通訳翻訳キャリアを形成する日本人が東南アジアで仕事をするケースは、今はほとんどありません。実際に仕事をした中で私が大事だと感じたこと、実際に仕事をした人の感想をまとめます。
日英通訳のクライアントは「英語ができない日本人のおじさん」。相手の気持ちを理解しよう
東南アジアで通訳翻訳が必要なのは日系企業で、日本人の英語ができない重役のサポートが主な仕事になります、つまりクライアントは日本人のおじさんです。
おじさんの思考回路や行動原理、言葉遣いを理解して仕事をしましょう。インハウスで仕事をする以上、毎日顔を合わせることになります。
性格的に合えば問題ありませんが、合わない場合は大変です。また、日本語である以上、主語や目的語がよく抜けます。
日本語で聞いてもあまり意味の分からない発言をうけて、どう伝えたら外国人に腹落ちしてもらえるかに頭を悩ませることが時々あります。
「海外で仕事をしたことがない」コンプレックスが解消できる
日本生まれ、日本育ちの通訳翻訳者がよく言う言葉として、「自分は海外での生活も就業経験もないから・・・」という言葉があります。
単なる「隣の芝生は青い」だったり、謙遜なのだと思います。しかし長いキャリアのうち、何年間かは海外でやってみても損はないと思います。
特に食習慣や宗教など、日本に住んでいたら正直な所あまり分からない点に対する理解が深まるのも、海外で仕事をするメリットだと思っています。
もちろん毎日外国人に囲まれて仕事をする、異文化の中に自分を置く、というのはストレスになりますが、日本では得がたい体験だと思います。
通訳する相手が場のマイノリティであり、その声を代弁することもよくありますので、マイノリティの立場を身をもって体験するのは、大きな経験だと思っています。
通訳が相手の気持ちを理解して、または理解しようとして一緒に仕事をする中で相手との信頼関係を築けると、仕事の質も上がります。
逆に言うと、日本でしか生活したくないなら、海外に行かないほうがいいと思います。色々と変化するのに耐えられない場合は特に厳しいです。
未完成で粗いけど伸びている、その変化を楽しむのがアジア生活をエンジョイする醍醐味ではないでしょうか。
給料は日本より安い
マレーシアはスタートが月給15万円位です。給料を上げて欲しいなら、交渉が必要になります。交渉は対会社になりますが、相手は主に経費削減のために海外に出た日系企業の経営陣です。
自分を残して高い給料を出す必要性を相手に感じてもらえないと、給料上昇は期待できません。
夢を叶えた後も研鑽が必要
スキルも語学力も日本で求められるレベルではなくても、仕事を継続すればパフォーマンスを向上させる事は可能です。
通訳のパフォーマンスをものすごく単純化すると、以下のような計算で表せます。
「スキル×語学力×業界の知識や経験=パフォーマンス」
例えば、通訳がまあまあ上手い人とあまり上手くない人のパフォーマンスは以下のように算定されます。
- まあまあ上手い人:3×3×2=18
- あまり上手くない人:2×2×5=20
スキルも語学力も劣っているあまり上手くない人でも、まあまあ上手い人よりもパフォーマンスの数値は高くなっています。
インハウス通訳・翻訳として勤務して社内会議や社内文書に対応すると背景知識やコンテクストが分かっているため、フリーランスで毎回違う現場に行くよりも仕事はしやすいはずです(インハウス通訳とフリーランス通訳の違いはこちらの記事をご参考にして下さい)。
この点から見ても、キャリアのスタートはインハウスのほうがいいと個人的には思っています。しかし、その副作用として、怠け癖が付く可能性もあります。
一社で慣れてきて背景知識や経験を蓄積することで、通訳スキルを伸ばす努力をしなかったり、語学力を高める努力を怠ってしまう可能性も出てきます。
こうなって異業種他社にいくと、背景知識などの土台が無くなってしまうため、パフォーマンスが劇的に落ちる可能性もあります。
インハウス経験も大事ではありますが、逆にそこに依存したまま仕事を継続すると、伸び悩む原因にもなりかねません。
一つの会社で長く勤めるのも一つの選択肢ですし、渡り歩くのも一つの選択肢です。自分がキャリアをどうしたいのかを考えた上で、選ぶのが良いのではないでしょうか。
まとめ
人によっては海外で通訳翻訳をするほうが自分にあうと思う可能性もありますので、長いキャリア人生の中、最初の1~3年を海外で始めても悪くないのではないでしょうか(ただし、私は2年通訳学校で勉強して、基本的なスキルやポイントなどを勉強してから挑みました)。
現状ではTOEIC800あって英語でしっかりコミュニケーションを取れれば、東南アジアならそこそこやっていけます。
ただし、その次にどうするか、総合的に日本語力・英語力をどう伸ばしていくか、キャリアをどう築いていくかを考えた上で選択をしてください!
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