ベトナム語から見えた英語

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こんにちは。クボタカズミです。さて、今回はベトナム語を習ったことで気づいた英語との関連性や英語の重要性について書こうと思います。

私の英語力は、西洋英語圏ではまだまだ学習者レベルだと思います。留学経験はありませんが、日本国内で15年ほど自習したことと3年間のSkype英会話、仕事やプライベートで多少英語を使った経験からそこそこのレベルにはなり、その後ベトナムに来ました。実は今でも、英語ひろばの他のプロフェッショナルな方々のコラムなどを参考にしています。

それでもベトナムで(英語が媒介語の)日本語講師/英語講師という仕事をしているのは、一つはベトナムが非英語圏であり、かつタイなどの周辺国に比べると母数の在住日本人が少ないため、ある程度の英語力がある在住日本人自体がそもそも少ないという状況があり、もう一つは私が第二外国語にも非常に強い興味があったからかもしれません。英語ではない別の言語を同時進行で勉強することで、言語そのものが立体的に見え、また様々な文化やバックグラウンドを受け入れることにもつながりました。

英語に加えてベトナム語を学ぶことに、ためらいはなかった

私は20代前半から英語以外の言語にも興味があり、長らく「英語+他1言語」の勉強をしてきました。ドイツの教育に関心があったのでドイツ語、次に韓国語が面白く感じ韓国語スピーチコンテストに出場、それから仕事で仏文科のアシスタントをすることもあったので、仏検4級を取ったりしました。英語はやっておいた方がいいのかなと思いつつ、英語に飽きると別の言語に触れていました。

というわけで、ベトナムに住むことが決まったとき、迷わず日本でベトナム語が学べる大学の公開講座に申し込みをしました。そこで5ヶ月間ハノイ出身の先生に日本語でベトナム語を教わり、簡単な挨拶程度はできるようになりましたが、ベトナム語は「非常に発音が難しい」ということと「ハノイとサイゴンで発音や語彙がだいぶ違う」ということを知りました。

マンツーマンでベトナム語を教わる。ベトナム語の発音に比べれば、英語の発音は何てことはない

サイゴンに来て、やはり日本で習ったハノイのベトナム語はちょっと違うなと思い、ベトナム語学校で地元出身の先生の英語による個人レッスンを頼みました。ともかくベトナム語は発音が難しいので発音を徹底的に直してもらいました。口や舌を色々な形に動かし、咳き込むまで Ơ と O と Ô などの母音の発音練習をしたり、声調を大げさなくらいに付ける練習をしました。

またよく使うフレーズ、タクシーで伝えなくてはならない通りの名前、自分の住所などは先生にiPhoneに録音してもらい、その音声を聞きながら完全に同化するまでオーバーラッピングをしました。そうすると、旅行で来た時には発音が全く通じず打ちのめされたベトナム語が、フレーズによっては分かってもらえることも徐々に増え、「もしかして出来るかも?」という希望が見えてきたのです。

ベトナム語の鍵はとにかく発音で、11個の母音、 6個の声調の組み合わせがあります。私が今、主に使っているテキストであるVSL(Vietnamese as a Second Language)の前半は発音練習のみで、はっきり言って無味乾燥です。

日本人の耳には ”khăn, khân, khăm, khâm" などと練習しても全部同じに聞こえてしまい、ここで嫌になってベトナム語をやめてしまう人が(他の外国人でも)多いようです。しかし毎日の日課として、口腔断面図を見ながら舌の形を意識してこの発音練習をしていると、ベトナム語が上手になるかはともかくとしても、「英語の発音なんて大したこと無い!」と気楽になりました(笑)。

ベトナム語を学びに、在ベトナムの外国人が集うホーチミン市人文社会科学大学へ。初級授業は英語の説明が長く、休み時間も英語でおしゃべり

【写真】眺めが良い人文大学の渡り廊下。中心部のLe Duan通りにあります。

その後一旦仕事を辞め、自分の為のまとまった時間を作りました。そして以前から気になっていた、ホーチミン市人文社会科学大学(人文大学)のベトナム語コースへ入学しました。ここは、日本や他の国からの交換留学生も通うコースで、いわゆるベトナム語の「語学留学」です。私が日本でずっと夢見ていた「語学留学」が意外な形で30代も後半で実現しました。

そして授業を受けているうちに、少しずつベトナム語の全体像が見えてきました。文法は英語と同じSVOの語順で、しかも語形変化がありません。文法が英語と似ているため、英語で説明するベトナム語文法は明快で、日本でベトナム語を習ったときよりも簡単に感じました。また、ベトナム語はアルファベット表記ですが元々漢字を使っていたため、特に名詞に関しては漢字の知識が非常に役に立ち、単語暗記に苦労している他のクラスメートを見ると、日本人にとってはある意味学びやすい言語かもしれないとも思い始めました。

教室では英語を話すベトナム人の先生が2人交代で教え、クラスメイトは10代後半の韓国人男性Yくんと、40代後半のドイツ人女性Mさんの2人でした。テキスト(VSL)は英語で書かれており、授業進行も英語です。クラスメイトは二人とも、今後ベトナムで長年生活する予定だと話していて、真剣に授業を受けていました。

休み時間にはYくん、Mさんとの輪の中に隣のクラスのリタイア後のベルギー人男性も入り、年齢層の上がった生徒4人の輪では、サイゴンの歴史やカンボジアとベトナムとの関係など、少し硬い話もしました。全員ベトナム語は初級で、国籍も皆違ったのでコミュニケーションは英語です。共通の話題の「ベトナム」と「ベトナム語」があるので話は尽きません。初めての「語学留学」、そして「国際交流」が思わぬ場所で行われました。

【写真】英語で書かれている人文大学のVSLテキスト(左)と、日本から持って来たテキストや辞書

ベトナム語を学んだことで、癖のあるベトナム英語が理解できるようになった

さて、最近読んだJapan Timesの記事の中で、「日本人の英語力はベトナムのような国にも抜かされてしまった」という一節があったのであれっと思いました。というのは、抜かされる以前に既にベトナムでは、日本よりも英語が生活に浸透していて英語を話す人が多い印象があったからです。フレンドリーな人々の気質によるのかもしれませんが、英語教育の方法がコミュニカティブアプローチ中心なのかなと思っています。

とはいえ、最初はベトナムの人が話す英語について

  1. 文法がラフ
  2. 流暢なのに、発音が聞き取れない

と思っていました。この原因が、1はベトナム語文法と英文法の違い、2はベトナム語の発音の影響によるもので、ベトナム語を学ぶにつれて少しずつ解決していくのは面白い現象でした。

ベトナム語文法に関しては、過去や未来を表す時に動詞に付ける単語があるのですが、その単語は、「昨日」「明日」といった語が文中にあれば省略するというルールがあります。それが英語に適用され、”I go there tomorrow.” などといった「現在形+時を表す副詞」で時制を表現することが多いです。

発音に関しては、ベトナム語では音節が子音で終わる場合、その子音は発音をしてはいけないというルールがあります。例えば Việt Nam(ベトナム)は「ヴィエッ・ナ」のような発音になります。そのルールを英語に適用すると、friend, friends, Frenchが全て同じ「フレン」のような発音になってしまい、friend / friendsの話だと思って聞いていたのが全てFrenchだったということがありました。

また、Rをザ行で読む(北部ベトナム語)、Dをザ行(北部)/ヤ行(南部)で読む、Qを発音しない(南部)、Trをチャ行で読む、アルファベットはフランス語読み、などを知ることで、ベトナム英語の発音からスペルを推測することもできるようになってきました。ベトナム語を知ることで、日本語と英語という一つの関係でなく言語間に複数の関係性が生まれ、より英語を深く理解することにつながりました。

次回は英語で日本語を教えている話です。ベトナムには、日本語を学ぶ世界各国の人がいました。

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クボタカズミ

1975年神奈川県横浜市生まれ。美術大学建築学科中退、総合大学の教育学科を卒業後、大学附置外国語ラボのスタッフとして勤務。出産後に再就職に困り英検準一級と宅建を取得するも、再び大学スタッフへ。2013年に夫の仕事の都合でベトナム・ホーチミン市に居住地を移す。社内翻訳業務を経て、現在はベトナム在住の外国人に日本語を、在住日本人に英語を教える。一児の母。
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