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こちらは韓国英語レポート「「雁パパ」留学費用を送金するため、ひとり韓国に残って働く父親たち」の続編です。

韓国では、日本と同様に英語の発音を重要視する傾向が強くあり、「英語を流暢に話す」=「ネイティブ並みの発音」というイメージがしっかりと根付いている印象を受けます。

そのため、綺麗な発音が自然と身につく幼少期からの英語教育が大事だと考えられており、英語ネイティブ教師への高い需要が常にあります。

そこで、今回はネイティブ英語教師から見た韓国の英語塾について、ご紹介したいと思います。

韓国では、「塾」自体がとても盛んです。受験対策や語学関連はもちろん、日本の国家資格である通訳案内士対策の塾まで存在していることを知り、驚きました。

なかでもやはり英語関連がもっとも多く、教育熱心な両親だと子供を英語幼稚園(一般幼稚園よりさらに英語教育に特化している幼稚園)に加え、英語塾にも通わせるのだとか。

私の通う国際大学院には、もともと英語教師として韓国にやってきた(けれどもそろそろキャリアチェンジしたいから院にきた)英語ネイティブの同級生が複数人いるため、彼らに韓国の英語塾事情について、話を聞いてみることにしました。

「もともと行きたかったのは日本」英語ネイティブが韓国に来た理由

「新卒」という概念がない欧米圏では、大学卒業後すぐには仕事に就かず、1〜2年間は世界中をバックパッカーとしてまわったり、ボランティアをしたりと、自由に過ごすことが珍しくありません。

ストレートな表現になりますが、そういう背景の中で、英語ネイティブたちにとって英語教師は「お金をもらいながら外国に住む」ための手っ取り早い手段となります。

アジアは英語教師の需要が高いため職を得やすく、「どうせ外国に行くなら遠くに行きたい」というメンタリティも働き、多くの人が選ぶ候補先になります。

その際、物理的にも精神的にもアジアが身近ではない彼らにとって、日本は「安全」で「清潔」で生活しやすく、「最先端の技術」と「伝統文化」が同居していて興味深く、かつ日本人は「親切」で「礼儀正しい」というイメージが浸透しているため、最初に浮かぶ選択肢とのこと。

ただ、同時に「世界一、物価が高い」という印象があるため、リサーチを続けているうちに隣国の韓国を知り、同じレベルの待遇で生活費を抑えられることに魅力を感じ、最終的には韓国を選んだそうです。

「往復のフライト代から住居までを支給」韓国英語講師の実情

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※下記の内容は英語塾の場合です。小中高および大学といった国の教育機関だと条件が異なります。

求められる資格

  • 大学卒業者であること

 ※英語を教えた経験もしくは言語学や教育学など関連の専攻を修了していることは求められない

待遇

  • 220万韓国ウォン/月(現時点のレートで19万円弱)
    ※採用時の標準、経験があればもっとあがる
  • 往復のフライト代支給
  • 住居(基本はマンションのワンルーム)の無償提供

研修制度

  • (もちろん例外もあるが)あまりしっかりしていない先が多い

ある同級生の場合、来韓して初めて勤めた学習塾では2回他の教師の授業を見学したあと、教科書と指導方針マニュアルを渡され、次からは教壇に立って教え始めたそうです。

英語教師から見た韓国人生徒は・・・?

韓国人生徒にとって韓国人教師は従うべき存在ですが、ネイティブ教師はその概念の対象外。授業に韓国人教師が付きそうかどうかで、韓国人生徒の態度は180度変わる場合もあるのだそうです。

幼稚園〜小学生までの生徒たちにとっては、ネイティブ教師との授業は遊びの時間。英語の歌を歌ったり、ゲームをしたりと、楽しい内容の授業が多いながらも、生徒たちの英語力が上がるスピードも早く、短期間でも驚くほど上達する生徒も少なくないとのこと。

反対に、教えにくいのが、(上級レベル以外の)中学生たち。本人の希望に関係なく強制的に親に塾に通わされている生徒がほとんどなため、反抗的な態度をとられ、苦労した経験も少なからずあるのだとか。

英語教師から見た韓国の英語教育

クラスの様子

ここでは、在韓歴6年かつ流暢な韓国語を話すカナダ人同級生の意見をご紹介します。

(もちろん彼の意見がすべての英語教師を代表する意見だとも思いませんが、韓国の英語教育の現状には当然社会のありかたが影響しており、在韓歴が長く、かつ韓国語を理解できるというのはフェアな判断を可能にする必要条件だとは考えています)

そもそも(母国である)カナダには「塾」自体が存在しないので、韓国の英語教育熱は異様に見える。競って子供たちに「よりよい教育を、より早くから、より多く」与えようとする韓国人父母たちの「他人を気にする目」が、必要以上に状況を過熱させているのではないか、とのこと。

この状況が子供たちに与える影響を実感したのが、教え子の小学生が「外交官になりたい」夢を実現させるべく、入学したい中学校の名前入りステッカーを筆箱に貼っていたことに気づいたとき。

カナダでは高等教育機関はどこも等しく質の高い教育が受けられると考えられているため、そもそも大学名を気にする文化にも違和感があるのに、小学生がここまで中学校名を意識していることにショックを受けた。

(補足:外交官になるためにはトップクラスの大学を卒業する必要があり、日本以上に激しい学歴社会である韓国では当然名門大学進学の競争率が凄まじく、よりよい高校および中学出身であることも大事だと考えられています)

ただし、韓国人父母たちを一方的に批判するつもりはなく、韓国社会が彼らに与えているだろうプレッシャーおよび若年層の就職難を考慮すると、彼らもまた被害者のように感じることがある。

どのような解決策をとるのがいいのかはわからないが、少なくとも韓国で子育てはしたくないので、もし結婚して子供を授かることがあれば、パートナーが韓国人であっても、できればカナダに帰りたい。

まとめ

「英語が母語」であることと「英語を教えるプロ」であることは当然ながらイコールとなるわけではありません。

ネイティブ英語教師から英語を教わることは、ネイティブの発音や英語の自然な言い回しに触れられ、英語自体に親しみを感じられるとてもいい機会であることは間違いないと思います。

ただし、英語と日本語はとても性質が異なる言語なので、日本語ネイティブの私たちが英語を正確に理解して身につけるためには、日本語と英語の両方を知る教師のほうが相応しいケースもあるかもしれません。

教える側の話を聞き、英語を学ぶ場合には、「質の高い英語教育とはなにか」「具体的には英語力のどの部分を重点的に伸ばしたいか」をしっかりと考え、自分の能力と目的に合った方法を選ぶことが重要なのではないでしょうか。