このページの目的

基礎~中級レベルまでの「語彙」を身につける上では、「使うときのこと」=「この場合はどう表現するのが一番自然なのか?」を意識することが大切であることを知る

単語は丸暗記するものではない?

オノハ10

私は暗記が大の苦手。学校の英語が嫌いだった理由の一つは、単語の暗記ができなかったこと、です。

そもそも単語は丸暗記するものではない、と今でも思っています。

あなたは日本語で魚の名前をどのくらい言えますか?
海や川の中には見たことも食べたこともない魚が何百種類も存在していますが、そのうち、私たちが名前を知っているのはほんの一部、ですよね?

しかもそのうち、実際に海の中で泳いでいる姿を見て正確にその名前を言える魚はどれくらいいるでしょうか・・・?

世界で一番魚を食する私たち日本人でさえ、魚の姿形をみてその名前を正確に言える数というのはごくごく限られている・・・寿司ネタの魚の名前なら好きなものは覚えるでしょうが、そうでもないものは多くの日本人も覚えていないのが現実。

ではあなたは、自分が食べない魚の名前を、一生懸命覚えたいと思いますか・・・?

今まで覚えなかった理由は、「食べないのに名前を覚えても使うところがないから」ですよね?

英語の語彙も、これと同じ。使わないのに覚えても意味がない。だから覚えないのです。
いや一度覚えたとしても、使っていなかったらいずれ忘れます。人間の記憶力とはそういうもの。

では覚えるためにはどうすればいいか?

・・・もうわかりますよね?

使えばいいんです。
しょっちゅう使っていれば、いやでも覚えます。

私がはじめて医療翻訳を依頼されたときに、最初に見た単語は ”Musculo-skeletal” でした。
これは日本語で「筋・骨格系」と訳しますが、医療用語、つまり専門用語です。

はじめは見ても意味が正確にはわかりませんでした。見たり聞いたりしたことはこれまでにも何度かあった気はします。ですが、それまでは覚える必要がない単語だったので見たり聞いたりしてもスルーしていたのです。(医療翻訳はそんな単語ばかりですが)

そもそも意味を知らない単語を見たり聞いたりしても、人間の頭の中には入って来ません。スルーするものなのです。

ですがこの専門用語も、さすがにもう何十回も見ているので読めますし訳せませす。私の場合は仕事で和訳も英訳もやるので嫌でも使うからです。使わなくていいのであれば一生覚えない単語だと思いますが。。。

ではここで質問です。「筋肉痛」は英語で何というでしょうか・・・?
”Muscle pain” も間違いではないですし、”Sore Muscle”という場合もあります。

ですが、ほかに言い方があります・・・この学習法ページをはじめから通して読んでいる人なら覚えているはず。覚えていないとしたら・・・まじめに読んでいない人です(笑)

覚えていない人は「発音」の6回目をもう一度読んでみてください。本文の中で説明しています。

そうは言っても・・・実際には、発音の回から少し間が空きましたし、キーワードとして発音の5回目、6回目の冒頭部分に載せているとはいえ、本文中で引用したのは一回だけ。おそらく、覚えていない、という人の方が多いのでは・・・?

人間の記憶力というのはそんなもの。1回や2回見ただけで覚えられるほうが珍しいのです。

実は、キーワードは基本的に基礎レベルの簡単な単語しか使わないことにしているのですが、今回のこの質問のために「筋肉痛」はあえて使ったのです。

ではsteadilyの意味は?・・・これは今回のキーワード。この単語は英検2級程度、大学入試レベルの単語です。わからない人はここで調べてみてください。
ボキャブラリーを増やすのはこれしかない、ということを伝えるためにあえて今回はこの単語を選んでみました。

では最後にもう一つ。「Practical」の意味は?この単語に関しては、何度も「序章」から使っています。これをわからない、という人は・・・もう一度「序章1」から読み直してください。。。

単語は実際に使う文章の中で覚える

暗記の苦手な私がどうやって英語の語彙を覚えたのか?・・・それは、「実際に使う文章の中で」覚えた、というのが正しいと思います。

それは単純に暗記が苦手だったから、という理由以外に、もう一つ理由があります。

アロマフューザー

こちらの画像をみてください。これは私が最近買った、USB接続のアロマディフューザーです。

アロマディフューザーとは、加湿器の一種ですが、機械の中に水とともに好きな香りのアロマエッセンスを数滴たらして電源を入れると、霧状の水蒸気が噴出されていい香りも漂う、というもの。

この機械の使い方を3ステップで日本語で簡潔に書くとこうなります。

①水を入れる → ②香りのアロマエッセンス(perfume)を入れる → ③電源を入れる

では、これを英語で書くとどうなるでしょうか?できるだけ簡潔に書く、ということを心がけて考えてみてください。

「水を入れる」の「入れる」はなんだっけ?・・・コップに水を注ぐのと同じだから・・・Pour intoかな?
アロマエッセンスも液体だけど、こちらは1滴ずつこぼして垂らす感じだからこれはpour intoじゃないような・・・
調べてみよう・・・えっと「垂らす」のはdribble, drip, drop・・・?
で、電源を入れるのは・・・?

と、日本語の動詞は3つともすべて「入れる」ですが、日本語から英語に訳そうとすると、このようにいろいろと考えて調べて、どれが一番よく使われる表現だろう?と悩むわけです。

では、正解を見てみます。説明が箱に図解+英語で書いてあるので画像を載せます。

アロマポット

Add water → Add perfume → Power On ・・・以上。

ここで書いてある英語はすべて2語ずつ。実にシンプル。ですが、これでちゃんとわかります。
こういったマニュアルは簡潔かつわかりやすい、ことが命。なのでこれでじゅうぶんなのです。

ですが”Add”の意味を辞書的に丸暗記している多くの日本人には、おそらくこうは書けないはず。

丸暗記の弊害はココにあります。日本語の意味と英語の単語の意味は、英語で何かを表現しようとしたときに必ずしもイコールにはならない。

この3ステップの英語には、どこにも日本語の「入れる」と直訳する単語はない。

先ほどの”pour into”や”drop”も間違いではありません。
ですが、「この場合はどう表現するのがもっとも自然なのか?」が「ことば」というものを使いこなす最大のポイントなのです。

私が単語ごとに丸暗記をしない理由はまさにこれ。ケースバイケースでもっともよく使われる自然な組み合わせを、できるだけ例文を見ながら、実際の文章のフレーズの中で覚えるようにしているから、です。

それが、「使える」英語のボキャブラリーを増やすには避けて通れないステップ。
これはとくに基礎~中級レベルまでの語彙力固めには非常に大切なポイントです。

なぜなら、「基本の、重要な語彙ほど表現の幅が広い」から。・・・これについえてはこの後の回でも詳しくお話していきます。

大切なのは、基本語彙は常に自分が表現するときのこと=アウトプットするときのこと、を意識して身につけること、です。

このポイントを踏まえた語彙力UPトレーニングについて、紹介していきます。