から得た学び
    2. 言語学の知見や学習のポイント
    3. 具体的な英語学習法

    の3部構成になっています。

    まずは、英語が苦手だった著者が英語教育で起業することになるまでの経緯とそこでの気づき。続いて、まちがって理解されがちな英語学習法についての解説や言語学の知見を紹介しています。

    そして、最後に具体的な学習法の紹介へと続きます。

    それでは、各パートで興味深かったポイントを順にご紹介していきます。

    著者の英語学習経験から得た学び

    著者は、試行錯誤しながら英語学習を進める中、英語学習の重要なエッセンスをみつけだしていきます。

    英語が伸びるカギは「自習」にある

    週に一度、1時間程度レッスンを受けるくらいで英語力が上がるほど、英語はあまくない

    英語力をアップさせたいなら「日々の自習」はマストです。たりまえのことですが、これは意外とみんなできていないことで、まわりの英語習得者もはっきりとは言ってくれないもの。

    そして誰もが仕事や日常の雑務に追われる中、たとえば英会話スクールに通い始めたりすると、その時間を捻出しただけで自分はエライと満足してしまいがちです(笑)

    著者も最初に選んだのは週1回のスクール通い。しかも仕事が忙しいからと、復習もせずに通いっぱなしでいたところ、半年通っても全く効果は現れなかったといいます。

    様々な研究から、言語を習得するためには3,000時間程度の学習時間が必要だといいますので、社会人になってから最低1,000時間は必要なんです。

    週1回の英会話スクールだけでは圧倒的に学習時間不足。著者はそれに気づき、1日3時間の自習を始めたところ1年ほどで習得するのですが、やはりそのくらいの覚悟が必要だと喝を入れられた気がしました。

    著者はその後、学習計画を細かく立てていきますが、睡眠時間はきっちりと確保したそうです。このあたりのバランスの大切さも書き綴っていて、とても参考になりますよ。

    最先端の言語学の知見を利用する

    英語力 = 学習生産性 X 投下時間

    英語力を伸ばすためには、学習の生産性を上げるか、投下時間を増やすかのどちらかしかない、と岡田氏はいいます。

    まるでビジネス書で仕事効率の話をしているかのようなこの切り口は、さすが元マッキンゼー!なんとなく理解していることも、公式になっているとスッと入ってきます。

    まずは一定の学習時間の確保が必須。著者の場合は、徹底的に仕事を効率化させて、夜中までかかっていた仕事を19時に切り上げることに成功し、1日3時間の学習時間を捻出します。

    学習生産性をあげるためには、自分に合った学習法をおこなうことが大切です。そして、最先端の言語学の知見に基づいた勉強法で効率的に進めるのがいいとのことです。

    この公式は英語学習にかかわらず、何か新しいことをやりたい時にも応用できそうですよね。

    言語学の知見と英語学習法

    次は、言語学の知見を応用して、著者がたどりついた学習メソッドについて。

    英会話の5つのステップ

    まずは、英会話の5つのステップについて。多くの英語学習本が、様々な概念図を作成していますが、これはとてもシンプルで秀逸です。

    「英語学習2.0」
    出典:岡田祥吾『英語学習2.0』(角川書店 2019)

    この図が示すのは、私たちが、相手の言葉を「リスニング」し、そのあと「スピーキング」につなげる時に、瞬時にいくつかのステップを踏んでいるということ。

    リスニングには「音声を知覚する」というプロセスがあって、その後「意味を理解」します。そして、話したいことを「概念化」して、「文章にして」から、「声にだし」ます。

    1. 音声知覚(リスニング)
    2. 意味理解(リスニング)
    3. 概念化(スピーキング)
    4. 文章化(スピーキング)
    5. 音声化(スピーキング)

    そして、そのステップごとに自分の「知識データベース」にアクセスして、必要な単語や文法などの情報を引き出しているといいます。

    つまり、リスニングとスピーキングは異なるステップで行われていて、鍛えるべきスキルが違うんです。そして、語彙・文法などの知識が足りないとどれもうまく機能しません。

    この図をイメージできていると、自分に弱いところはなんだろう?と考え始めることができますよね。話せなかったのは語彙不足?それとも音声が聞き取れていない?

    また、語彙や文法などのインプットが一番大事だと言われる意味がとてもよく理解できます。特に初心者はデータベースがないため、基礎学習から始めるのが正解といえます。

    「目的思考」が学習効果を最大化する

    英語学習において、自分が取り組んでいる学習の目的を明確にすることが大事

    シャドーイング瞬間英作文、多読、音読、スピーキングなど、効果的だと言われる英語学習トレーニングもいろいろあり、既にいろいろ試した人も多いかと思います。

    その時大事なのは、「これは5つのステップの中のどのスキルを鍛えているのか」を常に理解しながらトレーニングをおこなうことだといいます。これは筋トレと同じ原理。

    それを考えないでやっていると、音の知覚のためのヒアリングのトレーニングなのに、わからない単語でとまって辞書を引き出してしまったりするんですよね。

    また、英会話レッスンが個別スキル強化のためのトレーニングではなく、全てのスキルをあげる「練習試合」のようなものだという指摘にも納得。

    その視点で考えれば、真っ先にやるものではないこともわかりますし、それを週1回やるだけで英語力アップを期待するのは、無理があることも理解できます(笑)

    具体的な英語学習方法

    「英語学習2.0」

    最後に、具体的な学習法やそれらを実践する際の注意点などが紹介されています。その中でも、特に興味深かったものを3つピックアップしました。

    音の変化をマスターしてリスニングを制する

    音の変化を理解していないと聞き取れない。

    リスニングは、音声知覚と意味理解が必要であるとご紹介しましたが、音声知覚ができない人の多くが、英語の「音の変化」を理解していないといいます。

    英語の音の変化には、たとえば、

    1. 音の連結 stand up
    2. 音の消失 good morning
    3. フラップのt water
    4. 弱形 him

    のようなものがあります。

    音の連結は子音+母音が重なると音が「スタンッ」と繋がることで、音の消失とは破裂音のあとに子音がくると破裂音dが消えて「ッモーニン」となること。

    そしてフラップのtは、母音に挟まれたtが「ウォ」のようにラ行になること。

    弱形はこの中でも最も地味なのですが、最も大事な変化。これは代名詞や冠詞、前置詞などが、強調する場面以外ではとても弱い音になるというもの。

    実際の会話では、himは「ィム」くらいに聞こえると書いてありましたが、これには大いに納得しました。学校で習った「ヒム」という発音は、実践ではあまり登場しないんです。

    この音の変化は知識として理解するだけでなく、音読するトレーニングが必要とのこと。声にだして練習することをおすすめしています。

    シャドーイングで音声知覚の自動化

    シャドーイングをする目的は、ズバリ「音声知覚の自動化」です。

    シャドーイングは、英語の音声を聞きながら、すこし遅れて発声するトレーニング。英語がある程度聞き取れるようになった人に有効と言われる学習法です。

    有名なので一度は試したことがある人もいるのではないと思いますが、効果があるのかわからないままやめてしまう人が多いトレーニング方法だとのこと。

    やめてしまう多くの人はこれが「音声知覚の自動化」が目的だと理解していないといいます。やはりここでも問題となるのが、トレーニングの目的思考がないことなんです。

    音声知覚が自動化されれば、脳内のメモリを「意味理解」にまわせるようになります。そうすることでリスニングが楽になるとのことです。

    また、単純なトレーニングなのでどんどん次の音源に進みたくなりますが、それでは効果が薄れてしまうとのこと。

    1つの音源について、100〜150回程度シャドーイングするのがよい

    このやり方は私も試したことがあります。プロの通訳者の指導で、ひとつのTED動画を数ヶ月かけてシャドーイングをしたのですが、最後はスラッスラになったんです。

    その時は、単に暗記してしまったのかな?と思っていましたが、脳内で音声知覚の自動化をおこしていたなんて驚きです。確かに同スピード程度の音声は聞き取りやすくなりました。

    トレーニングのやり方を調べても目的までくわしく説明されてないことって実は多いですよね。しかし、これでは効果が半減しますので注意が必要。

    英会話の仕組みの概念図をしっかりと理解して、常に自分でどんなスキルを鍛えているのかを考える習慣をつけることが大切ですね。

    オンライン英会話で英語思考を身につける

    オンライン英会話のレッスンを効果的にするためには、レッスンの方法をあなた自身がコントロールする必要がある

    オンライン英会話を使った学習法についての提案も面白かったです。それは、スピーキングの「概念化」のトレーニングとして使う、という方法。

    英語と日本語では話す時の文章の組み立てが違います。日本語の起承転結と違って、英語だと、結論ファースト、そのあとに理由を2、3述べる、のような型がありますよね?

    オンライン英会話のフリートークでその練習をする、というのが著者のアイデア。何かしらのトピックスについて事前に準備し、それを聞いてもらってコメントをもらうというもの。

    ここでも目的思考をもって自らレッスンをリードしていくことで、オンライン英会話のポテンシャルを最大限に活用できるんですよね。

    私たち通訳ガイドも、実はガイディングトークをオンライン英会話講師にチェックしてもらったりしています。作成したプレゼンを聞いてもらう場として利用する方法はとてもおすすめですよ。

    今は便利なサービスやアプリがたくさんあります。せっかくなのでどんどん利用していきたいですが、やみくもに使うのではなく自分用にカスタマイズできると最強ですね。

    「英語学習2.0」の良かった点

    • 読み物として面白い
    • 英語学習は甘くないとしっかり言ってくれる
    • 言語学の知見をわかりやすく説明している
    • 具体的な学習法なども豊富
    • 私たちがよくいう言い訳に喝をいれてくれる

    この本は読み物としても面白い本です。

    社会にでてぶつかるビジネス英語の壁や、仕事と英語学習の両立の大変さなど、等身大の20代の青年のストーリーから始まり、わくわくしながら読み進めていくことができます。

    最新の言語学の知見なども書かれていますが、わかりやすく説明してくれています。ついつい間違って理解していた英語学習の知識をアップデートすることができますよ。

    また、「英語はそんなに甘くない!」などのような喝を入れてくれるのも特徴。読み終わったあとに、やる気がむくむくと湧いてきます。

    「英語学習2.0」の気になった点

    • おすすめ教材などが一箇所にまとまっていない

    これは英語学習法を紹介する本なので、実際の教材はついていないのですが、おすすめの学習法や適切な教材の情報などは、全体に散りばめられています。

    気になる学習法を見つけたら、ポストイットなどをつけておくと、読み終わってやってみようと思った時に便利かと思いました。

    「英語学習2.0」はこんな人に読んでほしい

    • 英語学習をこれから始めたい人
    • 学習を進めていて喝を入れてもらいたい人
    • 最先端の言語学の知見について知りたい人
    • 効率的な学習方法について知りたい人
    • プログリットに興味がある人

    英語をこれから学びたいと思っている人には、まず読んでいただきたい本です。最新の言語学の知見を一通りおさえることができますし、学習の進め方のポイントがわかります。

    現在、既に英語学習をしている人で、少しやる気が落ちてしまった人にもおすすめ。目が覚めるような喝をいれてもらえます。

    また、この本はプログリットの学習メソッドを惜しみなく公開している本。

    パーソナルトレーニングは3か月で50万ほどしますが、こちらは千円台。プログリットが気になっている人は、まずはこの本を読んでみるというのもアリだと思いましたよ。

    もしくは、この記事を読んでプログリットに興味をもった人もいるかもしれませんね。その場合は、ぜひ公式をチェックしてみてください。無料カウンセリングを受けることができますよ。

    一緒に読みたい英語学習本

    「英語学習2.0」で英語学習に論理的思考が大切だと痛感した人におすすめしたいのが森沢洋介氏の「英語上達完全マップ」。

    著者は、自ら国内で英語を習得した経験をもとに、多くの日本人の英語力をアップしてきた現役英語教師。

    音読パッケージや瞬間英作文などの手法を用いて、論理的かつ現実的な視点から、英語学習法をワンステップずつ具体的に提示しています。

    実際に自分を含めた生徒が実践した、日本人が日本にいながら英語を話せるようになる方法を紹介しています。

    まとめ

    「英語学習2.0」は英語学習の本ですが、実は英語でなくても何かの目標に向かってがんばっている人みんなに、通じることが書かれています。

    どうやって時間を捻出するのか、どんなことに気をつけながら進めると効率的か。情報過多な時代に必要な、要素をピックアップして概念化することの大切さなども学べます。

    気になった方はぜひ本を手にとってみてくださいね。

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    Mariko

    幼少期をイギリスで過ごし、大学では国際関係学を専攻。卒業後、旅行会社、秘書、グラフィックデザイナー、コンサルタントなどを経たのち、2016年より英語の通訳案内士に。外国人のお客さんと日本各地を旅しています。
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