楽天の英語公用語化の現状

グローバルで活躍する人材を育てようと、社内公用語を英語化したり、英語に力を入れる企業が増えています。楽天やユニクロ、ソフトバンク、サイバーエージェントなどがその一例でしょう。

みんなの英語ひろばでは、そんな企業を追った「英語化する企業」を不定期で連載します。第1回目は、およそ3年前から準備を始め、昨年7月に社内公用語完全英語化に踏み切った楽天。

英語が苦手な社員にも強力な支援を

三木谷浩史社長が社員へ社内公用語英語化を発表したのは、およそ3年前の2010年2月1日のこと。

同年春にはまず、取締役会や経営会議など社内のトップが集まる会議、また全体朝会で使われる言語はすべて英語に移行しました。

その後は社員食堂のメニューなども英語表記となり、会社にいる誰もが英語化の波を意識するようになりました。

会社単位だけではなく、部署単位でも英語化は徐々に浸透。英語力アップには語彙力が欠かせないと、毎朝英単語チェックを全員で行う部署も出てきます。

退社後は毎日単語帳の例文を音読し、翌朝全員でアウトプット。まるで学生時代に返ったかのような感じ。その頃から英会話スクールへ通う人も増えていきました。

楽天本社近辺の英会話スクールは楽天社員で埋まり始める、という現象も。社員の英語力を測るために使われていたのがTOEIC IPテスト。

誰もが積極的にテストを受験するようになっていたのもこの頃のこと。2010年12月時点での社内のTOEIC平均スコアは526.2点。

これではマズいと危機感をおぼえた三木谷社長は、一般社員が600点以上、係長クラスが650点以上、部長クラスが750点とTOEICの目標スコアを定めました。目標値を掲げることで、学習スケジュールを立てやすくなります。

これを達成できなかった社員は、目標スコアとの開きによってゾーン分けされ、200点以上足りなかった社員はレッドゾーンに置かれ、降格あるいは給料の1割減という処分をされることに。とはいえ、ひたすら厳しく取り締まるだけでは救いがありません。

無料でEラーニングを受けられるようにしたり、基準点に満たない社員を集めて200時間を超える授業を受けさせたり、業務中の英語学習を認めるなど、英語の苦手な社員へのサポートも怠りませんでした。

英語化正式スタート!2年間で平均スコアが160点以上アップ

そして2012年7月1日、およそ2年間の移行期間を経て、ついに英語公用語化が正式にスタート。その間に全社員のTOEIC平均スコアは、526点から694点へと160点以上も伸びていました

また、完全英語化に伴い、社内会議やイントラネット、メール、議事録、会議資料はすべて英語へ切り替わりました。

インド人を中心とする外国人社員も、全社員の3割以上と増加しています。特に開発部では、チームの半数以上が外国人で構成されているというのも珍しくありません。7月以降、実際に見られた変化を現役社員に聞いてみました。

社員の声

英語を話す機会が非常に増えたので、外国人に対する抵抗感がなくなりました。話すときにも億劫な気持ちになりません」(26歳/男性)

外国人従業員と関わるので、様々な価値観を感じられて刺激的。外国の文化を聞くこともできるので面白いです」(34歳/男性)

日本人だけのコミュニケーションよりも圧倒的に、やりとりする情報量が増えたように感じています。良い意味でも悪い意味でも」(30歳/男性)

海外から来るメンバーはモチベーションが高く、自分にとっても刺激になることが非常に多いです」(27歳/女性)

英語を話すのが怖かったですが、毎日外国人メンバーと会話をしていて、細かい文法の正確さよりも伝えようとする気持ちの方が大事だなと感じています」(31歳/女性)

特に、開発部を中心に外国人従業員と関わる部署では、英語化の恩恵を多く受けているようです。

ほとんどが日本人従業員で構成され、外国人と関わることは少ないという部署では、リアルな英会話をするのは意識しないとなかなか難しいよう。

ただ、せっかく楽天という会社の中にいるのですから、外国人従業員と積極的に絡むことで、リアルな英語力は鍛えられそうですね。

リアルなトークで実践的な英語力を鍛える

社員は英語をどう勉強しているのでしょうか。楽天はなかなか忙しい企業です。もちろん英会話スクールへ通う時間を捻出している人も多いですが、「そんな時間はないよ!」というリアルな声も聞いてみました。

机について勉強をするというよりは、外国人と話をして、外国人がしゃべる表現を真似して、みたいなことを繰り返すうちに、TOEICが650点から750点に伸びました!」(34歳/男性)

単語の暗記、教本のシャドーイング、NHKの語学教育番組で勉強しました。語彙が足りないとTOEICはもちろん、社内会議や外国人社員との交流はできません。3年前はTOEICが400点台だったのですが、今では700点に手が届きそうです」(27歳/男性)

仕事が忙しくて、とりたてて勉強はしていません(笑)。ただ業務時間中に、どうしてもチームの外国人メンバーと英語で会話をするので、毎日実践的に英会話はしています。以前より早口で英語を話せるようになりました。TOEICもリスニングが圧倒的に伸びました」(29歳/女性)

ネイティブと英語を話せるという機会を活かしている人が多いよう。しかし、ある程度の語彙を身につけておかないと、そもそも英会話は難しいという声も目立ちました。

まずは語彙力! 語彙を増やしつつ、英語を話す機会を日常的に作ることが、シンプルながら英語力アップの最大の近道のようです。