外資の海外留学生採用事情

こちらは「外資系証券の「国内新卒採用」内定~入社までの英語研修と入社時点で必要な英語力」の続きです。

3回目の今回は、海外の大学・大学院に留学中の日本人留学生を対象とした「海外留学生採用」について解説します。

外資証券では海外の大学・大学院に留学している日本人留学生を対象としたリクルーティングにおいて、大きく分けて二つの切り口で採用活動を行います。

一つ目は、米国や英国などの英語圏にある一般的な大学や大学院のコースを卒業する予定、または交換留学中の学生を対象とした採用です。

二つ目は海外のビジネススクールでMBAを取得する予定の方を対象としたMBA採用です。

海外の学校に留学中の日本人留学生に求められる英語力

上級レベル~ネイティブレベル (TOEFL iBT 91以上) です。

留学生に問われる英語のレベルはおもに以下のように5つに分けられ、外資証券ではそのうち上級レベル以上、というのが採用の最低ラインです。

これはインターン生も含めた基準であり、現実には多くのポジションで本採用ではビジネスレベル以上を要求しています。また、まれに日本国内で働くポジションであっても英語ネイティブレベルを求める場合もあります。

  • ネイティブレベル
  • ビジネスレベル
  • 上級レベル(米国・英国大学入学レベル TOEFL iBT 91以上)
  • 中級レベル
  • 日常会話レベル

どのようなポジションで採用が行われ、それぞれのポジションにおいて求められる英語力がどの程度か、ということについては企業によって異なりますので、応募者は実際の企業の採用ホームページや後述する海外留学生採用イベントなどに登録する際に確認することになります。

なぜ日本人留学生?日本語も必要?

日本に法人を置いていても外資証券の場合には世界各地のマーケットの中で業務を行います。

また日本とオセアニアを含めたアジア・パシフィックを一つの地域として事業を展開していますので、地域におけるミーティング(オンラインミーティングも含め)は通常英語で行われます。

その点で米国や英国の大学・大学院を卒業予定の学生であれば、当然ながら英語で業務遂行できるだけの英語力があり、前回(国内新卒採用の回)述べたような英語の研修を受ける必要がないため会社としては採用する利点が大きいといえます。

また、日本の大学と異なり英語圏の大学は単位取得が厳しく在学中から競争社会でもあることから、外資証券のような激しい競争を求められる世界でも活躍できる素地があると判断しています。

しかし外資といっても日本に法人を置いている以上は日本の社会や文化のバックグラウンドがあることは採用候補者として大きな強みになります。

そのため日本人でありながら英語力がありグローバル感覚をもつ留学生を積極的に採用したいということになります。

ただし日本語運用能力という点において留学生は日本国内の高等教育を受けた人とは差があることも事実ですから、採用ポジションも国内新卒採用とは異なります。

たとえばコーポレート・ファイナンス(投資銀行)部門のフロント業務などは新卒の留学生にとってはかなり狭き門となり、留学生といっても後述するMBA採用という特殊なルートからの採用を行うケースもあります。

また、それ以外のポジションでも入社後に日本語で苦労するという現実はよくあることです。

実際に米国の大学を卒業してトレーダーとして入社したある社員は、英語での業務遂行は問題ないものの日本語でのビジネスコミュニケーションの部分が弱かったため、入社して一年間は睡眠時間を削って必至で日本語を勉強した、と話していました。

どうやって留学中に就職活動するの?

現在、海外へ留学している日本人学生を採用するもっとも大きな入口として、「ボストンキャリアフォーラム」があります。これは年に一回米国で行われる、企業にとっても最大の留学生採用イベントです。

外資の証券を含めた金融業界にとっても、新卒の留学生についてはここを入口としてインターン生を採用し、社員として本採用に至る、というルートがもっとも多い、というのが現状です。

留学生がこのイベントに参加するにはまず「キャリアフォーラムネット」に登録することが必要になり、その際に英語のレベルについても登録することが求められます。

一方、企業側は採用したいポジションの募集要項をこの「キャリアフォーラムネット」の中で公開し、その際に「求める英語レベル」についても記載することになります。

外資証券の場合は英語ビジネスレベル以上を要求するポジションが多いのも現実ですが、インターン生の場合には年齢(学年)や学力によってポテンシャルを考慮しますので「ビジネスレベル」の自信がなかったとしても面接でのアピールも重要になってきます。

面接は日本語?英語?

ポジションによりますが、面接は日本語と英語の両方で行うと理解しておいたほうがよいでしょう。

これは前述したように英語が流暢であるといっても人によって差がありビジネスで通用するかを測る必要があることや、日本で働くことの動機・適正・日本語の運用能力がどの程度あるかについても確認する、という理由からです。

ただしポジションによっては日本語がほとんど問われないケースもあり、その場合には面接官が英語しか話さないこともあるため、面接も英語のみ、ということもあります。

MBA採用ってどんなもの?

米国や英国などのビジネススクールでMBAを取得する予定の留学生を採用するのがMBA採用です。

大学(学部)卒業後にダイレクトにMBAを取得する方も稀にいてその場合は大学院生と同等の新卒採用扱いとなり、前述したボストンキャリアフォーラムなどでも採用活動が行われポジションも幅があります。

しかしMBA取得予定者の多くは社会人として日本で働いてから海外のビジネススクールへ留学する、というルートをたどります。

その中で日本語も英語も堪能で金融業界における経験も実績もあるという候補者をコーポレート・ファイナンスなどの分野で採用する場合があり、その場合の英語力はビジネスレベル以上が前提となります。

海外留学生採用のまとめ

前回説明した国内新卒採用と大きく違う点はやはり留学生の英語力と海外生活経験によるグローバル感覚ですが、「英語で業務遂行できる」のがこの採用活動のそもそもの前提であるため、それがアピールポイントになることはありません。
 
国内新卒採用であっても留学生採用であっても外資証券に入社したら競争社会を生き抜いていかなければならないのはどちらも同じです。

また、日本のオフィスで働く以上はたくさんの日本人の同僚がいますし、顧客も日本人ですから日本の企業文化や社会への理解が必要であることはいうまでもありません。

そのような環境であることを理解し、なぜ日本で働きたいのか、自分がその会社に入ったらどのように貢献できるのかを日本語でも英語でも面接で論理的に説明できるように準備しておく、というのがベストな方法でしょう。

以上、3回にわたって外資証券が応募者に求める英語力とその実態について解説してきました。これから大学や大学院に進もうという学生や、就職・転職活動を行うという方に少しでも参考になれば幸いです。