先日、当サイトで「“底辺”という言葉を簡単に使うべきではないけれど。「アルファベットが分からない」中高生は当たり前にいて、彼らの英語力は、私たちの想像を超えている」という記事を公開したところ、多くの反応を頂きました。中3になってもアルファベットが覚えられず、英語のテストで7点しか取れない子たちの実態については、「文字が覚えられないのは学習障害では?」とのコメントも頂きました。

一部にはそうした事例もあることは確かですが、学習障害でなくとも、英語が苦手な子は沢山います。今回は、そうした低学力層が生まれる要因のひとつが「教科書」にあるのではないか、というお話です。

英語に親しむだけでは、テストの点数は上がらない

学力が普通以下の子たちは、教科書通りに教えても、なかなか点数が上がりません。その一因は「教科書の構造」にあります。一般的な中学生が使う教科書は、「英語に親しむ」ためには優れた教材ですが、「英語の仕組みを理解する」ことには、あまり向いていないからです。たとえば、開隆堂の「SUNSHINE(サンシャイン)」では、中1の4月にまず「小学校英語から中学校英語へのスムーズな橋渡しを目指し、音声中心に生徒の学んできた知識を引き出しながら進める」とあります。

そこでは、“Hello, everyone.” とか “My name is ~. ” 、さらに “I like ~.” とか “I can ~.” などの表現が出てきます*1。英語学習のいちばん最初に、もうbe動詞を使った文(“My name is ~. ”)と、一般動詞を使った文(“I can ~.” )が一緒くたにされ、「とりあえず発音してみよう」というのです。導入で英会話に親しむのはいいですが、これでは「定型的なあいさつや自己紹介ができるようになるだけ」です。英語がものすごく苦手な子たちの中には、ここで止まっている子が沢山います。 “My name is ~. ” や “I like ~.”くらいしか、まともな英文が書けないまま中3になる子も珍しくありません。

「英会話」を教えたいのか「英文法」を教えたいのか、ハッキリしてくれ!

次の単元からは一般的な内容に入るのですが、いずれも「英会話の表現重視」で「文法軽視」です。基本的には、アメリカから転校生やALTの先生がやって来て、「自己紹介をする→生徒が質問する→転校生やALTが答える」というストーリーが繰り返されます。転校生のマイクがやってきた時には、「Hi, I am Mike.」「Are you a Giants fan?  Yes, I am.」などの例文CDを生徒に聞かせ、ALTのウッド先生がやってきた時には、「I like music.」「Do you eat sushi? Yes, I do. 」といったCDを聞かせ、ストーリーを想像してみよう! 発音してみよう! という進め方です。

肝心の文法は、最後に少しだけ、「be動詞は、『~は…です』と言いたい時の表現です」「一般動詞は、頭にDoをつけて疑問文にします」などと教えることになっています。が、これでは不十分です。たとえばbe動詞の本質は「S(主語)=C(補語)」。これをしっかり教えず、教科書通りに『~は…です』というだけでは、「私はサッカーが好きです」を「I am like soccer.」と答えてしまう子が出てきます。そして、それがなぜ間違っているのか、分からない子はずっと分からないまま、英語が嫌いになっていきます。

「学校では文法を習った記憶がない」!?

教科書に沿えば、アメリカやカナダから転校生が来て、一緒に日本の文化を楽しんで……といった「ストーリー中心」の教え方をするしかありません。文法問題を練習させる時間は、それほど確保できないのでしょう。私がいた塾では、「学校では文法を習った記憶がない」という子が大勢いました。先生は教えているつもりでも、全然、身についていないのです。

もちろん、マイクやALTのウッド先生たちが会話する、というストーリーを通して、英語に親しむことは大切だと思います。中1向けには、そうした話から入るのが良い部分もあります。ただ、それだけでは、自力できちんとした英文を書ける、読めるようにはなりません。勤めていた塾では、「中3になっても “How Ken come to school?  ” と書く子がいる」とか、「学校では文法をあんまり教えていないのかな?」ぼやく先生もいました。

この記事を書くにあたって参照したのは、サンシャインとニューホライズンの年間指導計画例ですが、他の教科書だと事情は違うのかもしれません。が、ごく一般的な学力の子たちは、CDのストーリーを読んで、発音するだけの授業をボーっと聞き流し、受験勉強になると、「文法が分からない!」。そりゃあそうだと思います。テストの点数が全てではありませんが、「点数が取れないから英語は嫌い」という子を見るたびに、「文法をしっかり学べば点数は取れるし、モチベーションも上がるはずなのに...。」と、残念な気持ちになることが多々ありました。政府は2020年へ向けて、英会話ができる若者を増やしたいようですが、そのためには、まず基礎的な文法から、ではないでしょうか。

 

*1 参考にしたのはこちら→「サンシャイン」「ニューホライズン」の「年間指導計画(例)」

北条 かや

1986年、石川県金沢市生まれ。「BLOGOS」はじめ複数のメディアに、社会系・経済系の記事を寄稿する。同志社大学社会学部、京都大学大学院文学研究科修士課程修了。民間企業に勤務後、14年2月、星海社新書より『キャバ嬢の社会学』を刊行。Twitter: @kaya8823
他にもこんな記事を書いています
comments powered by Disqus
ダウンロードするには、口コミの投稿が必要です