photo by Alberto G.

日本人は勤勉な民族だと思う。アルゼンチンに2年、メキシコに2年住んでみて、つくづくそう思う。TOEICの問題は、TOEICというテスト自体にあるというよりは、その日本人の国民性にある気がしてならない。

お勉強」が大好きなあまり、足切りテストでもないTOEICでも一生懸命勉強して、高得点を目指す。受験するのだから高得点を目指すのは当然だと思うが、それに特化して勉強しても英語力自体は向上しない。

TOEICを作った北岡さんの尊い理念だった「日本人ビジネスパーソンの英語によるコミュニケーション能力の向上」というものは、TOEIC受験に猛進する人たちから決定的に欠け落ちている。

英語との関わり合い

自分と英語の関わり合いは、意外と長い。母親がその年代の人にしては珍しく20歳そこそこのときにイギリスに半年に留学しており、その流れでずっと家で英語を子供達に教えていた。

生まれた町は京都の嵐山という田舎で、町には英会話教室なんて他にはなかったので、けっこう繁盛していた。姉と自分は半ば強制的に通わさせられたが、正直それほど英語に興味を持てなかった。

英語の先生の息子」という色眼鏡で見られ、英語が出来て当然という環境だったので、それでやる気を削がれたこともある。ただ、小さい頃から母の友人である外国人が家に出入りしていたので、外国人は身近な存在だった。

中学から英語が義務教育になったので、それであっさり友人たちに抜かれて、ますます英語に興味がなくなり、それがずっと高校まで続いた。だが、高校3年のときに「卒業旅行」と称してバイトで貯めた金でヨーロッパに行った。

それが転機となった。旅の途中で魅力的な人々との出会いがあったが、いかんせん英語が出来なかったので、もどかしい思いをした。

それにこれからの時代は、英語が出来ないと話にならないと心底思った。だから、1年ほどバイトをしてお金を貯めて19歳で語学留学した。

それでも、まだ舐めたガキだったので、半年か1年もあれば英語をマスターして、ペラペラになると思ったが、当然そんな奇跡は起こらなかった。結局、2年もイギリスに留学することになった。

1年目に通ったスコットランドの語学学校は、フランスの学校と提携していたので、多くのフランス人が在籍していた。

彼らは1年間交換留学という形で留学しており、特に勉強している様子はなかったが、みんなが揃いも揃ってケンブリッジ試験のFCE(First Certificate in English)を受けるというので、自分も受けることにした。


英語4技能 資格・検定試験懇談会より)

TOEIC換算でいうと785点前後ということだが、1年留学して真面目に勉強すれば、まず合格できるテストだと思う。フランス人の彼らと違い、自分は語学留学とは別に週3回のプライベートレッスンを受講していた。

またその先生から英語を教わったと言っても過言ではないほど彼は親身になって教えてくれたので、英語力は格段にアップした。だから、それほど苦労せずに合格した。

2年目は上級クラスに入ったが生徒も少なく、いまいちやり甲斐もなかった。それにスコットランドの冬はやたらと寒く暗いので、冬の間はインドへと旅をすることにした。

3ヶ月の間インドで過ごして、それから4月から始まる「ケンブリッジ上級試験(CAE)対策コース」に入った。

自分のブログ(語学学習に役立つ自己否定について)にその経緯は詳しく書いたが、紆余曲折の末、CAEにも合格した。当時はTOEICのことなど知らなかったが、TOEICに換算すると945点とのことだ。

旅で出会った外国人たちと英語でコミュニケーションが取りたい」というのが強い動機となって始めた英語学習だったので、英語の資格やテストには全く興味がなかった。

だから、それから坂井さんと知り合うまで他に英語のテストを受けることもなかった。

ライトハウス時代、同僚のHさんに「松岡さんなら、別に勉強しなくてもTOEICで900点くらいは取れるよ」と言われたので、それを鵜呑みにして何も勉強せずに受験して実際に900点は取れた(ちなみにHさんは英検1級合格、TOEIC970点だ。世の中、上には上がいるものだ)。

TOEICの誤差はプラスマイナス50点と言われているので、ある程度正確に自分の英語力は測られたとは思う。徹底的に受験対策すれば、もっとスコアはあがるだろうが、英語によるコミュニケーションに別段不便を感じていないので、そんなモチベーションはない。

20年も前に受けたケンブリッジ試験だが、CAEに関してはとても難しいと感じたことを今でも覚えている。だから、TOEICを受験したときは本当に拍子抜けした。

テストとしてはあまりに簡単だったからだ。ただこれは足切りテストではなく、受験者の英語によるコミュニケーション能力を数値化するという目的に沿って作られているので、ある意味正しい姿だと思う。

次回(起業と英語とTOEICについて その4)はこの問題をもっと掘り下げて書いてみたいと思う。