モンゴルと英語

はじめまして。私は、通信事業者、ITコンサル会社を経てついこの間までアジア新興国のモンゴルで働いていた者です。モンゴルは基本的に文字をロシア語のキリル文字を使ったモンゴル語が使われています。

基本的に英語は主に10〜30代半ばぐらいまでの大卒の若い人ぐらいしか使われず、40代以上の方々となると外国語はロシア語という環境でした。

モンゴルは英語を駆使する環境かどうかというと「あまり使われることはない」と言ったほうが正しいかもしれません。

しかし、現地の飛び込み営業やお客様対応でマレーシア人、香港人、イギリス人と英語で商談したり、モンゴル人でも難しい会話をするとき相手が英語ができる場合には英語で行っていました。

また、仕事の合間に通っていたモンゴル語学校のクラスメートが台湾人やスロベニア人だったので、彼らとの会話は英語を使うことがよくありました。

モンゴル語の先生も東ドイツ留学経験で日本語ができる女性でしたが、英語を交えながらモンゴル語を教えていました。

自分で言うのもなんですが、あるグローバルブランドの企業に勤めるマレーシア人をイベントにアテンドした際、「あなたはいままで仕事で会った日本人に比べるとだいぶしっかりした英語を使いますね」と言っていただいたことがあります。

実際のお客様の声を聞けたことで、留学経験が無いにも関わらず英語は比較的できている方だと自信をつけたことがあります。

私はモンゴルの草原の様に田んぼの地平線が見えるぐらいの田舎出身で、英語を勉強するには首都圏に比べると恵まれた環境でなかったのですが、大学でのゼミや、独学をすることである程度アジアの新興国で、サバイバルな営業や商談を実行することができていました。

この記事では「やる気はあるけれども、そんなにTOEICやTOEFLもたいしたことない人間が商談をできるレベルにもってきた英語術」について記載したいと思います。

英語をどのように勉強してきたか?

「定量的」に私の英語のスコアは「ビジネスレベル」においてアピールするには良くない方だと思います。

具体的には 英検準1級を大学1年次筆記通過で大学2年次に面接通過(3回目!)、新卒の会社での新入社員研修でのTOIECは765点でした。いまだとおそらくTOEICでも800点いくか?ぐらいかと思われます。

英検1級は大学から社会人になるまで継続して受験しましたが、準備不足なためなかなか通ることができませんでした。

この「みんなの英語ひろば」の記事執筆者の方々の英語レベルの高さに、すごなぁと思いました。自分の英語もブラッシュアップしないといけないと刺激を感じました。

一方「定性的」には、英語力を飛躍させることができていたと思います。それは、大学時代の米国人の先生のゼミを大学2年からの3年間続けたことと、コンサル会社での英語を使った実務経験でした。

英語習得には、受験勉強的なストイックに鍛える方法と、段取りやロジックなどを英語で鍛える実務系経験を経る方法の2パターンがあると考えています。

私の大学のゼミでは、プレゼンテーション、Markstrat on Lineというマーケティングのシミレーションのグループワーク、外資系企業へのフィールドワークなどを経て、実践的な英語を身につけることができました。

またコンサル会社では、ある大手企業の海外進出支援プロジェクトにアサインされて、テレカンファレンスの段取り、英文議事録の作成、英文提案書の作成の打ち合わせ等を経て実務的な経験を身につけることができました。

このコンサル会社での経験で最も大きかった学びは、「英語の流暢さもさることながら、それよりも事前準備をすること」「言葉を一つ一つ選びながらしっかりと論理的に考え抜かれた発言をすること」の大事さを学んだことでした。

英語を早口で上手そうに話すよりも、そちらの方がはるかに評価されることを学びました。

TOEIC700点台であっても、きっちりとロジックを詰める訓練をしたり、事前準備をしたり、段取りをしっかりすることで、お客様に成果物を出すことが可能であることを知りました。

もちろん、それで英語をさぼっていいかということは決してありません。

英語の学習もしっかりしつつ、実務経験のノウハウを確立することで、キャリアップとしての英語を磨きあげることが可能であると考えています。

英語学習の原点について

もともと原点を振り返ると、私の英語学習はラジオが欠かせないものでした。中学校に進学して学校の先生に勧められて中学校1年生の頃からNHKラジオの基礎英語を聞いました。

学校の教科書があまり面白いと思えない中、中学二年生の時から大杉正明先生の『ラジオ英会話』での物語が面白くて英語の楽しさに目覚め、テキストを毎月楽しみにしてテキストのスクリプトを暗唱していました。

このときの放送は”Hopes, love and dreams in New York ”というタイトルで書籍化されています。このストーリーは今でも通用するオススメの教材です。

私は中学生の時、FEN(Far East Network: 極東放送網)の放送をどうしても聞きたかったのですが、実家は放送のエリア内ではありませんでした。

しかし、深夜になると電離層の反射の影響により、かなり広い範囲で番組の聴取が可能になるため、地方でもFENも聞き取ることができました(しかし、某国の「乱数放送」なる不気味な放送が入ってくることもありました…)。

いまではYouTubeでスティーブ・ジョブスなどの素晴らしい講演やTEDやKhan Academyなどで上質な英語が聞けるので、とても羨ましく思います。

高校に上がってから大学受験で普通に英語を勉強していたのですが、OSPという教材を使ってパラグラフリーディングという手法を覚えていました。

英単語は絶対に妥協せずに覚えよと言われたので、暗記をしていました。特に類語を覚えるように、語源を覚えたりしてまとめて覚えるように工夫していました。

大学受験の単語帳を類語・語源も含めてマスターすると、ビジネスで最低限必要な下地はできると思われます。

モンゴルで英語熱はどれぐらいか?

モンゴルは人口約300万人という小さい規模の国ですが、留学に対する関心は非常に高い国です。留学率は非常に高い国で、日本への留学生の人口比率は最も高いと言われているぐらいです。

日本に留学に来ているモンゴル人の話では、最近では英語圏への留学を志望する人が増えているようです。

モンゴルの首都・ウランバートル市内の大きな書店に行くと、英語教材で目立つのはIELTS、SAT、TOEFLの対策本です。

本格的に米国・英国留学へ行く気合を感じられます。 TOEICの本は一冊も見たことがありません。ある意味、TOIECは日本・韓国でしか見られない英語試験であることが言えます。

英会話学校でもTOEFL100点越えを達成した現地モンゴルの学生紹介の広告を見ることがあります。

モンゴルでは平均月収は50万トゥグルク(約255ドル)で、TOEFL iBTの受験費はモンゴルでは170ドルとなります。かなり気合を入れて受験することかと思われます。

一方で、旧社会主義国だったため、旧ソ連時代の時代に青春時代を過ごした40代以上の方々はロシア語を外国語として勉強していました。

政府から許可を得られないと、ロシア語以外の外国語の勉強は禁止されていたようです。しかし、その方々もロシア語から英語を勉強し直した方々の英語は結構しっかりしています。

社会主義崩壊に伴ってアメリカに出稼ぎにいったという、エルデネットという地方都市のモンゴル人のおじさんと話をしたことがあります。

その方は30半ばの年齢からA,B,Cのアルファベットからはじめて英語を勉強し始めたという人がいました。

ピザの配達からタクシー運転手まであらゆる仕事をやってきたという人でしたが、英語はかなりしっかりしていました。

ちなみにその方の息子さんにはちゃんとした英語圏の教育を受けさせたいということでアメリカに住まわせているそうです。

英語をしっかり学び、先進国の教育を受けることは立身出世につながると信じられているようです。

もともと、モンゴル語の発音は言語学的にも非常に特殊なものをあり、あらゆる言語の発音をカバーできるかと思われます。

モンゴル人の友人と私の仮説レベルの話ですが、たしかにチンギス・ハーン時代に最大の領土を支配していたことを考えると、納得出来るとことがあります。

モンゴル語では、英語の発音ですとth以外の発音はほぼ網羅しており、母音よりも子音の発音を非常に複雑で強く発音する言語なので、英語のネイティブスピーカーからするとモンゴル人の英語は聞き取りやすい方かと思われます。

また子供への英語教育はどうでしょうか。私が職場の関係でホームステイさせていただいたところのお孫さんの通っていた幼稚園でも、アナ雪の”Let it go”を英語で歌わせたりして英語教育に力を入れているようです。

モンゴルでは若い親御さんたちの間では英語教育の熱は高まっています。もともと、ロシア語を積極的に学んでいた時代背景があるからか、日本語を含む外国語が堪能なモンゴル人によく出くわしました。

さらに現地経済誌の”Mongolian Economy”によると、富裕層の間ではシンガポールへの幼児教育からの留学が盛んになっているようです。

在シンガポールモンンゴル人は170から180人いるそうですが、そのほとんどが小学生とその付き添いの保護者だそうです。

シンガポールの高い水準の教育を英語で受けるだけなく、中国語も学ぶ狙いもあるらしいです。ある意味、英語を使える華僑の上流社会に入る目的があるのかと推測されます。

モンゴルでビジネス英語はどれぐらい使えたら良いか?

モンゴルではビジネス英語がどれぐらい必要とされるか?ですが、私が現地にいた経験を振り返ると「お客様によります」としか言えません。

顧客先が外資系や国際機関であれば英語が使えないといけないのはもちろんですが、モンゴル企業でも大きいところでは英語は使える人が多いです。

日本への留学経験者があるほとんどのモンゴル人は英語ができます。もともと、日本留学をする人たちは上位層でかつ国費留学などの競争をくぐり抜けているので、英語を習得するのも問題無いレベルの人達です。

また、モンゴルに進出している日本企業も少ないため、英語を勉強せざるを得ないという事情もあるようです。

そういった外国留学経験者が就職する先は日本企業などの外資系企業、もしくはモンゴルの大手企業となります。マーケットが成熟してないため、ベンチャーはかなり少ない印象があります。

モンゴル現地の大手の例として、モンゴルで最大手の銀行であるハーン銀行は日本の「澤田ホールティング」の資本に入っているのですが、社内で夕方に英語クラスを開いているのを見たことがあります。

しかしながら、タクシーや売店などではごく稀にしか英語は通じません。大学に通ったような上流クラスの方々以外で英語を話せる人に、あまり出くわしたことがありません。

遊牧民でツアーガイドをして独学で英語をしゃべれる人や英語圏に出稼ぎに行って帰ってきたという希少な事例以外、ほとんどないと思われます。

現地で生活をしていくとなると、モンゴル語が必須となります。

また、いくら英語ができると言っても、モンゴル人は自国語であるモンゴル語を非常に大事にするので、彼らとコミュニケーションをとっていくとなると英語だけでなく、モンゴル語を学習する姿勢を見せるだけでも(実際話せないとしても)距離が大分近くなります。

こういう姿勢は現地に深く入り込む上で重要だと思います。

最後に

アジア新興国の一つであるモンゴルですが、英語がどれぐらいできるといいのか?は、TOEICでいうと700点〜800点代、TOEFLでいうと80点代、英検でいうと準1級以上あって、実務経験(これが意外に重要!)と、さらに現地語を学べば、結果を出せる水準になるのかと思われます。

次回は、私の新興国の現地語の学習経験をもとに、外国語学習における発音の重要性についてお話ししたいと思います。