photo by Robert Scoble

前回の記事では、32才から英語学習を始め、34才の時にフィリピンで就職したことについてお話ししました。

そこで、「(入社前に)TOEICのスコアが840あるからあまり英語の心配しなくていいのかも?なんて余裕ぶっこいていたがそんなことはなかった」と書きましたが、これはあくまでも私個人の経験であって、他の人たちはまた違う意見を持っているかもしれません。

フィリピンで就職した人たちの英語力は、実際どうなのでしょうか。想像してもわからないので、私の周りの方々にアンケートをとってみました。有効回答数は28。無記名で回答いただきました。

世代別で見ると、
20 - 24才:4人
25 - 29才:10人
30 - 34才:9人
35 - 39才:4人
40 - 44才:1人
という分布。

私の友人、もしくはその友人の回答(9割以上が日系企業勤務)で、サンプル数は28件しかありませんので当然ではありますが、統計的な有意性はございません。

ただ、色々具体的に答えていただいてますので、フィリピン就職希望の方にとっては参考になるのではないでしょうか。

Q1. フィリピンで働き始める前のTOEICスコア

Q1

受験経験者のスコアを平均すると「675」でした。「あまり高くない」というのが正直な気持ちです(偉そうにすみません)。スコアの高低・受験経験の有無に関して、世代の偏りは特にありませんでした。

Q2. 語学留学経験の有無

Q2

65%が留学経験者でしたが、未経験の人も一定数いました。フィリピン留学→就職という流れが多いのかと思っていましたが、その他の国での留学経験者も24%いました。また、世代の偏りはこちらも特にありませんでした。

TOEICスコアと留学経験の相関を見てみると、

  • TOEICスコア800台の人のうち、75%はフィリピン以外の国での留学経験者。
  • TOEICスコア400台の人は、全員がフィリピン留学経験者。
  • 全体の14%は、「TOEIC経験なし、留学経験なし」。

という結果でした。

Q3. 勤務時間中の、英語によるコミュニケーションの割合

Q3

会話、メールやチャット、電話、商談etcすべてのコミュニケーションについて回答してもらったところ、このような分布になりました。

英語でのコミュニケーション割合が1割未満の人はおらず、5割に満たない人が57%という結果。英語が8割以上という人もいませんでした。
 
TOEICスコアや留学経験との相関関係を見ますと、

  • TOEICスコアが800台の人は、職場での英語は5-7割。
  • それ以外の、TOEICスコアや留学経験が職場での英語の割合に与える偏りは特になし。

という結果でした。

強いて言うなら、TOEICのスコアが高い人は英語でのコミュニケーション割合が高い環境を能動的に選んだ、もしくは英語のコミュニケーション力が高く、それを活かせる職務をアサインされているのかもしれません。

世代による偏りは特にありませんでした。

Q4. 平日夜や休日に英語の勉強をしている場合、その内容を教えてください。

全体の67%は、フィリピンで働き始めてからもなんらかの手段で勉強しているようです。

「夜に外国人とデートする」というアグレッシブな回答もありました。世代、TOEICスコアや留学経験、職場での英語の割合による偏りは特にありませんでした。

Q5. 現時点での英語力の満足度

Q5

86%の人たちが、自分の英語スキルを「足りない」と感じているようです。「大満足」している人は一人もいませんでした。

「それなりに満足」している人のうちの75%は、満足してはいるもののテキスト等で英語の勉強を継続していました。

TOEIC800台の人は全員、「足りない」と感じており、それ以外に関しては特に目立った偏りはありませんでした。

Q6. フィリピンで&英語環境で働くことは、今後のキャリアに生きると思いますか?

Q6

約80%の人が、「今後のキャリアに生きる」と答え、残りの人たちはそう思わないという結果でした。

理由について自由回答欄に記入してもらったので、いくつか抜粋してご紹介します。

この経験が生きる思う人の場合

何事も思い通りに運ばない国フィリピンで働いておけば、今後どんな国に行ってもすぐ適応できそうな気はしている。

英語については、ネイティブ英語圏で通用するレベルには至っていないし、他のアジア諸国は現地語の比重が高いので、今後に生きるかどうかは微妙なところだと思う。

なので、フィリピン/英語で、という観点よりも今の職場で、裁量の大きい仕事を任せてもらえるところは今後に活かせるのではないかと思う次第です。

「フィリピン英語は…」とか「そのレベルの英語で仕事しているって言えるの…」とかいろいろ言う人がいますが、自分に関していると、日本ではそのまま働いていた時より、多くの経験や出会いがあります。英語も使っているから忘れてないし。

違うことをすること、違う言葉を使うこと、それが将来プラスになるのかマイナスなるのかは、死んだ時に分かる事だと思うので、今は、たくさんの違うことを経験したいと思っています。

英語を使う、また、時々現地語を使う。これも大きな「違い」の経験だと思います。

この経験が生きると思わない人の場合

フィールドは日本海外問わず働きたいから英語は必須。ただ、それなりのレベルなら誰でもできることだとは思うので、どこまで有利に働くかは疑問。

国外で働くには、その国の言語かもしくは英語が必須。英語は多くの国で使われているので、覚えておいて損は無いため。

経験が生きるか否かに関わらず、「英語だけではなくプラスアルファが必要」という意見がほとんどでした。

Q7. フィリピンで働き始めて、英語視点で感じたギャップ

ここから先は、質問に対する自由回答欄からいくつかピンと来たものをご紹介します。

「海外初心者あるある」な話

  • 単語だけでもコミュニケーションが取れてしまう
  • 英語力(語彙力など)の伸びはあまり感じない。スムーズに出てくるようになった程度。

フィリピンならではの悩み

  • アメリカの表現で話すと、理解してもらえないことがある。
  • 身につくのはきれいな英語ではなくタグリッシュ(タガログ語混じり・アクセント)
  • タグリッシュに慣れてしまい、むしろネイティブ英語が聞き取りづらく感じる
  • フィリピンでは発音や文法が間違っていても受け入れられ理解してくれるので、自分の英語を厳しく評価できなくなった。
  • フィリピン人同士だとタガログ語同士で話しているので必ずしも100%英語漬けの環境というわけではなかった。

職種、仕事によってはこんな悩みも

  • 弁護士と話をする時や、ビジネス書類などは、思った以上に難しい英語(英単語)を使うイメージ

スコアが高い人ほど、今の環境に甘んじてはいけない、という危機意識を持っているようでした。

Q8. フィリピンで働き始めて「英語が伸びた」と思いますか?どう伸びたのか教えてください。

  • 英語で話す度胸がついた
  • 日常会話に困らなくなった
  • 仕事で使う英語はスラスラ出るようになった

9割以上の人がこのような成長を感じていました。「元々身についていた語彙・文法の引き出しがスムーズになった」という人もいて、やはり下地がある人の方が伸びも早いのかもしれません。

Q9. 「英語」で困った経験があったら教えてください。

  • パーティなどで雑談ができない
  • 商談での理解度、交渉力に自信がない
  • 書類/契約書関係を読むのに時間がかかる
  • ネイティブスピーカーの会話を聞き取れない
  • ネイティブスピーカーと会話するとき、ついフィリピン英語になってしまう
  • コミュニケーションの行き違い(伝わなかったり誤解されたり)
  • 上下関係がある命令や、依頼等はやりやすいが交渉には英語力が足りずに難しかった。

9割以上何かしら困った経験を持っていました。「自分の求める理想像」に対し、「英語力が足りていないから困る」ので、そこを補うべく努力すればいずれ道は開けるのではないでしょうか。

まとめ(所感に変えて) 

いかがでしたか。英語をがんばるのも、フィリピンでキャリアを形成するのも、結局のところ「自分次第」なんですけれども、それだとあまりにも雑なので簡単に所感をまとめてみます。

TOEICのスコアが何点だろうが、受験経験があろうがなかろうが、結局「英語」で苦労はする 

人によっては中学から大学卒業までの10年間もの間、英語の授業を受けていたにも関わらず、海外で英語で働き始めたらいろいろ苦労をしているようです。(ここで日本の英語教育をダメ出ししても仕方がないので省きますが...。)

今までと違う業界に就職した人であれば、日本でだって慣れない単語が多いでしょうに英語だったらなおさら大変ですよね。ただし、英語力の下地の有無で苦労の度合い、伸び代も変わるはず。

「元々身についていた語彙・文法の引き出しがスムーズになった」という回答があった通り、ある程度の下地があった方が入社後の立ち上がりもスムーズだと思います。

採用する側の観点だと、「まったく英語がわからない・しゃべれない」という人は採用したくないですしね。

「キャリア形成」という観点で何をするかが大事

結局、「英語力」をつけてどうしたいのか。英語はあくまでもコミュニケーションツールの一つであり、キャリア形成の上で「フィリピン / 今の会社にいるからこそできる仕事」で経験を積み、実績を残すことが大事です。

アンケートの中にも、「日本では考えられないような、裁量の大きい仕事を経験できるのは今後の強みになる」という回答がありましたた。

今だからできる経験を積むことで、今後のキャリアアップになる。その上で、英語が必要ならば努力して向上すればいいだけのお話。英語が不要なら勉強しなくていいんです。

フィリピン人の英語力はピンキリ

フィリピンは世界で3番目に人口の多い英語公用語国と言われていますし、「フィリピン留学ブーム」でフィリピン人の英語力への期待値が上がっているのかもしれませんが、はっきり申し上げましょう。

フィリピン人の英語レベルはピンキリです。

かく言う私も、セブで素晴らしい先生に恵まれ「英語環境で働くのが楽しみだなぁ」と思った矢先、会社の同僚が数字の3,000(three thousand)を「とぅりーたうだん」と言ったり、トラブル対応について「終わった話」を現在形で報告されたりして、「これが現実か...。」と驚いたのを今でもよく覚えています。

フィリピン人の英語力は、彼らが受けてきた教育レベルによります。上位校出身者であればあるほど英語力も高いです。逆もまた然り。

(語学学校の先生は綺麗な英語を話しますが、彼ら・彼女らは『教える側』になるべく教育を受けているので当然ですよね)

フィリピン就職を考えていて、同僚の英語力にも期待したいのであれば、「フィリピンの上位校出身者がいる会社かどうか」を把握したほうがいいかもしれません。他力本願すぎるのもよくないですけどね。

まとめのまとめ

今回のアンケート結果においては、就職時点でのTOEIC平均点は675点。

これを高いと考えるか低いと考えるかは読者の皆さんの実力次第だと思いますが、就職後も英語力不足で困る経験は多くの人がしていますし、就職してからも英語の勉強をしている人がたくさんいます。

ネイティブ・スピーカーの国で生まれた人でもない限り、英語は第二言語なのです。もしフィリピン(あるいは他の国)での就職を考えている場合は、早いうちから対策をし始めることをお勧めします。

次回は、面接する側の立場から考える「日本人の英語力」についてお話ししたいと思います。