TOEIC(R)900と現実の評価

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TOEIC(R)900=英語ペラペラ、は、間違い・・・

最近ではTOEIC(R)テストは、イコール英語の実力を証明するものではない、という認識がだいぶ浸透しつつあるようですね。

それもそのはず、そもそもTOEIC(R)というのはビジネス上のコミュニケーションスキルを測るためのテストではありますが、現在ポピュラーなTOEIC(R)テストはコミュニケーションといってもListeningとReadingのテストのみ、で、そこには発信力である話すこと、書くことを測る要素はありません。
※TOEICのスピーキング・ライティングテストというのも別にありますが、こちらはまだあまり一般的ではありません。

もっと詳しくいうと、TOEIC(R)では、とくにスピードを求められる現代のビジネスの現場において必要な、ListeningとReadingのスキルを測ります。

一度だけナチュラルスピードで話される英語を聴いてサッと内容をつかむ、文章を一度ざっと読んだだけで要点を理解する、といった力を試す、ということです。

ですからTOEIC(R)テストのための勉強は、速いスピードの英語に慣れる、頭の回転を速くするのにはいい訓練になりますし、その意味では瞬発力を要求される通訳やビジネスの現場の交渉などにはとても役に立つといえます。

ですが、「序章」の中で述べたように英語でのコミュニケーションスキルというのは発言力が非常に大事。TOEIC900以上はそれの上級者か?というと・・・残念ながら答えは「NO.」なのです。

現実に、TOEIC900以上持っていても電話での会話もできない、ビジネスの場で交渉できない人はたくさんいます。ビジネスの場どころか日常会話すら満足にできない人もいます。しかもそれが日本ではかなりの割合でいるのが悲しい現実です。

グローバル企業の採用現場でのTOEICの評価

そのため私が関わってきたグローバル企業の採用の現場では、TOEICスコアはせいぜい足切りに使われる程度のものです。

最低限必要なラインは満たさなければいけませんが、それ以上は躍起になって高得点をめざすのは賢いやり方ではありません。ビジネスの現場では英語のスペシャリストを求めているわけではありませんから。

TOEIC(R)ならAレベルの860以上はビジネス上のコミュニケーションができる、という一つの目安にはなります。

グローバルなビジネスの世界を目指す人はTOEIC(R)の最終目標はAレベルの860以上と据えて、いったんそのレベルに達したのなら、TOEICで高得点を取るための勉強はもう終わりにして、それ以外の、あなたに必要なほかのスキルを身につけるほうが得策です。

英語ならEメールのWritingや電話会議でのプレゼンの仕方など、TOEICテストでは測れないけれど必要なスキルはありますし、英語以外の専門スキルや能力のほうがずっと重要視される場合が実際には多いですから。

英語スペシャリストが目指すべきもの

また、TOEIC(R)という試験の特性は速読でざっと全体を理解しポイントとなる部分をつかむ、というところなので、当然のことではあるのですが・・・

TOEIC(R)では英語スペシャリストの中でも、とくに翻訳者や英語教師に求められるような、精読して一文一文、一語一語を正確に読み砕く力は試されません。

ですからTOEIC900以上の高得点者はどちらかというとビジネスや通訳向きではありますが、英語の先生や翻訳者には必ずしも向いているとは言えません。

実際、翻訳者として実力のある人はTOEIC(R)では800点台後半の人が多いそうです。

私自身も翻訳の仕事を始めた当初はTOEIC875でしたが、「英語力よりも結局は日本語力」・・・つまり、言語能力そのもののほうが「英語」より大事である、とすぐにわかりました。これは翻訳を一度でもやってみたことのある人なら身に染みて感じていることだと思います。

では具体的に英語の試験は目標設定にどうやって使うのがよいのでしょう?次のページで詳しくお話します。

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