コーチング業界をリードする、第二言語習得論に詳しいトレーナーが自慢のENGLISH COMPANY。その代表を務める岡健作さんにインタビューをしてきました。
いざ勉強しようと決心しても英語の学習ってなかなか続かないですよね。単語を覚えたり、音読したり...。最初は楽しくても3日もすると苦痛に感じませんか?
英語の習得には、何をどのように勉強するかも重要ですが、それと同じくらい「どうやったら学習を継続できるかどうか」ということも重要だったりします。
今回はENGLISH COMPANY代表の岡健作さんと、STRAIL事業マネージャーの谷原英利さんにお話を伺いました。
コーチング要素を減らすことで費用を抑えた新サービス「STRAIL」の内容に始まり、学習を習慣化するための「行動科学」についても詳しく伺ってきました。
岡健作さんと谷原英利さんにインタビュー
岡 健作(株式会社恵学社代表取締役)
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同志社大学文学部英文学科卒業。学生時代より講師としてキャリアを積む。2010年、過剰な精神性を排した合理的な学びの環境を作るべく、京都に恵学社を設立。“Study Smart” 「合理的にかっこよく学ぶ」をコンセプトに第二言語習得研究などの科学的な知見を実際的な学びの場に落とし込んだ医学部・難関大特化型の大学受験予備校を立ち上げる。2015年に予備校で培った英語指導ノウハウを活かした社会人向けの英語のパーソナルジムENGLISH COMPANYを設立。
谷原 英利(STRAIL事業マネージャー)
東京大学教養学部卒業後、伊藤忠商事に勤務。その後、米国のテキサス工科大学大学院で応用言語学(第二言語習得)の修士課程を全米大学院生トップ10%に当たるPhi Kappa Phiにて修了。帰国後は、リクルートを経て2018年より恵学社に参画。
自習型サービスの「STRAIL」
ーー どうぞよろしくお願いします。まずはSTRAILサービスを立ち上げた経緯について教えていただけますでしょうか?
岡代表:約3年半のENGLISH COMPANYの運営の中で、パーソナルトレーニングに通いたいけれど、仕事などが理由で90分週2回スタジオに通うのは難しいという声を多くいただいていました。また、パーソナルトレーニングは安いものではありませんので、価格の面で受講を躊躇されていた方が多くいたのも事実です。
そういった方のニーズをどうにか埋められないか、ということで誕生したのがSTRAILです。
プロの診断が必要な課題発見については対面での十分な時間を確保し、ご自身で反復学習をする必要があるトレーニングの部分については、自習ベースですすめられるような環境を構築しました。
結果的に、パーソナルトレーニングに比べて価格をほぼ半分に抑えることができ、スタジオに通っていただく時間は60分週1回だけで済むような設計になっています。
ーー STRAILではパーソナルトレーニングと違って、週1回しかスタジオに通う必要がありません。逆に言うと、それだけ生徒は自主性を重んじられるということでしょうか?
岡代表:おっしゃるとおり、STRAILでは基本的に週1回60分のコンサルティングのみです。ですからトレーナーが毎回のトレーニングで直接課題を解決する、というわけにはいきません。
基本的には学習を1人で進めていただきますので、どうしたら学習を習慣化してもらえるか、ということは大変重要です。
実は学習を習慣化させるプロセスについても、科学的な方法が存在します。この分野の研究を行動科学といいます。
STRAILでは、行動科学の第一人者である石田淳さんが率いるチームに監修していただき、生徒さんそれぞれに合った学習習慣化のお手伝いをしています。
学習を習慣化させるための「行動科学」
ーー ENGLISH COMPANYのパーソナルトレーニングでも、GRITカード(隙間時間を利用して学習することを習慣化させるためのカード)などの行動科学の応用事例がありますね。行動科学とはどういったものか詳しく教えていただけないでしょうか?
岡代表:行動科学とは、個人に依存した才能や意志といったものに頼るのではなく、人間が普遍的に持つ習性を利用して習慣化を形成させるための技術です。
英単語を例に、具体的にどういうふうに学習習慣を獲得していくか見てみましょう。
ここでは英語の勉強をあまりしたことのない方を対象とします。アプローチ方法はたくさんありますが、一つには習慣化したい目標までの道のりを極限まで細分化し、小さなゴールを重ねるという方法があります。これは専門用語で「系統的脱感作」と呼ばれるものです。
まず生徒さんに、こちらで用意した単語帳をお渡しします。生徒さんには、それをカバンの中に毎日入れてもらいます。ただカバンの中に入れるだけです。それが達成できれば最初のゴール。
次のステップでは、単語帳に毎日、目を通すということをしてもらいます。この段階で単語を覚えてもらう必要はまったくありません。単語帳に目を通すことが身につけば、第2ステップのゴールです。
第2ステップをクリアした段階で、初めて単語を覚えるということをしてもらいます。単語の覚え方を指導しますので、それに従って初めて単語を覚える作業をしてもらいます。
この段階になると、すでにある程度の習慣化ができていますので、実際の単語学習にも無理なく入れるはずです。ごくごく当たり前のことから無理なく習慣化のステップを踏むわけです。
人によって細分化の仕方はさまざまですが、多くのスモールステップを設けて段階的に小さなゴールを重ねていくことが、この方法のポイントです。
やる気ではなく行動に焦点を当てる
ーー 一般的にコーチング系のスクールというと、トレーナーが生徒さんの尻を叩いてモチベーションの維持に努めるようなイメージがありますが、行動科学ではやる気についてはどのように考えるのでしょうか?
岡代表:これも英単語学習を例にして、別のアプローチから見てみましょう。
行動科学では「やる気」ではなく「行動」に焦点を当てます。「やる気」というのは浮き沈みのあるものですので、その性質上、ずっと継続できるものではないからです。
「単語を覚える」というように、習慣化したい行動のことを行動科学の用語で「不足行動」と言います。目的を達成するために、単語を覚えるという行動が不足しているということですね。
そして「不足行動」には、それを阻害する「ライバル行動」があります。例えばテレビを見てしまう、スマホをいじってしまう、ビールを飲んでしまうといったことがそれに当たります。
やりたい行動(「不足行動」)を習慣化させたい場合、「ライバル行動」の発生を抑える必要があります。
例えば、単語を勉強せずにテレビを見てしまうというのであれば、テレビを消すときにプラグごと抜いてしまう、ということを実践します。
すると、次回テレビを見ようと思ったときは、わざわざ電源を入れなくてはいけないわけですから、テレビを見るハードルが上がりますよね。
家に帰るとビールを飲んでしまうのであれば、冷蔵庫の前に単語帳を常に立てかけてもらうとか。すると冷蔵庫を開ける前にちょっと単語帳を覗いてみようかなあ、という気持ちになるかもしれません。
そういったことを続けていくと、「ライバル行動」が徐々に「不足行動」に置き換わっていき、単語帳を開くことの苦痛が軽減していきます。
行動科学の大きな特徴は、自己啓発書に書かれているような属人的な方法ではなく、いつ誰がやっても同様な効果が得られる科学的なアプローチということです。つまり、多くの人にとって再現性が高いのです。
予備校から始まったENGLISH COMPANYのサービス
ーー 行動科学についてはたいへんよく分かりました。次に他社サービスと比べて優位性について教えてください。科学的な学習をキャッチフレーズに掲げるスクールさんは多くありますが、ENGLISH COMPANY STRAILと他のスクールさんとの違いはなんでしょうか?
岡代表:われわれは、大学受験生向けに合理的な学習方法を提案する予備校事業から始まった教育の会社です。設立当初から、どうやったらお客さんを集められるか、ではなく、どうやったら科学的に効率よく学習できるかということを社是として取り組んできました。
そもそも第二言語習得研究を大々的に用い始めたのも、弊社創業メンバーの中にそれを大学院で専門的に学んだ者がいて、受験生向け短期集中型の学習プログラムで実践したら絶大な効果があったからです。根拠なく科学的という言葉を使っているわけではありません。
STRAILは、対面でのトレーニングを省いたパーソナルトレーニングの廉価版ですが、それにもかかわらず生徒さんの課題を的確に発見できるのは、コンサルタントの専門性を重視しているからです。
ENGLISH COMPANYには英語教育専門家が集まる
ーー お話を伺っていると、貴校のサービスが他社を圧倒している点は、トレーナーやコンサルタントの専門性だと思います。昨年は新スタジオが次々とオープンしましたが、これだけ拡大すると、専門家の人材確保が追いつかないのではないでしょうか?
岡代表:最近、採用の面で驚いていることがあります。
大学で言語学を専攻していたという方や、海外の大学院で第二外国語習得研究を専攻していたような専門性の高い方が、弊社の求人にぞくぞくと応募してきてくれるのです。特にヘッドハンティングをしているわけではなく、自然と集まってくれています。
そのような方々が就職先にわれわれを選んでくれているおかげで、サービスの品質は落ちるどころかむしろ向上していると思います。今回、新しくSTRAILを始められたのも、多くの英語教育専門家が参画してくれたのが大きな理由の一つです。
ーー 語学教育を専門にしている人から見れば、 本当の英語教育をしているENGLISH COMPANYで自分の専門性を活かした仕事がしたい、ということですね。本日はありがとうございました。最後に一言お願いします。
谷原さん:私は英語教育業界に長く身を置いていますが、よい学習コンテンツを泥臭く愚直に作ろうとしているところは多くありません。見せ方がうまいコンテンツは多くありますが、客観的で科学的な事実を基にして作っているところは本当にわずかです。
私は昨年、恵学社に参画したばかりですが、ここは本当に学習者のためになるコンテンツを作っていたし、ここでなら第二言語習得理論に基づく英語教育を日本において実践できると考えたからでした。そして、恵学社だけでなく、業界全体もそのようになっていって欲しいと思っています。
岡代表:われわれは何をどう学んで良いのか思い悩んでいる日本の英語学習者にとって正しい学習サービスを提供する存在でありたいと思っています。
そのためには、学習コンテンツの内容を充実させていくのはもちろんのこと、日々お忙しい方々にとって受講しやすい形態を整えていく必要があると考えています。
今回の立ち上げたSTRAILが、一層多くの方に正しい学習をお伝えする機会になれば、と思っています。
インタビューのまとめ
もともとENGLISH COMPANYのパーソナルトレーニングは、学習方法に第二言語習得研究という科学的な方法を導入することで爆発的な人気を得ました。
才能がある人や、すでにスキルが高い人だけに当てはまるのは「科学的」とは言えません。「科学的=多くの人が再現できる」ということなので、結果が伴うのは当然で、実際に多くの生徒が結果を出しました。
今回立ち上がった新レーベルSTRAILは、従来のパーソナルトレーニングの「コンサルティング(課題発見) + トレーニング」からトレーニング部分を省き、それを自習に置き換えたもの。
その部分に「行動科学」を用いることで、生徒さん自らが自習を習慣化できるようにし、トレーニングは省いても効果は下がらないように工夫したのです。これは教育の会社であるENGLISH COMPANYらしい取り組みだと感じました。
時間の限られた社会人はもちろん、金銭的な理由でパーソナルトレーニングを受けられない方にも本当におすすめです。「第二言語習得研究 + 行動科学」のSTRAILをぜひ体感してみてください。