私は京都大学法学部を卒業後、医系予備校・塾・家庭教師等中高生の受験指導を8年程してきました。
また社会人の英語文法教室でも週2回指導のお手伝いをさせていただきました。英語が伸びた人も、伸びなかった人も沢山見てきたと思います。
さて、その経験で一番感じたのは、英文がうまく書けない、訳せないのは日本語と英語の違いについて明確に意識した学び方がなされていないのではないかということです。
私のこの考えは『英語を英語のまま自然に学べばいい』という英語学習の最近の風潮と逆行するようで古風に思われるかもしれません。
英文法を効率よく学ぶには、英文法の規則だけではなく日本語文法の規則を明確に意識して、その対比から学ぶのが効率的ではないでしょうか。私はその対比の柱になるものは以下2点だと考えています。
1.語の並べ方について
中高英語では語の並べ方を単純な英文を例に挙げて学びます。
SVOC以外どういう類の語がどの位置に来るのか、それは日本語だとどれに対応するのかが明確に示されないので、受験生は複雑な英文を書く時や和訳で苦労しています。
普段当たり前に話している日本語でも和訳をさせると支離滅裂な文章になる受験生が多くいます。当然文章の内容も把握できていません。
例えば、日本語の場合
私は昨日父と公園でキャッチボールをしました。
のように、 「誰が」→「いつ」→「どのように」→「どこで」→「なにを」→「どうする」の順で語を並べます。
それを英語では、
I played catch in the park with my father yesterday.
のように、「誰が」→「どうする」→「何を」→「どこで」→「どのように」→「いつ」の順で並べます。
つまり英語と日本語では「誰が」以外は逆に並べますし、日本語・英語特有のイメージの捉え方がある場合を除いて基本は和訳・英訳ともにそれに対応させてすべきなのですが、その理解ができていないため訳をどう手を付ければいいのか分からない生徒が多くいます。
2.日本語と英語の語それぞれがもつ守備範囲を意識する
中学では単語を覚えるときにgive=「与える」、have=「持っている」と1語1語数少ない訳語に対応させて憶えます。
抽象的なイメージを頭に描くのが苦手な勉強の苦手な生徒も含めて同じ教科書で学ぶため、便宜上仕方がないところはありますが、英語を使いこなす上では障害になります。
英単語、特にtakeやhave、makeといった基本的な動詞、onやatといった基本的な前置詞については訳を複数の日本語で記憶することよりイメージで捉えること、その上で対応する日本語との守備範囲の違いをイメージで認識することが大事です。
例えば、
- あいつがスキーで足を折った。→He broke his leg.
- ガラス窓を割ったのは誰ですか。→Who broke the window?
電気を切る機械→breaker なのでbreakを単純に「折る」「壊す」「切る」といった訳語に対応させて覚えると、
- 大きなスイカを割った。→I broke a big watermelon.
- 紙を折った→broke a piece of paper.
と訳すという間違いを犯します。正しくはcutやfoldです。こういった覚え方では辞書で大きく幅をとる単語については活用が不可能です。
こういった場合にできるだけ正確な語を選ぶには、日本語でも英語でもその語の持つ守備範囲をイメージで捉えなければいけません。breakであればこのような感じです。
何かしらの外力を、急に加えることで、物体が二つ以上に分かれること
引用:鈴木孝夫『ことばと文化』(岩波新書、1973)
ここで「何らかの力」とは、目に見える力でも抽象的な力でも可です。それにより分かれる物体も目に見えるもの以外に精神的なものでも可です。
このような懐の大きさのせいで訳語が多くなっていますが、基本的イメージはこのようになります。日本語にもそれぞれこのようなイメージと表現できる守備範囲があります。
4月から京都で『ベーコン英語道場』という英語塾を開きます。
当道場ではこのようにシンプルな日本語と英語の違い、その文章の並べ方やイメージの相違などを理解しながら「とりあえず手や足が出るための英文法」をお伝えしようと思っています。