年の大半を外国のお客さんと旅する通訳ガイドのMarikoです。今回は、イングリッシュカンパニーの英語学習本「マンガでわかる 最速最短!英語学習マップ」のレビューをご紹介します。

イングリッシュカンパニー「マンガでわかる 最速最短!英語学習マップ」

家の本棚に、読んだだけで満足してしまった英語学習本が並んでいたりしないでしょうか。やる気はあったのだけれども、イマイチ自分に合わないことってありますよね。

どの学習法も誰かが成功したやり方なので間違った方法ではないのですが、万人が成功するとは限りません。というのもみんなスタートやゴール、学習環境などが違いますから。

この本がほかの学習本と大きく違うのは、読者の「現在地」、つまりスタート時の英語レベルを診断してくれるところ。そしてそのレベルに最適な学習法を教えてくれます。

それもよくある「初級」「中級」などのざっくりとしたレベル分けとは違います。

「あなたはゆっくり読めば理解できるフェーズ」などのように具体的な分析をした上で「課題」を見つけ出してくれるんです。

自分の英語力をきちんと把握したい人には、特に自信をもっておすすめしたい一冊。本の特徴やよかった点、気になった点などをご紹介していますので、ご参考にしてください。

記事の目次

著者プロフィールと出版の背景

まずは、この本の著者や出版の背景についてご紹介していきます。

著者はイングリッシュカンパニー

イングリッシュカンパニー 公式サイト

この本は、今話題の英語コーチングで有名なイングリッシュカンパニーが出している英語学習本。

イングリッシュカンパニーは、第二言語習得研究の知見を落としこんだ英語のパーソナルジムで、数多くの受講生の英語力を向上させています。

合理的、科学的に賢く学ぶことによって英語学習を効率化したい、というのがイングリッシュカンパニーの設立時からのポリシー。

この人気の英語パーソナルジムで、短期間で受講生の英語力をアップさせている秘密の学習メソッドを一般に大公開してくれています。

出版の背景

運営母体のスタディーハッカーのスタートは、大学受験予備校から。そのため、日本の英語教育事情を熟知しています。

日本では中学・高校でたくさんの時間を使って英語を学習しています。しかし自信をもって話せる人は多くなく、文法中心の学校教育が批判されたりもしていますよね。

そんな英語学習者たちが報われてほしい。今までの学習を土台にしてできる、科学的に正しいとされる効果的な学び方を伝えたい。この本にはそんな思いがこめられています。

「マンガでわかる 最速最短!英語学習マップ」の特徴

この本は多くの学習本よりひとまわり大きいA5版で文字量も多め。しかし、タイトルからもわかる通りマンガが差し込まれているため、飽きずに読み進めることができます。

レイアウトがきれいで見やすいのも嬉しいポイント。230ページほどの本で、じっくり読んでも3〜4時間ほど。音源をダウンロードして行う例題なども含まれています。

内容は大きく3つのパートに分かれています。

  1. 間違った英語学習法について
  2. 「第二言語習得研究」と「行動科学」
  3. 英語レベル別の学習法を紹介

最初の章は、ついつい私たちがやりがちな間違った英語学習法について。続いて、科学的に考える際の道しるべとなる、第二言語習得研究や行動科学のことを紹介しています。

最終章はそれぞれのフェーズでやるべき具体的な学習内容について。チェックリストを利用することで、自分がどのフェーズにいるのかをチェックできます。

効率的に英語を習得するためには、英語学習の全体像をつかむための「地図」を持ち、自分の「現在地」と「目的地」を知ることが大事とのこと。

これは、そんな英語学習の旅に誘ってくれる本です。

ここからはそれぞれのパートで、私が特に気になったポイントをご紹介していきます。

間違った英語学習法について

イングリッシュカンパニー「マンガでわかる 最速最短!英語学習マップ」
出典:『マンガでわかる 最速最短!英語学習マップ』(StudyHacker ENGLISH COMPANY刊)作画:ナナトエリ

まずは私たちがついついしてしまいがちな、間違った英語学習法について取り上げています。避けた方がいい根拠までがしっかり書かれているので納得できますよ。

いきなり会話練習をしても効果ナシ

英語を話せるようになりたいと思って英会話を始めてみたけれども、度胸がついただけで英語が上達したかどうかは微妙だ...というような話は私のまわりでもよく聞きます。

この本ではその理由は、まだ話すために必要な知識が備わっていなかったからではないかと分析。

試しに、「私は逆上がりができます」と英語でいってみてください。難なくいえた方は少ないのでは?

私もこれにはやられました。英単語がわからない場合は、言い換えるという手もありますが、「鉄棒」や「一回転」などの単語もなかなか自信もって言えません。。

もちろんこれは一例で、逆上がりを自慢することはないというツッコミもあるかもしれませんが(笑)、この質問で、語彙や文法などの基礎学習をせずに会話だけ練習しても、話せるようにはならないことは理解できますよね。

わかる英語が増えない限り、使える英語が増えることはないのです

知らない単語が突然口からでてくることはありませんし、自分で意識して直さなければ、間違って覚えた文法表現が美しいフレーズになって話せるようになったりもしません。

そして、会話は言葉のキャッチボールなので、それを聞き取る能力も必要。話すためにはリスニング力もあげないといけません。本当にいろいろやるべきことがありますよね。

英会話練習はスポーツでたとえると、練習試合のようなものだとのこと。試合に出ることで成長しますが、それは日々の基礎トレーニングがあってこそのもの。

中高時代、バトミントン部で副部長をしていた身としては、この理論は至極当たり前のこと(笑)。なのになぜか英語はスクールに通えば話せるようになる、と勘違いしてしまうんですよね...。

他人の成功法は必ずしも自分には役立たない

今の社会は情報過多で、英語に関する膨大な内容がみつかります。多くの学習メソッドが書籍やネットなどで紹介されていて、選ぶのもホントひと苦労ですよね。

特に英語学習の成功者たちの学習法を聞くとすぐマネしたくなりますが、「同じようにやってみたのに効果がなかった!」ということはありませんか。

それがおこるのは、自分の語彙などの知識やスキル、学習環境などがその著者と一致していないから。また、メソッド自体が再現性の保証がなく、本人以外には役に立たない場合もあります。

大事なのは、

英語習得の全体像を把握したうえで、自分のフェーズに合った正しい学習法や教材を選ぶこと。

そして、

いくら科学的な学習法であっても、正しいフェーズで、かつ正しいやり方で行わないと、本来の効果は見込めません。

とのこと。

「第二言語習得研究」と「行動科学」

イングリッシュカンパニー「マンガでわかる 最速最短!英語学習マップ」
出典:『マンガでわかる 最速最短!英語学習マップ』(StudyHacker ENGLISH COMPANY刊)作画:ナナトエリ

ところで、科学的に根拠がある学習方法とはどのようなものなのでしょうか。

この本では、第二言語習得研究の知見にしたがっておこなうことを強くすすめています。そして、その方法を行動科学の考え方を用いて進めていくとより効果的に働くとのこと。

第二言語習得研究とは?

第二言語習得研究とは、母語ではない言語を身につけるメカニズムを明らかにしていく学問。この研究で解明されたことを学習に生かすことで、効率よく言語を学べるといいます。

今やアスリートのトレーニングなども科学を使って合理的に行う時代。英語も科学的知見を応用して効果の高い学習法をしましょう、というのがイングリッシュカンパニーの考え。

たとえば、先ほどの「いきなり英会話練習はよくない」ということもこの第二言語習得研究からわかってきたこと。アウトプット中心の学習は非効率なんですよね。

フェーズによって重点学習ポイントが変わる

とはいえ、英会話練習も意味がないわけではありません。スポーツでいう「練習試合」のため、効果があることはわかっているのですが、重要なのはどう使うか。

少し具体的に説明すると、第二言語習得研究では、言葉の習得を次のような順番におこなうのがよいとされています。

  1. 語彙・文法(基礎的な知識)
  2. 読む・聞く(受容スキル)
  3. 話す・書く(産出スキル)

まずは前提となる基礎知識を学んで、リーディングやライティングを鍛える。そして最後にスピーキングをおこなうと、習得効率が高くスムーズに学習が進みやすいこと。

とはいえ、それは全て並行しておこなっていいもの。

まず初心者は1に重きをおきながら進めるのが◎。上達していくに従って、2や3の割合を増やしていくというイメージだとのこと。

つまり、学習スタート時に自分の現在地をきちんと把握するのはとても大切なこと。見誤って自分のレベルでは効果が低い学習をすると、回り道となってしまいます。

行動科学で習慣化する

英語は言語ですので、一朝一夕で身につくものではありません。そのため、多くの人がモチベーションが続かないという理由で挫折してしまっているんですよね。

しかし、この本の面白いところは「モチベーションは不要」と断言しているところ。そんな「気分」によって変化するものに頼れば続かないのが当然だとのこと。

行動科学によると、効率的なのは「やる気がなくても続く仕組み」をつくること。

私たちの日常で継続している多くの行動は、モチベーションをベースにしていません。食事後の歯磨きがいい例で、面倒と感じても習慣化されているからやるんですよね。

いまの生活スタイルをできるだけ変えずに、学習を既存の習慣にひもづけることからはじめましょう。

行動をスモールステップにわけて、たとえば通勤電車やお風呂の時間など15分くらいのスキマ時間をいくつか見つけるのがいいとのこと。

「今日はどうしても英語学習をする気になれない」と感じる日は、自分が楽しめる学習からはじめましょう

このアドバイスにはホッとしますよね。特に好みがない場合は音読がおすすめとのこと。

英語レベル別の学習法を紹介

イングリッシュカンパニー「マンガでわかる 最速最短!英語学習マップ」
出典:『マンガでわかる 最速最短!英語学習マップ』(StudyHacker ENGLISH COMPANY刊)

次は、この本の醍醐味ともいえる、英語のレベル別攻略法を紹介しているパート。

まずは英語力マップで「現在地」を把握

大切なのは自分の「現在地」をみつけること。

まずは「英語力マップ」で英語学習の全体像を把握し、「現在位置チェックリスト」によって、今の自分がどこにいるのかを確認します。レベルは「フェーズ0」から「フェーズ8」までの9段階。

このプロセスで面白かったのは、下のレベルからチェックリストを確認していき、ひとつでも項目が当てはまればそこが「現在位置」だとしてしまう点。

私の場合、「フェーズ6:正確に話せる」の項目を全てクリアできたのにも関わらず、その下の「フェーズ5:記憶にとどめておける」でひっかかる項目が一つありました。

そうなると、実は私の現在位置は「フェーズ5:記憶にとどめておける」。ここに弱点が潜んでいることがわかります。

「初級」「中級」などのレベル把握だけで学習をすすめると、個別の弱点を見落としがち。自分の取り組むべき課題を見つけてつぶしていくことが英語上達への近道なんですよね。

フェーズ別の最速最短学習法

ここからは、フェーズ0から8までの攻略法。それぞれのフェーズで「いまの状態と課題」とその「解決法」が示されています。

たとえば、「フェーズ1:ゆっくり読めば理解できる」から「フェーズ2:すばやく読める」に向かっている人の例でご紹介すると、

いまの状態と課題:日本語の「訳」を介して、行ったり来たりしながら読んでいるので、すばやく読めない

だとわかります。

つまり、文章を返り読みしながら常に日本語訳をおこなっているので、読むスピードがどうしても遅くなってしまう。

解決法:チャンクリーディングで「意味のかたまり」を瞬時に理解する

そんな人におすすめなのは、「意味のかたまり=チャンク」ごとに理解するトレーニング。この練習によって文頭から語順通りに理解するクセがつき速読力がつくとのこと。

具体的に必要なトレーニング時間は1日20〜30分。1か月程度おこなえば、ある程度自然に意味の切れ目を理解しながら読めるようになるとのこと。

教材は自分の語彙でほぼ理解できるものを使うのがポイントとのこと。TOEICテキストなどがあればそれを使うのでOK。こうやって使える教材を教えてくれているのは助かります。

このフェーズにいる人のおすすめ教材は携帯学習アプリ「イングリッシュカンパニーモバイル」。このアプリは結構よくできているので、気になる方はこちらの体験記事をチェックしてみてください。

英語学習者必須の「音声変化」の知識なども紹介

フェーズごとの学習法のパートには、大切な英語学習のポイントが散りばめられています。そのひとつが「音声変化」について。

英単語を知っていても聞き取れないということが起きるのは、多くの場合、音のスピードに追いつけないのではなく、英語の「音声変化」の知識がないから。

たとえば、「in a car」が「イン ア カー」ではなく、単語同士がつながって「イナカー」となるのが良い例。このような音声変化は実はきちんとルールがあるんです。

この本では、5つの主要な音声変化のルールを紹介し、その知識を頭にいれた上で、英語を一文字一文字書き取るトレーニングや、音読をすることをおすすめしています。

リスニング力アップだけでなく、スピーキングの発音までよくなる音声変化の知識。このような学校では教えてくれないことをわかりやすく説明してくれるのは嬉しいですね。

「最速最短!英語学習マップ」の良かった点

  • 自分の「現在地」がわかる
  • 具体的に自分がやるべきことがわかる
  • 英語学習の全体像がわかる
  • 科学的知見に沿った勉強法で安心
  • マンガがあることで理解しやすい

この本の最も優れているところは、自分の現在の英語レベルを具体的に把握できる指標があるところ。様々な英語学習本を読んできましたが、多くの場合、学習法しか載っていません。

自分のことって、わかっているようで実は結構わかっていないんですよね。実際、私も自分の「現在地」の見誤りをしていたことに気づかされました。

そして、タイトルにもあるところどころに差し込まれた「マンガ」が結構いいスパイスとして効いてきます(笑)。文章量は多めですが、途中で挫折する心配はありませんよ。

「最速最短!英語学習マップ」の気になった点

  • トレーニング教材は別に買う必要がある

この本には、ダウンロードできる音声ファイルがあり、いくつかのトレーニングを練習できますが、あくまで体験のための教材。実際には別途教材を準備する必要があります。

そして、おすすめ教材の多くがイングリッシュカンパニー独自のものであることが気になりましたが、たしかにオリジナル教材は質が高いものが多いので、それを利用するのはアリだと思います。

とはいえ、手持ちの教材でおこなう場合の選び方のコツなども紹介されています。既にいろいろ持っている人はそのアドバイスを参考にしてみて選ぶといいのではないでしょうか。

「最速最短!英語学習マップ」はこんな人に読んでほしい

  • 自分の英語レベルや弱点が知りたい人
  • 英語を効率的に身につけたい人
  • ほかの英語学習法で挫折した人
  • 科学的知見にそった学習法に関心がある人
  • イングリッシュカンパニーに興味がある人

英語を本気で勉強したいと思ってはいるけれども、どこから手をつけていいのかわからない。それもやるなら効率的にやりたいと思っている人に最適な本です。

それも科学的な裏付けのある方法で、生活の中に自然に英語学習法を取り入れて学習したい人にぴったり。合理的に英語学習をするのって全く悪いことではないと思います。

最近の英語研究に興味がある、教育関係者の方にもおすすめの本です。

一緒に読みたい英語学習本

「最速最短!英語学習マップ」を読んで第二言語習得研究に興味をもった人に、一緒に読むことをおすすめしたいのは、竹内理さんの「達人の英語学習法」。

この本では、言語学の専門家である著者が、外国語学習研究の成果を伝えるとともに、英語学習の成功者たちがおこなった学習法をまとめています。

英語学習のタイムリミット「臨界期仮説」についての研究事例や、人にはそれぞれ、言葉、リズム、形などを感じとる能力の違いがあって、それが学習スタイルにも影響するというような心理学的なお話も紹介されていますよ。

まとめ

外国語学習に関する研究は1960年代から盛んになっていて、さまざまな研究結果がでています。

しかしその内容をわかりやすく伝えてくれて、かつ、その内容を応用した学習法をそれぞれの英語レベルの人向けに提示してくれている本ってなかなかありません。

ぜひとも近年の研究の成果を利用して自分の課題をみつけて、効率的に学習していただきたいと思います。

また、英語コーチングスクールはこのような課題をプロがみつけてくれて、ドロップアウトしないように併走してくれるところ。

高額ではありますが、確実に短期間で成果を得たい人はパーソナルトレーナーに頼ってみるのも手です。気になる方はぜひイングリッシュカンパニーのサイトなどもチェックしてみてください。

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