photo by Shane Global

オンライン英会話スクール「ワンズワードオンライン」を運営して6年になるが、日本人英語学習者に対して未だ懐疑的な気持ちがある。

当社はずっと「レッスンの質」を重視して運営してきており、さらに最近では「多様性」ということも重視して、メキシコシティ在住のアメリカ人やメキシコ人、ブエノスアイレス在住のアメリカ人やアルゼンチン人、さらにはエストアニア在住のウクライナ人が英語を教えている。

オンライン英会話といえばフィリピン人だが、率直に言ってフィリピン人とばかり話していても、「飽きる」のではないかという思いがある(もちろん、フィリピン人を軽視するつもりはなく、当社でも何人もの優秀なフィリピン人講師を雇用している)。

英語を学ぶ目的を「外国人と英語でコミュニケーションを成立させる」と仮定すると、多種多様な人たちと話した方がためになるし、またこれからの時代、各国特有のバックグラウンドを理解することはとても重要だ。

そうすれば日本の常識なんて世界では通用しないことがよく分かるし、新聞には載っていないような各国のリアルな情勢が理解できる。

パリにテロが起きればフランスにいる友人のことを気にかけると同時に、イスラエルや中東の友人のことが気になり、世界の見方が一方的ではなくなる。

英語習得に近道はない

TOEICを批判する人のなかに、「TOEICで900点を取っても、英語を話せない人がたくさんいる!だからTOEICは間違っている!」と言う人がいる。なんども言うがTOEICは足切りテストではない、よってその批判は的外れだ。

TOEICで高得点を取ることだけを目指して英語を勉強しても一向に英語を話せるようにはならない。テストとしての難易度はそれほどでもないので、ある程度の英語力とテクニックで高い点数は取れてしまうからだ。

(テストの難易度でいえば、当然東大に合格するほうがTOEICで900点取るより100倍難しいと思う。)

また、「3ヶ月留学すれば、TOEIC200点アップは確実!」というのは正しくもあり、間違ってもいる。TOEIC400点の人が3ヶ月留学してきちんと毎日英語を学習すれば、600点を取るのは難しくない。

しかし、600点の人が3ヶ月留学して、800点を取るのはそれなりに難しいと思う。理想をいえば、英語4技能(聞く、話す、読む、書く)をきちんと学習して、折を見てあまり受験対策をせずにTOEICを受験して、自分の英語力を測るというやり方が望ましいと思う。

ケンブリッジ試験のように4技能すべてを勉強する必要があれば、テスト勉強自体が英語力向上になるが、TOEICの場合はスピーキングとライティングが欠けている。

(その批判に応えて、英語のスピーキングとライティング能力を測るTOEIC SWが開発されたのはとてもいいことだと思う。)

英語は道具であり目的ではない

日本では英語習得自体が目的になっているように感じる。だから、その証としてTOEICがあり、英検などの資格試験がある。彼らはきっとそれらを手にして、「自分たちは英語をマスターした」と言いたいのだろう。

英語はただのコミュニケーションツールだ。そのツールを使って、「なにをするか」が問題であり、それ自体を目的とするとおかしなことになる。

自分が英語学習を始めた目的もあくまで「世界中の魅力的な人たちと話したい」という思いであり、そのあとスペイン語を習得したのも同じ理由からだ。

日本人がTOEICで高得点を取ることを「英語習得の」と捉えている限り、「外国人と英語でコミュニケーションを取る」なんてことはおぼつかない。

TOEICや英検等の資格試験自体が目的となってしまうと、試験の「攻略法」を探すことに一生懸命になってしまい、本来の目的であるはずの「外国人と英語でコミュニケーションを取る」ことを忘れがちだ。

こんなことはTOEICを作った北岡さんたちは想定していなかっただろうし、TOEIC普及に努めた坂井さんもこのような状況を嘆いていた。そして、自分自身も日本人英語学習者に対して覚える違和感は、そこにある。

英語学習は、究極的にはスポーツや音楽と同じように、いかに自分で努力して自己学習するかにかかっているであり、魔法のような英語学習方法を探すことに躍起になっていては、いつまで経っても英語がきちんと話せるようにならないだろう。

次回はこのことを掘り下げて、最終回にしたいと思う。