今回はJack先生が子供から上級レベルの大人まで全てのレッスンを責任をもって行うというユニークなコンセプトを持つ東京都三鷹市のJack's Communication Roomで体験レッスンを受けてきました。

記事の目次

Jack's Communication Roomってどんなスクール?

「全て少人数制のクラスで、子供から大人までJack先生が責任を持って指導する」ということがこの教室の特徴です。

また、一般の英会話教室のようなランク付けは無く、レッスンを無理に英語だけで進めようともしません。受け身ではなく「自分から学ぼうとする力」を大切にしているというのが大きなポイントです。

Jack先生は英語教育に関するご著書もいくつか出されているのですが、英会話教室に関しては教室ホームページ以外ではほとんど情報を得ることができませんでした。

従って、今回は教室についてより詳しく、客観的な情報を記事にしたいという気持ちで体験レッスンに行ってみました。

体験レッスン

雰囲気はアメリカの小学校か中学校?

三鷹駅の南口を出て中央通りを南にまっすぐ進み、7、8分ほど歩くと、消防署の斜め前、道路の右手にあるビルの2階にあります。

駅からは少し歩きますが、中央通り沿いなのでまず迷う心配もないですし、ビルやお店が立ち並ぶ人通りの多い道なので夜でも安心して通えますね。

教室ホームページのアクセスページに、「歯医者さんの右側にある階段からお越しください」とあるのでそちらから入ります。

階段を上ると、「見学OK Jack先生とお話しできます」と書かれているものが。

扉の向こうにJack先生の姿が見えたので、さっそく中に入ってみます。

ちょうど私がお邪魔した頃に子供クラスが終わり、次の大人クラスのレッスンが始まる前というところでした。小学校5年生の男の子と先生がお話ししていました。

三鷹はもともとファミリー層が多く住んでいるエリアなので英語教室も子供向けの教室がとても多く、こちらも子供向けクラスが充実している様子。

教室の雰囲気も、アメリカの小学校に来たような感じで、子供さんがたくさん来ているのだろうな、という印象を受けました。

Jack先生はアメリカ人らしく気さくで話しやすい雰囲気の方。ときおりユーモアを交えながらも、指摘するべき所はしっかりと指摘をする、指導経験豊富な先生です。

ハイレベル過ぎ!?"GENIUS CLASS" レッスン体験

私がこれから参加させて頂くのは大人クラスで、先生いわく、"GENIUS CLASS(天才クラス)"とのこと。

「GENIUS CLASS??」いったいどんな方たちがレッスンに参加されるんでしょう……ドキドキしながら皆さんが入ってこられるのを待ちます。

私がお邪魔したのは土曜の午後。お友達の家をたずねてくるような雰囲気で、生徒さんが「Hi!」と言いながら入ってきます。

皆さん普段は大変お忙しくお仕事をされている方々のようで、会社の広報担当の方、官公庁にお勤めの方、大学の先生など、なるほど"GENIUS CLASS"とはそういうことか、と納得。

長い方ではもう6年もこの教室に通っていらっしゃるとか。他の方も長く通われているようで、先生と生徒さんとの間にすでに信頼関係が築き上げられていることが、お話されている様子からも感じ取れました。

レッスンは1時間15分。この日は私が初参加だったため、まずは各々の自己紹介から始まりましたが、軽いチャットの中でも時折Jack先生が文法や発音の指摘や解説をしてくれます。

先生が指摘した箇所の例は以下のような感じです。

"grow"と"grow up"の違い

"grow up" is 「自動詞」。We never use "grow up" for plants. They just "grow".

"Clear up"と"Clarify"の使い方

Clear up = 「勘違いした。間違えた。直しましょう。」

Clarify = 「勘違いしないように、もっとしっかりと説明する。」

Beverage(飲料)の発音

英語の発音では頭は「ビ」ではなく、「アッカンベー」の「ベー」だよ、と、ジェスチャー混じりにご教示。

日本の飲料会社がビバレッジとカタカナ英語を使っているので、日本人はそれで覚えてしまっているんです、と、他の生徒さんが説明。

先生の説明は日本語もたまに交えながら、ウィットに富んだジョークとともに行われます。

「レベル」より「個性」。自主性を大事にするレッスン風景

最初の軽いチャット(とはいえこの日のレベルはかなり高かったのですが)の後、生徒さんそれぞれが用意してきたプレゼンテーションを発表する時間が始まりました。

生徒さんは自分のプレゼンのコピーを用意して、配布資料として皆さんに配ります。


(※写真は生徒さんがご自身で作成された実際のプレゼン資料のため、あえて不鮮明に処理しています。)

最初の生徒さんのトピックは、競馬の、「サラブレッド」の話。「サラブレッド」の定義、歴史やルールなど。すべてのサラブレッドの祖先は、三大始祖と呼ばれる3頭に行きつくのだとか。

「サラブレッドにはクローンや人工授精は認められていない」そうで、Jack先生もそれは知らなかった、と。私ももちろんまったく未知の世界の話でしたし、語彙レベルの高さにもビックリ。


(一人目の生徒さんのプレゼン。正しくは綴りが「Thoroughbred」とのご指摘あり)

そしてプレゼンの後に、先生からいくつか指摘が。

  • supremeの発音
  • "3-year + noun(名詞)" の用法

この場合 "3-year" はadjective(形容詞)なので、-(ハイフン)の後に続く名詞は必ず単数形になる。yearsとしないこと。これは中学校の英語教師でもよく間違う、とのご指摘。

そして次の生徒さんのプレゼンに移ります。プレゼンのテーマは「水銀に関する水俣条約の外交会議および準備会議」。

専門用語(technical term)だらけなので、語彙の説明をしながらプレゼンが進みます。

「金を採掘して精錬する際に、安価な水銀を混ぜ合わせることで金が簡単に抽出できるため、途上国ではよく行われている。この過程での水銀放出が深刻な健康問題を引き起こす可能性があることから、大きな環境問題の一つとなっている。」

この問題に関する国際会議が、水俣病の経験のある日本の水俣市で開催された、という内容でプレゼンテーションは進んでいきました(複数回にわたる外交会議および準備会議の後、水俣条約が採択されました。詳細は環境省のウェブページをご覧ください)。

環境学はサイエンスと社会学を掛け合わせたような分野で内容が高度なので詳細はここでは紹介しませんが、Jack先生からの指摘の一部をご紹介します。

toxin(毒素)とpoison(毒)の違いについて

(先生)
Do you understand "toxicity"?

(他の生徒さん)
Yeah, it's 「毒性」?

(先生)
"Yes. Poison" and "Toxin", they are distinctly(明確に) different.

"Poisons" are intentional. (故意のもの)

"Toxins" are naturally occurring.(自然発生するもの)

Our body produces many toxins, through digestion(消化), etc...

そして一通り今のプレゼンについての質問ややり取りが行われた後、次の生徒さんのプレゼンに移ります……

という流れで、すべての生徒さんのプレゼンが行われます。

英語の指摘だけではなく、そのプレゼンの内容についての質問等も行われるので、この話を全員が英語で理解出来るというそのレベルの高さにもとても驚きました。

レッスンの締めくくりはミニテスト

このレッスンではJack先生はホワイトボードを使わず、A4サイズの大きなタブレットに、指摘する英語をさらさらと書きながら説明されていました。

そして全員のプレゼンが終わった後、レッスン中にJack先生が指摘した箇所についてのミニテストが口頭で行われます。

例えば、

  • What is "飲み物"?(Beverage の発音確認)
  • 「clear up と clarify の違いを説明しなさい」

など、一人ずつあてながら質問していきます。

興味深かったのが、先生が、

How do you say,「10歳の女の子がパンダを蹴った」in English?

という質問の仕方をしたこと。この質問の答えは、"A 10-year old girl kicked a panda."ですが、少し変な文です。

Jack先生はこのような少し変な例文を出すのですが、これには先生なりのこだわりがあるようで、以下のように説明していただきました。

Example sentences should have an impact, because everybody can remember them.
「例文はインパクトのあるものでなければならない。そうすればみんなが覚えるから。」

On all of my books, I fought and fought with the publisher because they say, "Jack, your example sentences are all strange!"
「私が書く本ではいつも出版社と喧嘩した。彼らは『ジャック、あなたの例文はぜんぶ変だよ!』と言ってくる。」

But, for example, "5-year old girls like flowers." who cares??
「でも例えば、『5歳の女の子は花が好きです』なんて例文を、誰が気に留める??」

なるほど、"A 10-year old girl kicked a panda. "のほうがインパクトがあるので、確かに忘れないですね。笑

この日のレッスンは生徒さんのレベルが非常に高く、レッスンを通じてすべてが勉強になったのですが、このハイレベルな内容にも随所において適切に説明をされる先生の指導のすばらしさにも純粋に感動しました。

経験も知識も豊富なJack先生ならでは

Jack先生はご家族と一緒に三鷹にお住まいで、以前は英語学校でも教えていらっしゃいましたが、本の執筆と英会話の教室の両方をできる場所が欲しいということで、ここ三鷹に教室をオープンされたとのこと。

最初にお会いした時に、

Language is all about Communication.
「言語というものは、すべてコミュニケーションのためのものです。」

とはっきりとおっしゃったのが、印象的でした。私もまさにそのことを常々感じていたので、

That's why you named "Communication Room" here, not a "School" or a "language center", etc.
「それで『スクール』や『ランゲージセンター』などではなく、『コミュニケーションルーム』という名前にしたのですね。」

と言ったところ、先生は、"Exactly." (その通り)と言ってくれました。

このスクールは「オープン」で「安心」かつ「リラックスした雰囲気」を大事にしているとのこと。教室の様子やレッスンの内容、そして料金についても、それが特徴なのだそうです。

確かに、子供から大人まで誰でも 「Hi!」と入っていけるような雰囲気が感じられますし、教え方にもその特徴が表れています。

この教室では、テキストを使うことはめったにないのだそうです。というのも、以前は英語学校でテキスト通りにレッスンを行っていたけれど、そのようなレッスンには限界があると強く感じたというのです。

人によってはテキストに書かれていることが難しすぎて自信を失うケースもあれば、逆にテキスト通りに英語をうまく身につけたと思い込んで外国人と話してみると、実際の場面では周りの人の英語が速すぎたりテキスト通りに話が進まなかったりして自信を失ってしまうケースもあると。

そのため、このJack's Communication Roomでは、子供であっても大人であってもどんなレベルの人に対しても、その人に合わせてレッスンする形式をとっているのだそうです。

その際、単に英語のレベルだけではなく、その人の個性を見てレッスン内容を考えるのだとか。Jack先生はご自身で様々な教材を作り、改良を加えて、いろいろな人に対応する工夫をされているということでした。

どんな生徒に対しても、その生徒に合わせて教えられるのが、「良い先生」だとおっしゃっていました。ただしこれはとても大変なことで、それができるのは経験豊富で知識も豊富な先生に限られます。

さらに知識がどんなに豊富であっても、難しいことを誰にでもわかるように噛み砕いて説明できる人はそう多くはいません。

それができるからこそ、Jack先生はご自身で責任を持って子供から大人まで教えておられるのだなと感じました。

体験レッスンを終えて


(Jack先生の「小道具」。本棚にはテキスト類もそろっていますが、レッスン中にJack先生が使用したのは手前にあるこのA4サイズのタブレットだけでした。)

多くの英語学校ではテキストに沿ってある程度決まったレッスンを行う形がほとんどです。

英語はコミュニケーションのためのもので、「型にはまった」レッスンでは生きたコミュニケーションは上達しない、というJack先生の長年の経験からくる指導の仕方は、ユニークで素晴らしいものだと思います。

たいていは教えられるレベルや内容が先生によって決まっていて、あらゆるレベルの人に対応できる先生を探すのは、なかなか難しいというのが現状です。

Jack先生には豊富な指導経験と人間としてのふところの深さのようなものがあるからこそ、長く通い続けている生徒さんが多いのだな、と感じました。

今日のレッスンを通じて「受け身ではなく積極的に自分から学ぼうという姿勢を引き出して伸ばすこと」が、この教室の特徴だということがよくわかりました。

まずは生徒さん一人ひとりが、皆さんの前でプレゼンをするためにはそれなりに時間をかけて準備をしなければなりません。それだけでもかなりの労力を使うはずです。

今回のレッスンはハイレベルな生徒さんばかりのクラスで内容もプレゼンテーションを軸にした高度なものでしたが、レッスンのやり方はJack先生が個々の生徒さんの力を伸ばせるように判断しているということでした。

Instead of talking to me, ask my students about me!
「私に質問するより、生徒たちに私のことを聞いてくださいよ!」

と笑いながらおっしゃっていたのが印象的でした。経験豊富な先生でなければこんなセリフは言えませんから。

そして興味深かったのが、「消しゴムは禁止」というルール。「えっ?英語の教室なのに消しゴム禁止??」一瞬驚きましたが……

これは、「自分の間違えた所をしっかりと覚えておくため」、そして「(現実の)言葉というものはあやふやでルーズな面もあり、かつ、スピードもある」からとのこと。

なるほど、実際のコミュニケーションで消しゴムは使えませんし、生身のコミュニケーションは「生きている言葉」なので、会話のキャッチボールには流れやスピードがとても大事ですよね。

"Language is all about Communication."

英語は本来コミュニケーションのためのものであるということ、そして英語を上達させるためにはまず自分から学ぶ姿勢を持って、それを伸ばすための良い先生なり方法なりに出会うこと、この両方の大切さを感じさせてくれるすばらしい教室でした。