フィリピン

前回の記事では、私の英語に関してアメリカ式の発音をマスターしたフィリピン人講師から集中砲火にあった話を共有しました。

授業だけでなく、フィリピン人講師・学校経営者・生徒と話をする機会もありました。その中で、

日本人の初級~中級英語学習者は、フィリピン留学でしっかりしたフィリピン人講師に習うのがおすすめ

と思いますので、今回はその理由を説明したいと思います。

理由① 社交的で陽気、フレンドリーなフィリピン人の性格がプラスに作用

総じてフィリピン人は明るく、先生として仕事をするときもポジティブに接してくれます。

生徒側で説明が分からない時、まだまだレベルが低くて上手く伝わらない時でも、先生は前向きに受け止めて、柔らかく建設的なコメントをくれます。

ある意味でフィリピン留学の先生は「サービス業」で、学校は「教習所」のようなものです。生徒の時間を少しでも気持ちよくして、さらに勉強に励んでもらえるように「おもてなし」を精一杯してくれます。

もちろん、英語ネイティブの先生でも良い人はいます。今まで私が接してきた中で、素晴らしい先生もたくさんいました。しかし平均で考えると、フィリピンの人の方がこの点では上だと思っています。

理由② ノンネイティブなので使用言語がほぼ12,000語以内

前回の記事で、発音に関してはかなり高度な授業も可能だと書きました。しかし会話で使われる語彙や表現の難易度はネイティブレベルではない、というのがフィリピン人講師の特徴です。

以前、東南アジアの通訳・翻訳のレベルについての記事を書きましたが、そのなかで「ノンネイティブ相手の方が通訳が楽だ」というお話をしました。

フィリピン人もベースはノンネイティブであるため、使用語彙に自然と制限が入ります。

つまり使用頻度が高く平易な表現や単語を使う事が多いので、学習者が将来目指すべき1、2歩先の英語力を持つ人が教えてくれるわけです。

例えば、「説明する」という表現においては、まずは"explain"を使いこなせるようになるべきですが、中学2年生レベルを勉強している人に対して、ネイティブだと言い換え表現として"elaborate"という比較的高度な単語を教えたり、または授業中に説明無しで無意識に使う可能性があります。

レベルが高めの語彙を習うのは時に意味がある事ではありますが、基礎を優先すべきだと思います。こういった問題はフィリピン人講師では比較的少ないようです。

理由③ 比較的聞き取り易い発音の英語を話す

日本人は「英語を習うなら、やはりネイティブ」という信仰がとても強いように感じています。しかし、「英語ネイティブ」といってもピンキリです。

ニュージーランドやオーストラリアにも訛りがありますし、イギリス系でもスコットランドやアイルランドなまりがある人もいます。

こういった人の発音は日本人にとってあまりなじみが無いので、リスニングの精度が落ちてしまいます。

フィリピン人講師の話す英語の方が、こういった癖のあるネイティブの英語よりも聞き易いのです。

私が実際に話をした印象としては、しっかりスクリーニングされたフィリピン人講師の話す英語を厳密にみると、97%文法・発音的に正しく、きれいなアメリカ英語を話します。

逆にこの3%がどうしても気になるのなら、フィリピン人講師は向いていないと思います。私が話す英語も文法的には完全ではないですし、日々修行が必要だと感じます。

ノンネイティブが「完璧な英語を話す」事は難しい面もありますが、個人的な印象ではフィリピン人講師の話す英語で初級・中級英語学習者がエラーとして認識できるものはほぼ無い、またはごくわずかな印象です。

それが「伝染する」事も心配する必要がないマイナーなものだと思います。発音に関して言うと、むしろ癖のあるネイティブ英語の方が初心者には厳しいと感じています。

理由④ 費用が圧倒的に安い

当サイトの記事「高い?安い?大手英会話教室の料金相場」によると日本または英語ネイティブの国でこのレベルの先生とマンツーマンで授業をすると、1時間当たりの料金が5,000円を軽く超えるようです。

それに比べて、フィリピン留学のマンツーマンクラスはとても格安です(滞在費を考慮しても1時間当たり2,000円いかないでしょう)。

ただし生徒が完全な初心者だと、中学レベルの英語でも授業は「暗記」または「サポート」になってしまいます。もちろんフィリピン人講師は根気強く対応してくれますが、暗記なら日本で一人もできる内容です。

良心的な学校はこの「非効率な時間」を少しでも減らすため、留学前に最低限のレベルをクリアしてから来れるように、事前カウンセリングやコーチングをしてくれるところがあります。

こういったサービスがある学校の方が、効果的に勉強出来ると思います。

以上、簡単に理由を4個書きましたが、上記には条件が付きます。「しっかりしたフィリピン人講師が指導をするなら」という条件です。

「しっかりしたフィリピン人講師」とは?

私が思いつく限りではありますが、以下に「しっかりしたフィリピン人講師」の条件を書いてみたいと思います。

  • 英語の先生としての業務経験が年単位である
  • TOEICや文法テストを採用時にしても、問題なくクリアできる知識と運用能力がある
  • (アメリカ式の)英語の発音がちゃんとしている
  • 先生としての立場を理解して、生徒の成長をサポートできるように努力をしている
  • 人柄が明るく前向きで、生徒へのフィードバックも建設的

できれば、

  • 英語教授法(CELTATESOLなど)の資格、または英語を大学で専攻

もあると尚良いです。簡単に書いていますが、これを満たす人材を見つけるのは本当に大変です。ある学校の運営者は、

「給料は相場以上出している。求人を出しても、選別が大変。ちゃんとした先生1人を採用するのに、何回かスクリーニングをかけて、5人候補者がいても1人も採用できないことが普通。」

と言っていました。比較的小規模の学校ですが、中々大変なようです。

先生の質は学校によって偏りがあるので注意

先生の品質管理はどこの学校も共通の課題のようですが、大規模校の方が質の維持が難しい印象です。大手の学校では100人単位の先生を擁する学校もあります。

今回はちょうど、そういった大規模スクールを辞めて小規模校に移ってきた生徒さんがいたので、直接本人に話を聞いてみました。

簡単にまとめると以下のような話でした。

  • 学校内部の問題で先生の一斉離職が起き、先生を大量採用したら、質の良くない先生が入ってきた
  • その結果、新卒で経験が無い人、またはアルバイト学生が入ってきた
  • TOEIC500後半の生徒から見て、間違いを指摘できるレベルの人が先生として採用されていた
  • ただし、昔から長期間働いている先生には良い先生もたくさんいた

もちろん、大規模校が悪いということではなく、これはただの一例でしかないのですが、この方は上記の話が転校理由の一つになったようです。

他にも、人づてに聞いただけではありますが、長期休暇で来る日本人大学生用に休暇前に大量採用して、休暇シーズンが終了すると解雇する、という酷い話も聞きました。

季節労働者的な採用・集客をした方が経営側としては儲かるでしょうが、それで授業や教師のクオリティを保てるのか、本当に「英語留学」として成果が上がるのかは個人的には疑問です。

また、英語が上達してTOEICで800後半になってくると使用語彙や表現のレベルを更に上げていく必要がありますが、そこに対応できる教師は更に限られてきます。

TOEIC800レベルの語彙・表現を問題なく使いこなせるようになったら、フィリピン留学は卒業して、ネイティブと英会話をするか、専門用語を使った練習をする段階に入ってきます。

そのため、やはりフィリピン留学はTOEIC350〜600の方達におすすめ、と言えると思います。

次回は「しっかりしたフィリピン人講師」に、日系スクールで日本人相手に教えるのはどういった印象なのかをインタビューしてみたので、その内容をまとめてみたいと思います。