年の大半を外国のお客さんと旅する通訳ガイドのMarikoです。苫米地英人氏の「英語は逆から学べ!」を読みましたが、言語習得について脳レベルで書かれた興味深い本だと思いましたのでご紹介します。

「英語は逆から学べ!」

英語学習をしようとすると、よく「英語脳」という言葉を耳にしませんか?それを手にいれたら、英語の聞き取り力がぐんとアップして、ペラペラと話せそうですよね。

とはいえ、そんな脳のつくり方を教えてくれる人ってなかなかいませんし、なんとなく子供限定のもので、大人になってからだともう手遅れなイメージがあると思います。

「英語は逆から学べ!」の著者である脳機能学者の苫米地英人さんは、実は「英語脳」という言葉の生みの親。この本では誰でもできる英語脳のつくり方を解説しています。

普通は、英語をすばやく処理する力について、比喩的に英語脳という言葉を使います。しかしこの本が面白いのは、脳科学者が「脳の中に新たな英語脳をつくりましょう」と提案するところ。

正直に言うと、この本の学習法は「英文法はいらない」「辞書は禁止」などとかなり過激なアドバイスも多く、全てには賛同できませんでした。

しかし、ほかの学習本とは違って、英語は日本語とは異なる脳の言語野を使って学ぶ必要性があることや、英語を和訳することの弊害など、興味深い指摘が多くあります。

そのため、よくある英語学習本に何か物足りなさを感じている人や、現在英語学習でつまづいている人などにぜひ読んでもらいたい内容だと思いました。

この記事では、「英語は逆から学べ!」の特徴や学びとなったポイント、良かった点、気になる点などをご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。

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    著者プロフィールと出版の背景

    それでは、まずは著者のプロフィールと出版の背景についてご紹介します。

    著者は脳機能学者

    苫米地英人さんは、1959年東京生まれの脳機能学者・計算言語学者。

    イェール大学認知科学研究所、カーネギーメロン大学計算機科学部研究員などを経て、現在は米国認知科学の研究成果を盛り込んだ能力開発プログラムの開発に取り組んでいます。

    少し前のことではありますが、オウム真理教信者の脱洗脳を手がけたことでマスコミで話題になったので、メディアなどで名前を目にしたことがある人もいるかもしれません。

    著書に15万部突破のベストセラー「頭の回転が50倍速くなる脳の作り方〜「クリティカルエイジ」を克服する加速勉強法〜」「残り97%の脳の使い方」「洗脳広告代理店 電通」など、多数あります。

    出版の背景

    家は代々の英語教師である苫米地氏。曽祖父はラフディオ・ハーン(小泉八雲)の同僚の英文学者で、祖父は長い間、日本中の大学の教科書にもなっていた商業英語の辞書をつくった人。

    本職は脳機能学者ですが英語教育への関心が高いのは、「本来は英語教育が家業だから」とのこと。名前が英人であるのも関係がないわけではないようですよ。

    脳の研究を進めながら、文法から学んでいく日本の英語教育は間違っているのではないかと思い始め、「英語脳」という造語を初めて雑誌の連載で使ったのは2000年。

    しかしその後、「英語脳」という言葉だけが独り歩きしていき、誤解に基づいた記述も多くなっていったため、しっかりと自分から真意を伝えたいとの思いでこの本を書かれたとのことです。

    「英語は逆から選べ」の特徴

    この本は、170ページほどでとても読みやすいので2時間ほどあれば読めると思います。価格は単行本で1,390円です。

    ネイティブスピーカーの「耳」と「口」を手に入れるための「50倍速英語脳プログラム」という独自の英語学習法について紹介しています。

    この学習法をおこなうことで、英語の周波数が耳に届くようになり、文法などを考えなくても自然と英語が口からでてくるといいます。

    本全体は、大きく分けると3つのパートに分かれていて、

    1. クリティカルエイジについて
    2. 間違った英語学習法
    3. 50倍速英語脳プログラムについて

    という流れで進みます。

    クリティカルエイジとは、脳の学習限界年齢のこと。次に、今までの日本の間違った英語教育についての著者の見解について説明しています。

    そして最後に、英語脳を手に入れるための学習法について、ステップごとにくわしく紹介しています。

    それではパートごとに気になったポイントをご紹介していきます。

    クリティカルエイジについて

    「英語は逆から学べ!」クリティカルエイジ

    まずは、脳の学習限界年齢、クリティカルエイジについて紹介しています。

    クリティカルエイジとは?

    クリティカルエイジとは、遺伝的にきまっている、それぞれの人間の器官の機能が発達する年齢のことをいいます。

    言語であれば、一般的に小中学生くらいまでが母語の習得時期と言われていて、大人になってから海外に留学した日本人がバイリンガルになるのは難しいといわれています。

    しかし苫米地氏は、

    クリティカルエイジがあるからといって、大人になってから新たに外国語が学べなくなるわけではありません。ただし、今までの英語勉強法での克服は難しいかもしれません。

    と言っています。

    たとえば発音だと、日本語と英語では母音の種類も違いますし、お互いにない発音もあります。発達がとまって固定化した脳で、英語の情報を吸収するのは至難の技。

    ではどうしたらいいのかというと、それまでの神経ネットワークとは異なる部位で学習すれば、クリティカルエイジを気にしなくてもいいとのこと。

    つまり、大人が英語学習をする時、脳の中のいつもは使っていない部分を利用することを提案しています。

    脳科学者が脳の視点から英語学習のクリティカルエイジについて言及している例はあまりないので、これは貴重な意見です。

    新たな言語空間をつくる

    その理由を説明するために登場するのが、マサチューセッツ工科大学(MIT)の教授であるチョムスキー氏が提唱する「生得仮説」と「ユニバーサル文法説」。

    これは、

    脳は生得的に文法能力を持っていて、あとは言語ごとに経験によるパラメーター(設定)を調整するだけ

    という主張で、私たちの脳はもともとどの言語も処理する能力をもっていて、パラメーターを設定していくことでその国の言葉を聴いたり話せたりできるようになる、というもの。

    そして、脳の中に新たな「英語脳」をつくることによって、今までの日本語でのパラメーターとは違う設定にしていくことができる、といいます。

    「英語は逆から学べ!」英語脳と日本語脳
    出典:苫米地英人『英語は逆から学べ』(フォレスト出版 2008)より抜粋

    これは目からウロコでした。

    確かに英単語をカタカナで覚えてしまったりすると、永遠とネイティブの発音にはなりませんよね(笑)。これはまさに、日本語脳を使って英語を覚えてしまった失敗例なのかもしれません。

    英語を習得するためには、日本語脳とは別のルールによって動く「英語脳」をつくって、その脳を使って学習する必要があると言っています。

    外国語を習得すると二重人格になる?

    新しい言語を学ぶということは、違う人になってしまうということです。

    よくバイリンガルの人が、英語を話す時と日本語を話す時とで、性格が変わるといいますが、これは別の言語脳を使っているからだと著者はいいます。

    以前、仏&日本語がバイリンガルな友人と、パリのカフェでお茶をした際、いつも穏やかな友人が失礼なことをしたカフェスタッフに毅然とした態度で抗議している姿を見て、とても驚いたんです。

    言語の特性からくるものだと思っていましたが、友人の中で、フランス語を話す別人格がつくられていたと言われると腑に落ちます。

    そして、新たにつくった言語野のネットワーク内では、日本語脳のクリティカルエイジの縛りは受けないため、大人になってからでもまだまだ英語を学べるというのです。

    脳の中にいくつもの言語のネットワークをつくることは簡単ではなさそうですが、大人になってからでも間に合うと専門家から言われると、やっぱりホッとしますよね。

    間違った英語学習法

    それではどのように学習を進めれば、「英語脳」という全く新しいネットワークを脳の中につくることができるのでしょうか。

    このパートでは、今までの常識を覆すような苫米地流のアドバイスが次々と飛び出してきますが(笑)、その中には興味深い指摘がいくつもありましたので、一部ご紹介します。

    文章の中に意味はない!意味は状況にある

    苫米地氏は英語学習中の「日本語禁止」を主張しています。こんなに厳しくする必要があるのかと驚きましたが、ここまで徹底していると気持ちがいいです。

    英語学習中は日本語をシャットアウトする必要があり、レッスンも教材も英語のみがベスト。日本語脳が活性化されないように徹底的に日本語を排除してくださいとのこと。

    そして、私たちが常におこなってきた「英語を日本語訳する」ことに反対し、

    ある英語の文章の意味は、文章の中にはありません。文章の意味、つまりその発話の意味というのは、発話された状況の中にしかありません。

    と言っています。

    基本、英語はモノマネであって表現の意味は状況からしか出てきませんので、「意味は状況にある」という指摘は正しいのではないかと思いました。

    これを読んでいて、以前英会話スクールで、ネイティブ講師に「You surprised me!」というフレーズを教わった時のことを思い出しました。

    これは直訳だと「あなたは私を驚かせた」となりますが、実際の場面では「も〜、驚いたよ!」というニュアンスでした。この訳は状況がわからないと答えられませんよね。

    今すぐ辞書を捨ててください!

    この提案はなかなか過激ですが、辞書全般に反対しているわけではなく、英英辞典ならOKとのこと。

    初心者には厳しいと思いますが、確かに英文を日本語でなく直接イメージするクセがつくと、速く読む力は確実についていきますので、英英辞典は効果的かもしれません。

    文法を学んでも言語を学んだことにはならない

    過激合戦のハイライトは(笑)、文法不要論です。学校で学んだ文法は忘れなさいと、著者は言っています。

    とはいえ、きちんとした理由も書かれていて、

    • 日本教育の英文法は化石のようなもの
    • 英文法はかなり不確かなもの

    ということを主張しています。

    実は今の中学高校で教わる英文法は、19世紀ごろにイギリスで教えられていた大変古いものであること、そして英文法については学者も解明が終わっていないことなどが書かれています。

    文法を覚えても言語を学んだことにはならない。ネイティブスピーカーの言語運用を習得することが、言語を学んだということになる。

    この指摘には納得しました。

    確かに英語に限らず、文法って例外がやたらと多いですよね。そして文法との相違があった場合、正しいとされるのはいつも「ネイティブスピーカーが使っている言葉」なんです。

    先ほど例に挙げた「You surprised me.」はまさにネイティブの使う生きた言葉です。文法の教科書通りに考えると「 I was surprised.」と言いたくなっちゃいますから。

    ネイティブに英語を学ぶと発音が良くなることばかりがフォーカスされます。しかし、実は最大の利点は、「正解」とされる言葉やフレーズの使い方を学べるということだと思います。

    文法はあくまで表現の微調整をするツールでしかありません。文法不要論自体はまだ議論の余地がありますが、文法第一主義の学校教育に専門家がこのようにものを申したことには意味があると思いました。

    50倍速英語脳プログラムについて

    「英語は逆から学べ!」

    次のパートでは、苫米地氏の提唱する「50倍英語脳プログラム」のやり方が紹介されています。

    使われていないネットワークを英語モードにチューニング

    まずは、日本語のネットワークの活性化を抑えて、使われていない神経ネットワークを英語モードにチューニングします。

    大切なのは、

    • 英語モードをつくり、
    • 日本語をシャットアウト

    すること。

    その新しいネットワークではクリティカルエイジは働きませんし、もともと言語を習得する能力がある私たちの脳は勝手に学んでいくといいます。

    そして、脳科学的にも一つの言語だけを使うより複数の言語を習得する方が良い影響があることがわかっているそうです。

    バイリンガルの脳はより広く、より深く活性化されているということが報告されています。

    一時期は悪影響が懸念されていたバイリンガル教育ですが、現在はその心配はいらないといわれています。(くわしくはこちらの記事に

    それが悪影響を与えないだけではなく、良い影響をもたらす、ということが脳レベルで言えるのであれば、嬉しいですよね。

    子どもが言語を学ぶのと同じように学ぶ

    苫米地氏は、英語脳をつくるためには、子供が言葉を学ぶ時のように音から学ぶのが自然だといいます。

    人間の脳の半分は視覚野で視覚情報を利用することが大事なので、映像つきの教材を使うとより効果的だとのこと。話の流れがつかみやすい海外ドラマをおすすめしています。

    最初はひとつだけ単語を拾うことから始めて、その単語を五感で感じてイメージを広げていきます。そして、次の音は何かな、と想像しながら聴いていくそうです。

    海外ドラマ好きの人にはとっつきやすい学習法かもしれません。気になる方は、ぜひ書籍の詳しいやり方をご参考ください。

    「英語は逆から学べ」の良かった点

    • 脳の専門家の知見を学べる
    • 今までなぜ英語が話せなかったかがわかる
    • 大人になってからでも英語を学べることがわかる
    • 英語をネイティブから教わる大切さを学べる

    これは、今まで英語が思うように頭の中に入ってこなかった理由を説明してくれる本です。なるほど、とうなずきながら読めると思います。

    脳がどうしたら新しい言語を学習できるのかということをわかりやすく説明してくれていて、読み物としても面白いと思いました。

    「英語は逆から学べ」の気になった点

    • 英語漬けの生活を実践するのは楽ではない

    映像を使って言語を習得するトレーニング方法が紹介されていますが、さて自分で実践しようとすると簡単ではないことがわかります。

    このトレーニングを実践するためには、具体的には最初の数日は5時間くらいは英語漬けになることが必要になります。長期休暇前などで読むのがいいかもしれません。

    「英語は逆から学べ」はこんな人に読んでほしい

    • 今まで英語学習の挫折を経験してきた人
    • 脳科学に沿った英語学習法に興味がある人
    • 海外ドラマを使った学習法に関心がある人
    • 日本の英語教育に疑問を持っている人

    これは脳の専門家が書いた、英語学習本。脳から見た「言語」とはどのようなものなのかを学びたい人におすすめです。

    また、英語教材をこつこつやっていくのは苦手だけれども、海外ドラマを鑑賞するという方法ならできるかも!と思われた人にもぜひ手にとってもらいたい本です。

    一緒に読んでもらいたい英語学習本

    脳科学者の研究に興味をもった人に、ぜひ一緒に読んでもらいたいのは「マンガでわかる 最速最短!英語学習マップ

    この本では、言語学の視点で英語学習を俯瞰的にとらえています。また違った学問からの視点を学ぶことができますよ。

    これは、英語コーチングで話題のイングリッシュカンパニーから出版された本で、自分の英語レベルを把握した上で、レベルに合った最適な勉強を教えてくれる学習本。

    「英語は逆から学べ!」で英語脳をつくり、補強が必要な自分の弱点を探すために読むのもいいかもしれません。

    まとめ

    脳科学者が一般の人にわかりやすいように脳と言語の関係を説明してくれている本はあまりないので、貴重な本だと思いました。

    奇抜な手法を数多く紹介していますが、膝をうつ理論なども多く含まれていて、面白く読み進めることができる本ですよ。

    様々な英文法の本を読んできて、少し違う視点で言語学習を捉える本を探している人にぜひおすすめします。

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    Mariko

    幼少期をイギリスで過ごし、大学では国際関係学を専攻。卒業後、旅行会社、秘書、グラフィックデザイナー、コンサルタントなどを経たのち、2016年より英語の通訳案内士に。外国人のお客さんと日本各地を旅しています。
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