「外資系企業」というと、どんなイメージを浮かべるでしょうか。英語は話せて当たり前、自由な雰囲気があって、男女の別なく「実力」で評価される。

その代わり、実績を残せなければ、すぐに職を追われる……など、様々な印象をお持ちの方がいるでしょう。今回は、そんなイメージを裏切る「名ばかり外資系」企業についてのお話です。

なんと、「100%外資系企業なのに、英語を話せる社員が1人しかいない」という企業が、あるのだそうです。実際に、そんな「名ばかり外資系」で働く、ある女性から話を聞いてきました。

面接は英語だったのに……

「英語とキャリアについて書いているなら、ぜひ、『名ばかり外資系』企業のことも取り上げて下さい!」

先日、ある知人(Kさん)から、こんなメッセージが届きました。彼女はアラサー世代で、高学歴の「リケジョ」です。英語が堪能な上、プログラミングにも明るい。

キャリア意識が高く、ハードワークも厭いません。そんな彼女は、最近、新卒で入った日系企業を辞め、ある外資系システム会社(B社)へ転職したばかりです。B社は、米国グローバル企業の日本法人。面接も、当然英語で行われました。

「HR(人事)との電話面談は英語だったし、世界各国のリージョンとのやりとりもあると聞いていたんですよ。当然、自由な外資の社風だと思っていたのですが、実態は違いました」(Kさん)

英語が話せる社員は1人だけ、競争もない「ぬるま湯」外資系

まず、外資系企業なのに、英語を話せる社員がHR(人事)の1人しかいないんですよ!入ってから、これはちょっと話が違う、と感じました。各国リージョンとの関わりもほとんどないので、業務で英語は使いません。『これが本当に、外資系企業なのか?』と」

日本法人だから、基本的には日本の顧客が相手とはいえ、本社とのやりとりなどで、英語は必要なはずです。

それなのに、英語を話せる社員がいない。ショックを受けたKさんですが、さらにショックだったのは、社員が「典型的な日本のサラリーマン」だったことでした。

「うちの会社では、グローバルなコミュニケーションは、求められていないんですよ。社員のほとんどは日本人男性で、専業主婦の妻がいて、子供がいて、自宅のローン返済のために働いていて……という、日本の典型的なサラリーマンです。それが悪いわけではないのですが、皆、守りに入っている。一応、ベンチャーなんですけどね。飲み会では、若手が『一発芸』をやらされたり、お酌させられたり、日本の悪しき『飲みニケーション』がまかり通っています。上司の愚痴を言って、かりそめの連帯感を感じている人も多いんです。風通しはよくありません」(Kさん)

Kさんは、そんな光景を見て、「これがガイシケイ???」と、頭の中がクエスチョンマークで一杯になったそうです。外資系とはいえ、なぜか雇用が安定しているので、みんな「のんびりしている」。

競争もなく、基本的には年功序列制。社員たちが、自らイノベーションを起こそうという気運もゼロだそうです。

こうなったら、自分でイノベーションを起こしてやる!?

だいたい、業務で一切、英語を使わないのならば、なぜ英語で面接をしたのでしょうか。もしかしたら、優秀なKさんに、期待を高めて入社してもらうための、一種の「戦略」だったのかもしれません。

そもそも、「外資系企業=社員が対等にコミュニケーションを取っていて、風通しがいい」というのは、幻想なのでしょうか。

Kさんは、反論します。「いえいえ、『外資』の良い部分が、きちんと生かされている企業は、沢山あると思いますよ。私が入った会社が、たまたま『名ばかり外資系』だっただけで……例えば大手外資系の◯社とか、△社なんて、風通しの良さや、ダイバーシティへの先進的な取り組みで知られていますよね。あれは本物の『外資系』。私の入ったB社は、そういう良い意味での外資系らしさが、全く無かっただけなんです。ただの、古き良き、そして悪しき日本企業でした。記事ではぜひ、『名ばかり外資系』には気を付けて下さい、って、書いて下さいね……」(Kさん)

私たちは一般的に、外国資本が入っていれば「外資系」、と考えがちです。そして、外資系企業というからには、英語力は必須で、グローバルなコミュニケーションの土台があり、競争が激しいのだろうと考えます。

が、Kさんが入社した「グローバル企業の日本法人」は、米国資本100%にもかかわらず、日本のサラリーマン文化が支配する「日本のカイシャ」でした。それを事前に見抜くことは、ほぼ不可能だったといいます。「名ばかり外資系」、恐るべし。

一口に外資系といっても、その実態はさまざま。B社にはぜひ、素晴らしい能力をもったKさんを「塩漬け」にせず、その能力を開花させて欲しいと強く思います。

Kさんは、失望こそしたものの、今は気を取り直して、各国のリージョンで行われるビジネスプランコンテストに応募しようと頑張っています。

業務で英語は使いませんが、毎日、仕事帰りにBBCニュースを見て“Empowerment”されていると、言っていたのが印象的でした。

どんな企業に入っても結局、自己研鑚を怠らず、自らの強みを磨いていけば、将来のキャリアは自然と開けてくるのかもしれない。たとえそれが「名ばかり外資系」でも……。Kさんと別れてから、そんなことを思いました。

北条 かや

1986年、石川県金沢市生まれ。「BLOGOS」はじめ複数のメディアに、社会系・経済系の記事を寄稿する。同志社大学社会学部、京都大学大学院文学研究科修士課程修了。民間企業に勤務後、14年2月、星海社新書より『キャバ嬢の社会学』を刊行。Twitter: @kaya8823
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