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こんにちは!フリーランスの現役英日翻訳者、ランサムはなです。これまで、私がプロの翻訳者になるまでの道のりをお話しして来ました。1回目の記事では、英語教師になった私が、渡米して現地の日本語教師になり、日英特許翻訳のチェッカーに挑戦してみたところまでをお話しし、2回目の記事ではNYの日系新聞社で、「1000本ノック」とも呼べる特訓を連日受けた話をしました。3回目の今回は、ここからフリーランスとして正式に独立するまでの過程をお話ししたいと思います。

「1000本ノック」の特訓後、翻訳会社のトライアルに合格するようになった。

NYの日系新聞社からプレスリリースの翻訳の仕事をいただくようになって2年もすると、さすがに記事の種類やスタイルにも慣れて来ました。決算報告はどういうふうにまとめるか、調査結果の記事はどのような文体を使うか、新製品はどのように宣伝するかなど、自分なりに「定型表現」のストックができてきました。少し自信もついて余裕ができてきた頃、自分の実力を客観的に評価すると、どの程度なのだろう?・・・という疑問が湧いて来ました。

そこで腕試しのつもりで、ネットで翻訳会社をいくつか検索して、「翻訳者募集」の登録ページから応募したところ、採用担当者の1人が折り返し連絡をくれました。

「IT分野の経験が豊富なようだね。じゃあIT分野のトライアルを受けてもらってもいいかな?」
「はい、ぜひお願いします」
「作業指示書に従って300ワード程度(2~3段落)の課題文を翻訳して、送り返してもらえる?期限は、そうだね、一週間もあればいいかな?」

この提案に、私は耳を疑いました。課題文とは言え、たった300ワードの翻訳に一週間もいただけるなんて!即日納品が当たり前になっていた私にとっては、夢のような話に思えました。また、送られてきた課題文(ユーザーマニュアルの抜粋)が、短く簡潔な文章で書かれているのも驚きでした。以前挑戦(して挫折)した、特許翻訳の長く複雑な文章と比べると、天と地の差です。

初心者を意識したわかりやすい文章を書く/話すことは、外国人に日本語を教えていたときに訓練を受けていたことなので簡単でした。内容も一般ユーザーが対象なので、プレスリリース翻訳の難解な「新技術」の解読と比べると非常にやりやすいものでした。このとき初めて、「自分はIT分野を専門にすると良いかもしれない」と思いました。

トライアルに合格して、業界の相場を知る。

トライアルを提出してまもなく、先ほどの採用担当者から電話がかかってきました。

「合格おめでとうございます!正式に弊社の登録翻訳者として採用しますので、料金を教えてください」

でも当時の私は、お恥ずかしいことに、いくら提示すればよいか見当もつきませんでした。翻訳者側が料金を提示するものだということすら、わかっていなかったのです。答えられずに困っていると、「ちなみに、弊社の登録翻訳者の平均はこれぐらいです」と採用担当者が教えてくれました。

そこで私は初めて、翻訳料金が英語のワード単価で設定されていることを知ったのです。プレスリリースの翻訳をしていたときは、語数に関係なく「記事1本いくら」という料金設定でした。でもワード単価なら、翻訳するワード数が増えれば、それだけ収入が増えることになります。プレスリリースの翻訳と比べると、納期にゆとりがあり、単価的にも魅力でした。ただ、翻訳会社からの仕事は、コンスタントに来る保証がありません。

そこで私は、当面プレスリリースの翻訳の仕事を続けながら、翻訳会社のトライアルを受けて、少しずつ新規取引先を増やして行くことにしました。

駆け出しの翻訳者にお勧めしたいこと。

この時期、トライアルを受けて登録先を増やすのと同時に私が行ったのは、翻訳・通訳団体の学会に出席することです。世界にはさまざまな翻訳・通訳団体があります。代表的な例を挙げると、日本には、日本翻訳者協会(JAT)、日本翻訳連盟(JTF)、日本翻訳協会(JTA)、米国には米国翻訳者協会(ATA)、英国には英国翻訳通訳協会(ITI)などがあります。

年会費がかかるので、むやみに会員になる必要はありませんが、このような団体の学会やセミナーに参加して、協賛の翻訳会社や同業者とのつながりを作ることは非常に有益です。セミナー自体も有益ですが、とりわけ貴重なのは、セミナー後の懇親会などに行くと、オフレコの業界事情や体験談を先輩に教えてもらえることです。

私は業界の料金相場やトライアルに合格するコツ、要注意の取引先など、普通なかなか知ることのできない具体的な情報をこのような交流会を通じて入手しました。同業者や先輩と仲良くなると、学会やセミナーが終わって何か月もたってから、そのときのご縁で仕事を紹介していただけることもあります。先行投資の価値は十分にあると思います。

ご参考までに、代表的な翻訳・通訳団体を下に挙げておきます。

日本翻訳者協会(JAT)
http://jat.org/ja/

日本翻訳連盟(JTF)
http://www.jtf.jp/

日本翻訳協会(JTA)
http://www.jta-net.or.jp/

米国翻訳者協会(ATA)
http://atanet.org/

英国翻訳通訳協会(ITI)
http://www.iti.org.uk/

次回は、プロとして色々な会社から仕事を請けるようになってからの体験、海外の会社と日本の会社の相違点、認定試験などについて書いてみたいと思います。

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ランサムはな

年間100万ワードの実務翻訳をこなす翻訳歴21年目の英日翻訳者。津田塾大学英文科、テキサス大学大学院教育学部(カリキュラム・アンド・インストラクション)を卒業。NYの日系新聞社の翻訳を始め、デル、グーグル、マイクロソフト等、一流企業が日本市場を開拓する際の製品やホームページの日本語化、Eラーニングの教材翻訳に多数参画。ネットで世界中から仕事を受注しながらアラスカなど各地を転々とした後、北海道富良野市で10年間暮す。現在はテキサスと札幌を行き来する生活を送る。英検一級。英検二次面接官。日本語教育能力検定試験合格。米国翻訳者協会(ATA)認定翻訳者。ブログは「日本とアメリカで働く翻訳者のブログ」。 ツイッター: @HanaKRansom
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