「たった2日で英語が喋れるようになる」というスローガンを掲げ、2日間の英会話国内留学を提供する「イングリッシュブートキャンプ」で体験レッスンを受けてきました。

「2日で英語が喋れる」とは一見信じがたい内容ですが、ビジネスマンや企業に幅広く支持されている理由は何か、探ってみました。

今回レッスンを体験してみて感じたのは、イングリッシュブートキャンプは英語の知識を増やすスクールではなく、今ある英語力でいかに勝負するかを引き出してくれる場所だということです。

  • 高校卒業程度/TOEIC350点以上相当であれば、2日間で英語を喋れるようになる
  • 英語オンリーの、話さざるを得ない環境で「自主性」を身につける
  • 実践を繰り返し、異文化コミュニケーションへの抵抗感をなくす

何か月~何年と時間をかけて英語力を伸ばす余裕のない方が、2日間の国内英語留学で「今ある英語力で堂々と英語で渡り合う」パワーを授けてくれることがよく理解できました。

イングリッシュブートキャンプの特徴

イングリッシュブートキャンプは、丸2日間英語のみの環境で「話す」特訓をすることで、今ある英語力で勝負できる態勢を整えてくれる、いわば「英語 虎の穴」です。

丸2日間(計20時間)のプログラムは、主に週末に開催されます。料金は107,800円(税込)。2日間で計3回の食事が含まれています。

宿泊する場合は自分で宿をおさえる必要がありますが、自宅からの通学でももちろんOK。

今すぐ英語コミュニケーションが必要な方、英語を長く学んできたがどうも話せるようにならない方、読み書きはできるが話すのが苦手な方には特に効果を発揮します。

TOEIC350点相当の力があれば「セカンドベストイングリッシュ」を話せるようになる

イングリッシュブートキャンプでは、高校卒業程度、またはTOEIC350点相当の英語力があれば、2日間で英語を喋れるようになるとしています。

これらは基本的な文法は理解しており、ゆっくりであれば何とか自分の意思表明はできる程度の力。逆に言えば複雑な文法を理解したり、ビジネスの場に十分な語彙を持っていたりするレベルには到達していません。

それでも「喋れるようになる」としているのは「セカンドベストイングリッシュ」という考えに基づいているためです。セカンドベストイングリッシュとは「2番目によい英語」という意味です。

もちろん時間と労力が十分にあればネイティブレベルで英語を使えるようになるのが「ベスト」です。しかし多くの人にとって「ベスト」を目指すには時間も労力も足りません。

よって「ベスト」を目指すことはいったん脇に置き、今ある英語力を総動員して「使える英語力」にするという意味で、イングリッシュブートキャンプはセカンドベストイングリッシュという言葉を使っています。

丸2日間、英語オンリー。「話さざるを得ない」環境で瞬発力を身につける

イングリッシュブートキャンプは、ひとたび教室に入ると「英語オンリー」の環境です。他の日本人参加者や講師とも英語でコミュニケーションを取らねばなりません。

特に初心者向けの英会話スクールであれば「英語で発言に詰まったら、日本語を話せばよい」ところが多いです。

しかしたった2日間で英語を喋れるようになるためには「発言に詰まっても、英語で何とか話す」という、ある種の「修羅場」を何度も乗り越える必要があります。

日本語に逃げてしまいそうな状況でも、踏みとどまって英語で話し続けます。英語力が十分でない人ほど、話し続けることで単語や語形、文法のミスが多くあるかもしれません。

それでも英語で話し続けることで「今ある英語力で何とか渡り合う瞬発力」を身につけることができます。

主体的に英語を話さなければならない環境で、コミュニケーション能力を伸ばす

英語で話す力、コミュニケーションをとる力を養うためには、自分から英語で何度もコミュニケーションを取ろうとする努力が大切です。

多くの英会話スクールでは、先生の言うことをきれいにメモして、あまり発言しない生徒さんも多くいると思います。イングリッシュブートキャンプはそうしたレッスンとは全く異なります。

ビデオで解説 → 講師が解説 → 立ち上がって皆で一斉にコミュニケーション

このような主体性が求められるAction型のトレーニングを繰り返すため、座ってきれいにノートを取り続ける暇はありません。(講義の内容はハンドブックで配布されるので心配はありません)

立ち上がり、決められた時間内でなんとか英語での会話を繰り返すことで、場面場面でどのようにコミュニケーションを取ればよいかを習得します。

イングリッシュブートキャンプに行ってきました

イングリッシュブートキャンプは、東急田園都市線、東急大井町線の二子玉川駅から徒歩5分の距離にあります。

入口のドアを開けると、すぐ「これまでの受講者の集合写真」が目に入ります。

先生はみんなEnglish Boot Campのユニフォームを着ています。迷彩柄なので迫力があります。

教室は広々としており、落ち着いた内装でまとめられています。

中央に大きなスクリーンがあり、その前に参加される生徒さんが座れるようになっています。

レッスンに参加

今回、イングリッシュブートキャンプのレッスンにオブザーバーとして参加させて頂きました。筆者が参加させていただいたのは、レッスン1日目の昼食後のレッスンです。

なおレッスンの流れは以下の通りです。筆者は Impact Intro (Introduction) のパートの一連の流れを拝見しました。

はじめに参加者全員がスクリーンの前に集まります。講師のRob先生が「Impact Introduction」の重要性について簡単に解説を行います。

単なる自己紹介では印象が薄く、重要な人だと認知してもらえないので「インパクトのある自己紹介をしましょう」という解説です。

続いて全員で「Impact Introduction」のビデオを見ます。

ビデオは難しい単語を使わず重要なメッセージが伝わるよう工夫されていました。「Impact Introduction」の良い例と悪い例が両方続けて紹介されていたので、大変分かりやすかったです。

上記画像の通り、インパクトのある自己紹介を自信を持って行うには

  • Strong eye contact
  • Warm smile
  • Strong handshake

の3つが大切になります。こうした内容の一つひとつに、イングリッシュブートキャンプの代表である児玉さんが、総合商社での海外実務経験から学んできたエッセンスが凝縮されています。

続いてRob先生から「1分間で5人と自己紹介してください」とアナウンス。「1分間で5人」ということは1人あたり12秒。しかも英語で、です。

Rob先生から「よーいスタート!」の合図が出されると、みんな一斉に立ち上がり、近くにいる人を捕まえて自己紹介し合います。

1人あたり12秒です。のんびり自己紹介している暇も、シャイになっている暇もありません。急いで自己紹介して、終わったら別な人を捕まえて自己紹介。

…とやっているうちに、多くの人が1分間で5人との自己紹介を無事終えたことに驚きました。

これは大変な集中力です。能力を引き出すために、あえて短い時間での自己紹介という小さな「修羅場」を作っているのではないかと思いました。

英会話力上達への障害となりうる「恥ずかしい気持ち」や「会話を人任せにしてしまうクセ」。これらを感じるヒマなく、全員が主体的に話さなくてはならない状況が作られていました。

自己紹介が終わると再び席につき、Rob先生の解説、ビデオ、再び立ち上がって短時間で多くのコミュニケーションをとる「修羅場」を乗り越えていきます。

筆者の目から見るに、このリズムと流れが実によく計算されていると感じました。

イングリッシュブートキャンプの児玉主宰、阿部さんにインタビュー

続いてイングリッシュブートキャンプの主宰である児玉さん(右)と、広報を担当されている阿部さん(左)にお話を伺いました。

商社マンがいなくても、みんなバンバン海外に行ける世の中を作りたいと思って、イングリッシュブートキャンプを始めました

ーー イングリッシュブートキャンプを始めた理由について教えてください。

児玉さん:私は高校生のときに海外に行き、英語を何も話せない状態から海外大学を卒業したという経験を持っています。

そして総合商社に入社して海外でビジネスをする中で、多くの日本人が英語を話せないことに気づきました。TOEICの点数が高くても話せない人がとても多いのです。こうした人は外国人との商談ではどうしても弱くなってしまいます。

日本と海外の橋渡しをするところに商社マンの価値があるとは思いながらも、グローバルで活躍できる日本人をどんどん増やしたいという思いから独立し、イングリッシュブートキャンプを始めました。

ーー TOEICの点数は高いが、実際に話せない人は多いのですね。

児玉さん:完璧な英語を話さないといけないと思い、英語を話すことを躊躇してしまう人が非常に多いのです。英文法は7~8割合っていればいいのです。

英語を話すこと、英語でコミュニケーションを取ることに躊躇せずに、どんどん前に出て人間同士の関係を築くことがとても大切です。

情熱とパッションがある、生徒さんの見本になるような講師を採用しています

ーー 場に足を踏み入れたときに、エネルギーが溢れる感じが伝わってきました。

阿部さん:英語でコミュニケーションするときに、声を張らないと話を聞いてもらえません。そして目を合わせて話をしないと情熱が伝わりません。

ジェスチャーも重要です。英語が話せる、話せない以前に英語圏の人に聞いてもらえるコミュニケーション力が必要です。

講師の採用もこうした考えに基づいています。情熱とパッションがあって、生徒さんの見本になるような講師を採用しています。

いきなり本採用するのではなく、まずオブザーバーとしてイングリッシュブートキャンプに参加してもらいます。そして1日講師としてトライしてもらい、その後本採用するようにしています。

ーー 先生はみんなネイティブの方達でしょうか。

阿部さん:はい。ほとんどが英語を母国語としているネイティブですが、中には英語を第二言語として習得した講師もいて、それぞれの良さがあります。

出身国は主にアメリカ、他はイギリス、バーレーン、クロアチア、ドイツ等です。

ーー 毎回、参加人数は何人程度でしょうか。

阿部さん:最大で18人ですが、12~18人くらいの人数が一番多いです。夏と年末年始はシーズン的に、満席の回が多いですね。

なお生徒さん3人に対して講師が1人以上付くような人員にしています。これに加えて、統括する講師1人が別につきます。

ーー 日本人の生徒さんはシャイな方が多いですが、どのようにして話せるよう工夫されていますか?

阿部さん:シャイな生徒さんの場合、講師はあきらめずに話を引き出すようなコミュニケーションを心がけています。「Try, try!」といった感じで、明るく接するようにしています。

1日目の最初は全然話せなかった人でも、2日目には別人のように話せるようになっています。2日目の終わりまで全然話せませんでした、という人はこれまでの参加者には1人もいません。

いまある英語力で話せるようになる、セカンドベストイングリッシュに基づいた場です

ーー イングリッシュブートキャンプはなぜ2日間なのでしょうか。

阿部さん:生徒さんには「来週、海外出張がある」「転職先が外資系で英語に困っている」「上司が外国人になり、意思疎通ができない」といった、英語を話すことについて緊急性が高い方が多いです。

通学で2か月~3か月かかるのでは間に合わない、週末の土日の2日間だけで何とか話せる基礎を作りたいと考えられています。このため、イングリッシュブートキャンプは2日間という設定にしています。

ーー 英語力としては高校卒業程度、TOEIC350程度以上からと幅が広いですね。

阿部さん:英語力がそこまで高くない層にも、TOEIC900以上の層にも効くプログラムです。

イングリッシュブートキャンプで繰り返し説明しているのが「セカンドベストイングリッシュ」という考えです。

時間をかけてネイティブ並みの英語力を目指すのではなく、今ある英語力を駆使して、何とか英語を話せるようにする、という意味です。

たとえ英語力が高くなくても、今知っている文法や単語だけで会話を乗り切る。上級者であればより高度な単語と文法を使って話せるようになるというものです。

これまで見てきた感じでは、英語力は高いがスピーキングが得意でないという方が最も効果を出していると思います。英語力やTOEICのスコアの割に話せない、という方には特におすすめできます。

ーー いまある英語力で会話・コミュニケーションをしようということですね。

阿部さん:イングリッシュブートキャンプでは、文法や単語を覚えることはしません。生徒さんの話す英語に冠詞が足りないとか、時制が一致していない場合でも指摘しません。

話す英語に間違いがあっても、意味が通じないほどの間違いでなければOKです。高校卒業程度、TOEIC350程度の英語力でも、伝えたいことを相手に伝えることはできます。

2日目の最後には、英語でビジネスプレゼンテーションを行います

ーー ビデオ → 解説 → 短時間で集中して実践、の流れがよく計算されていると感じました。

阿部さん:テキストを使った座学などは一切やりません。あるのは説明ビデオと講師の解説だけ。ビデオでは、今からこういうことをやり、なぜこうしたことをするのかを手際よく説明するようにしています。

ーー 1日目終了時に宿題はあるのでしょうか。

阿部さん:はい、2種類の宿題を用意しています。

1つ目は教室の外に出たら、ひたすら英語を聞き続けるというものです。1日目終了時に音楽プレイヤーを貸し出すので、帰宅までの移動中、2日目にイングリッシュブートキャンプに来るまでの移動中は必ず聞いていただきます。

2つ目は、ディベートに備えてビジネスのケーススタディーを読んできていただくものです。例えば、会社の人材採用の問題であったり、欠陥商品のクレームの問題などです。これを読んできて、2日目朝からディベートに入ります。

ーー レッスンの最後に「Powerful Business Presentation」とありますが、具体的には何をするのでしょうか。

阿部さん:生徒さん2人でペアになってもらい、ビジネスプレゼンテーションをしてもらいます。講師がお客さん役で「大学院でビジネスを学んでいる海外の学生」、生徒さんが「旅行会社の営業担当者」役です。

旅行会社の営業担当者が、海外の大学院生向けに4日間の日本旅行のプレゼンテーションをします。生徒さんが相談しあったり、講師に英語で質問したりしながら、4日間の予定を考えてプレゼンテーションします。


過去の生徒さんのプレゼン資料

実践的な内容になっているので、生徒さんからは大変好評です。

ーー 最後に、生徒さんの男女比、年代と多い業種を教えてください。

阿部さん:男女比は6:4で男性の方が若干多いです。年代は30代と40代がメインで、平均をとると30代後半となりますね。業種ですが、外資系企業にお勤めの方が多いですね。メーカーや製薬会社などです。

まとめ

イングリッシュブートキャンプは「長期間通って、文法や語彙を学び英語力を伸ばす」場所ではありません。「今ある英語力を活かして話す練習を短期集中で行うことで、英語を使えるようにする」ための場所です。

今まで何校もスクールに行ってきましたが、こうしたコンセプトは初めてだったため驚きました。ですが実際にレッスンを拝見すると、具体的にどんな工夫が凝らされているかが分かりました。

  • エネルギー溢れる雰囲気づくり
  • ビデオ → 講師解説 → 実践という流れの繰り返し
  • 極めて短時間で多くのコミュニケーションを行う仕掛け
  • 対話練習やディベート、プレゼンで自ら主体的に発言する環境

講義のように、インプットのためのインプットを行うのではありません。イングリッシュブートキャンプのインプットは、あくまでアウトプットするために最低限必要な事項のみに限定。

全てが「生徒さんが主体的にアウトプットを行い、喋れるようになる」ことに向かっています。とても統一感があるプログラムです。

英語を話すのがどうしても苦手、でも短時間で克服する必要がある方。ぜひイングリッシュブートキャンプの門を叩いてみてはいかがでしょうか。

アウトプット力をぐんと伸ばすだけでなく「恥ずかしがらずに英語を話す姿勢」を身につけられると思います。