マレーシアで通訳翻訳をした知り合いがいるのですが、その人と話をした際に、私自身もインドやマレーシアで似た様な経験をしたよ!と盛り上がったことがありました。
もしかしたら、日本で通訳をしても似たような感じなのかも知れませんが、上司の言う、こんな言葉が信用できないシリーズとして、ちょっと紹介したいと思います。
日常会話の通訳だけやってくれればいいから
「コピーを10部、昼食明けまでにお願い」や「納期が~だから、~までによろしく」といった言葉はある程度定型句だったり、ルーティーンがあるので何とかなります。
社内の会議における通訳でも定例なら議題は大体決まっているので、できて当たり前です、社外の人とビジネスの話をしても、そう突飛な発言はありません。
ある意味で一番難しいのが日常会話です。食事の席での話しから、ふと歴史や文化の話になる可能性もあるし、何よりも事前に予習をするのが不可能なので難しいです。
用語とか、分からないことは聞いてくれていいから
大体、聞きたいときに上司は忙しいのでいなかったりします。または、聞いても説明がイマイチ分からない事もあり(こちらの知識や経験不足なこともありますが)、再度質問をすると表情にイライラが出ていたりします。
「聞いてくれていいっていったじゃん・・・」と思いながら、中途半端に理解したまま「さてどうしようか・・・」と考えることも時々ありました。まぁ何とかしないといけないので、何とかしますが。
とりあえず、いった事をそのまま訳してくれればいいから
同時通訳をする際には、色々なことを同時にしないといけないので大変です。
- 微妙なニュアンスをどう伝えるかに気を配る
- 日本語と英語の違い(語順等)に配慮しながら、前に言っていたことを思い出しつつ訳す
- 話を聞きながら訳す
といった感じです。特に上記2が曲者で、語順のみならず省略に対しても気を使わなければなりません。主語が抜けたり目的語が抜けたり、そもそものソース言語で情報が足りない事もあります。
訳出するのに不足または曖昧で、このままだと意図としている事が誤解される可能性があるから、そうならないように確認をしたいと思ってそこを聞くと、
「いった事をそのまま訳してくれればいいから。まぁ、適当にいい感じにしておいて」と言われたりします。いや、それができないので確認をしたいのですが・・・という感じです。
とりあえず~ができてれば大丈夫だから(~は「翻訳」や「いまのパフォーマンス」等)
一見とても優しい言葉に見えますが、もちろん現場では違います。
自分の言っていることが通訳を介しても伝わらなかったりすると「大丈夫」ではなくなります。「ちゃんとやれよ」という負のオーラをひしひしと感じることがあります。
または本人はその負のオーラを出さないようにしてくれますが、その配慮が逆に苦しかったり、その負のオーラの残り香のようなものを感じたときには、ものすごく申し訳なく感じてしまいます。
お金もらって仕事としてやっている以上、「通訳」が求められたら、その場ではきっちり「通訳」をしないといけないですが、言ってることと態度が違うと、少し苦しいです。
といっても、出来ないことを「ちゃんとやれ」を常に言われても苦しいし・・・難しいですね。
私「優先順位は?」上司「全部」
以下の条件が一気にきたらどうしますか?
- Aさんの家の建設工事が完成に近づいているので、施工業者と立ち会うため(インドだと業者が手抜きをするので、それを止めるため)今週はAさんがお休み。通訳翻訳のマンパワーが土台足りていない
- Bさんの子供が熱を出して急遽お休みになったから、納期今日の午前中でBさんが仕上げるはずだった翻訳をあと3時間で終わらせないといけない。終了まであと3時間くらいかかる。
- もうすぐ電話会議が始まる
- 上司から、今度来る日本の出張者対応のブリーフィングを「なるべく早めに」したいといってきた
分かるんですよ、一個一個が大事なのは。でも体は一つだし、マルチタスクとかいうレベルではない状況もあります。
そもそもマルチタスクって、じゃあ電話会議中に翻訳できるか?といえば明らかに無理です。どの職場にも「あるある」なのですが、東南アジアで通訳翻訳をしていてもよくあります。
全部訳さなくても、要約してくれれば良いから
「全部言うのも大変だろうから」という配慮で、こう言ってくれることもあります。
明らかに同じ言葉を繰り返しているだけだから削ってOK、といったレベルなら問題ないのですが、通訳としてはあまりうれしくありません。
というのも、要約する際にどこを削ってどこを残すか?という点が不明だからです。翻訳の仕事で、極端な例を出します。
- 私に契約書を要約してくれと指示が出たので要約した
- その内容を元に会社がサインをした
- 実はものすごく不利な条項があったのに要約でカバーしていなかった
- 会社が多大な損害をこうむった
となる可能性があるからです。契約書を要約というのはありえないと思われるかもしれませんが、過去にそういう指示を受けたことがあります。
本来通訳翻訳は情報の取捨選択をすべきでなく、フィルターとして機能せずそのまま訳出することが職務です。
その際には契約書の項目を訳して、その中から必要な条項を指定してもらって全訳という形で逃げました。または、ソースの内容自体を整理してもらって全訳、というのも一つの選択です。
次回は、東南アジアで仕事をするのが面白いかも!?と思った人に、もう一度考えてもらいたいことをまとめます。
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