日本の企業でも、海外の取引先と仕事をしている人は大勢います。
海外に支社や支店のある大企業は、現地での仕事を英語でこなしたり、本社の規則や仕様書などを英語に翻訳して、それを海外の支社に送ったりして仕事をしています。
官庁では英文のウェブサイトを作ったり、英語でコミュニケーションを取って外国の官庁や学者さんを訪問したり、共同でプロジェクトを実施したりしています。
日本の学者さんの中には、海外で開催される学会に出席するために、英語の発表論文を送ったり、海外の学術誌に論文を投稿したり、はたまた海外の大学に直接連絡を取ってビジティングプロフェッサー(客員教授)として受け入れてくれるよう働きかけたりします。
しかーし、しかーしですよ、皆さん!現場に身を置いてみて分かるのですが、中央官庁や優秀な人材がそろっているはずの大企業、学者さんの少なからずが、「謎の英文」を海外に送ってしまっていたりするんです。
何とか意味が通じるんだからいいんじゃないの?と思っているアナタ。しかし話はそんなに単純ではありません。
とある企業で起こった、「変な英文」による悲劇
以下、今年の1月28日に出した「添削!日本人英語」でも紹介している変な英文のおかげで起こった悲劇をご紹介しましょう。
ある大手企業の情報システム部のセキュリティ担当者が、海外の子会社従業員向けに本社のセキュリティルールや監査手順を英語で執筆しました。受験秀才の担当者、何日も残業しドヤ顔でご満悦です。
しかし、中身は日本語からの直訳なので、文法や熟語はあっているものの、英語圏では使わない表現満載で、ネイティブも非ネイティブも何回読んでも意味不明でした。
おまけに、専門用語は英語圏では絶対に使われていない「日本式英語」でした。そもそも日本でしか使われていない用語やカタカナ英語満載で、英語圏では存在しないものばかりです。それを知らぬのは担当者のみ。
しかし、校正に出す予算はないし、チェックしてくれるネイティブもいません。担当者も部長も校正やネイティブチェクが必要なんて夢にも思っていませんでした。
現地の担当者は翻訳ソフトを駆使して解読を試みるも、さらに難解な英文になってしまいます。謎の専門用語も山盛りで、辞書を引いてみてもどこにも載っておらず、本社との会議までに文書の内容が理解できないと大パニック。
現地側は担当者に問い合わせるものの、「なぜこれが理解できないんだ!!君たちは頭が悪いんじゃないか?こんなの読めば一発で分かるはずだ」と反対に怒鳴られるはめに。
本社との会議では、誰一人として文書の内容を誰も理解していないために、会議は崩壊状態です。担当者は怒り出し、部長はしかめっ面。会議後には、「やっぱり海外の奴らはダメだ、バカだ。日本人は優秀だな。あんなの一発でわかるよな。ははは」の一言です。
会議がそんな調子でしたが、替わりの文書もないため、結局その謎の文書を業務に使うことになりました。
しかし、海外の人は誰一人としてその内容を理解できないため、結果、ルールが分からないために違反してしまう社員が続出し、なかには懲戒解雇になる人も。
現地の担当者は本社から責められて退社し、同僚は鬱になり長期休職。部署の士気も低下し、退職する社員が続出しました。さらに、上長は代わりの人材を探すのに苦労の連続で胃潰瘍に。
本社の部長は本社の役員に呼び出され「君、何が起こっているんだね?」と大目玉を食らい、怒った部長は担当者を吊るし上げにし、今期の査定を最低レベルまで落としました。
以上が事の顛末ですが、これ、作り話ではありません。実際に目撃した事例です。されど英語、たかが英語、とは思っていても、伝えたいことが伝わらないとこのような悲劇が起こってしまうのです。
まとめ
海外との業務がうまく行かない理由の大きな理由の一つは、「いいたいことが伝わらない」、その理由は「英語が酷いから」ということは、実は良くあることです。
しかし「俺は英語ができる!」と思い込んでいる方に限ってそれに気がついていない。ホラー映画も真っ青なお話だと思いませんか?
次回のコラムでは、このようなことが起こってしまう理由の一つとして、日本人が英語圏の文章フォーマットを理解していないことについてお話ししたいと思います。