photo by Robert Young

こんにちは!フリーランスの現役英日翻訳者、ランサムはなです。みなさんは英語を勉強していて、「学校で英文法を習ったけれど、一体何の役に立ったのか」と思うことはありませんか?今回は、第二外国語として英語を学習している方々の間でよく議論される、「英文法の勉強は必要か?」というテーマについて、お話ししてみたいと思います。

日本では中学から高校まで、6年間英語を必修科目として勉強しますね。将来的には小学校から英語が必修科目になるそうですね。そうなると、義務教育を終えるまで合計8年、ずいぶん長い時間、英語を勉強することになります。しかし、それだけ長い時間とお金と労力を費やして英語を勉強したのに、話せるようにならないと言って失望し、英語の勉強を断念する人が後を絶ちません。

私自身、高校時代に英検2級に合格し、東京の大学では英文科に在籍しましたが、英語が話せませんでした。英語が話せるようになったのは、英文科専攻なのに英語が話せない自分が嫌になり、成人式の着物の代わりにアメリカに短期間ホームステイさせてもらったことがきっかけでした。つまり私も成人するまで英語が話せなかったのです。では、学校で教わる「英文法」は、英語を話すうえでまったく役に立たないものなのでしょうか?現在、英語と日本語を日常的に使う仕事をする立場になって、思うことをお話ししたいと思います。

日本の英語教育は自動車教習所のようなもの。

私は日本の英語教育は、自動車教習所に似ていると思っています。日本で自動車免許を取得した経験がある方はご存知かと思いますが、自動車教習所は知識や規則を学ぶ「学科」と、場内・路上コースを運転する「技能」に分かれていますよね。この両方に合格しないと免許を取得できません。

日本の英語教育のカリキュラムの多くは、この「学科」部分に相当する、と私は思っています。現在、自動車を日常的に運転されている方は、教習所に通っていた頃に比べると、細かい規則を思い出す機会はあまりないと思います。でも、普段と違う状況に遭遇したときに、教習所で勉強した内容が急によみがえってくることがあるのではないでしょうか。車間距離の取り方や緊急時の措置など、教科書を引っ張り出してきて、ルールを確認することもあるかもしれません。

英語学習に関しても同じことが当てはまります。ある程度場数を踏むと、あまり文章の構造を考えなくても英語が口から出てくるようになります。ただし、複雑な状況や、なじみのないトピックで話をしなければならないことも当然でてきます。そのようなときに、きちんとした文章が作れているのかを確認するために、英文法の知識はとても役に立ちます。

日本の英語学習者が話せないのは、教習所でいう「学科」の内容が悪いからではなく、「技能」の練習量が絶対的に少ないからだと私は思っています。「学科」と「技能」はまったく性質が異なるものです。なので、「英文法」の時間を減らして「英会話」の時間を増やすべきだとか、英文法ばかりやっているから話せるようにならないという言い分は、ちょっとナンセンスに思えます。

TOEICや英検を受けるのは、教習所の場内コースで試験官を前に縦列駐車や踏切確認をして見せるのに似ています。現実に近い環境をシミュレーションすることで、一定レベルの「技能」はテストできるからです。ただ、教習所の場内コースで完璧な点数が取れても、外の世界で事故を起こす人もいるように、現実には理屈どおりに行かないことが多く発生します。そのような想定外の事態への対応力は、実践を通じて身に着けるのが一番効果的です。

技能を磨く機会を見つけないと「ペーパードライバー」になってしまう

英語学習の「学科」を終えた時点で「技能」に進まないのは、とてももったいないことです。もともと英語という「車両」を乗りこなすために勉強を始めたのに、「学科」だけでやめてしまうのは、志半ばで退学してしまうようなものです。一定期間練習を積んで、ある程度使いこなせるようになっても、使わないと忘れてしまうので「ペーパードライバー」になってしまいます。日本には「ペーパードライバー」化している学習者が非常に多いと思います。

「学科」が終わった段階と認識して、「技能」を磨く機会を作る

多くの方は、義務教育が終わった段階で、英語の勉強がすべて終わったと思うからがっかりするのではないでしょうか。でも、義務教育で教わったのは「学科」であって、これからいよいよ応用段階として「技能」を練習するのだと思えば、今までやってきたことを無駄だとは思わないのではないかと思います。英文法を勉強したことにより、基礎知識は頭に入っているので、今から英語を学習し直したとしても、知識ゼロで始める人よりずっと早く追いつくことができるはずです。

英会話学校は、安心して間違うことができる「場内コース」の場と言えます。うまく言えないことがあっても先生が間違いを直してくれます。ですがそこで満足して成長を止めてしまうのも考えもの。ある程度のレベルになったら、そこで満足せずに、さらなる高みを目指すことをお勧めします。自動車教習所でいつかは卒業して外に出る日が来るのと同様、英語もいつかは「場内コース」を卒業し、本場に出ることを目標に勉強を続ける方が、上達が速くなるように思います。

あなたは実は自分が思っている以上に、英語が話せるレベルに近いところにいるのかもしれません。

ランサムはな

年間100万ワードの実務翻訳をこなす翻訳歴21年目の英日翻訳者。津田塾大学英文科、テキサス大学大学院教育学部(カリキュラム・アンド・インストラクション)を卒業。NYの日系新聞社の翻訳を始め、デル、グーグル、マイクロソフト等、一流企業が日本市場を開拓する際の製品やホームページの日本語化、Eラーニングの教材翻訳に多数参画。ネットで世界中から仕事を受注しながらアラスカなど各地を転々とした後、北海道富良野市で10年間暮す。現在はテキサスと札幌を行き来する生活を送る。英検一級。英検二次面接官。日本語教育能力検定試験合格。米国翻訳者協会(ATA)認定翻訳者。ブログは「日本とアメリカで働く翻訳者のブログ」。 ツイッター: @HanaKRansom
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