1. IELTSとは?(試験概要)
IELTS(アイエルツ)は「International English Language Testing System」の略称で、英語圏への留学、海外移住、就労などに広く利用されている国際的な英語能力試験です。試験はイギリスのケンブリッジ大学英語検定機構、英国文化交流機関のブリティッシュ・カウンシル、オーストラリアの教育機関IDP Educationの3つの組織が共同で運営しています。IELTSのスコアは世界140か国以上にある10,000以上の教育機関、企業、政府機関で英語力証明として公式に認定されており、年間受験者数は300万人を超える世界的な規模を持つ英語試験となっています。また、30年以上の歴史を持ち、その信頼性の高さから、英語圏への大学進学やビザ取得において特に評価されています。
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試験の目的と対象者
IELTSは主に英語圏の大学への進学希望者や、海外への移住、就労目的のビザ取得を目指す人を対象としています。イギリス、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドといった国々では大学入学時にIELTSのスコア提出が一般的に要求されます。近年ではアメリカでもIELTSを認定する大学が急増しており、アイビーリーグを含む約3,000の大学・教育機関で利用可能です。また、オーストラリアやカナダへの永住権申請や専門職(医療関係など)の資格取得にもIELTSスコアが必要とされることが多くなっています。さらに、日本国内でも一部の大学入試やグローバル企業への就職の際にIELTSスコアが評価対象として用いられるケースがあります。受験者層は幅広く、高校生から社会人まで、留学や進学のためだけでなく、キャリアアップや自己啓発を目的に受験する人も増えています。
他の英語試験との違い
IELTSは、Listening(聞く)、Reading(読む)、Writing(書く)、Speaking(話す)の4技能を総合的に評価する試験で、同じ4技能を測るTOEFLや、日本で広く知られるTOEICや英検とは目的や出題形式が異なります。各試験の違いを以下の表にまとめました。
※TOEIC公開テストに公式な有効期限は明記されていませんが、企業や学校では通常、取得後2年以内のスコア提出を求めることが一般的です。
上記の通り、TOEICがリスニングとリーディングの2技能のみでビジネス英語に特化している一方で、IELTSやTOEFLは読む・書く・話す・聞くという全ての技能を総合的に評価します。特にIELTSの特徴はスピーキング試験が対面形式で実施される点で、PCに録音して回答するTOEFLと比較してより実践的なコミュニケーション能力が試されます。また、TOEFLがアメリカ英語中心であるのに対し、IELTSではイギリス英語をはじめ、オーストラリア英語など幅広い英語圏の発音や綴りが使用される傾向にあります。日本国内で行われる英検が級別の合否制であることに対し、IELTSは合否制ではなく、受験者の能力レベルをバンドスコア(スコア方式)で表す点でも違いがあります。
IELTSの種類(AcademicとGeneral Training)
IELTSには、受験する目的に応じて**「アカデミック(Academic)モジュール」と「ジェネラル・トレーニング(General Training)モジュール」**の2つの種類があります。アカデミックモジュールは、主に海外の大学や大学院への入学、あるいは専門職資格を取得したい方のためのもので、大学レベルの学術的な内容が中心に出題されます。一方、ジェネラル・トレーニングモジュールは、海外への移住申請や就労、高校や職業訓練校への入学を希望する方が対象で、日常生活や仕事の場面で使われる実用的な英語が主に出題されます。
どちらのモジュールもListening(聞き取り)とSpeaking(会話)の内容は同じですが、Reading(読解)とWriting(筆記)についてはモジュールごとに出題内容が異なります(詳細については後述します)。受験の申し込み時に自分でどちらかのモジュールを選択しますが、自分の受験目的に最も適したものを選ぶことが重要です。例えば、大学留学の場合は通常アカデミックモジュールが必要で、カナダやオーストラリアへの移住の場合はジェネラル・トレーニングモジュールが求められます。迷った場合は、志望する大学や申請先の機関にあらかじめ問い合わせて確認するのが良いでしょう。
2. IELTSの試験内容と構成
IELTSは、Listening、Reading、Writing、Speakingの4技能を測定する試験で、すべてのセクションを合計すると約2時間45分で受験します。基本的にListening→Reading→Writingの順番で同じ日に行われますが、Speaking試験だけは別途指定された日時に行われます(多くの場合、筆記試験と同じ日か、その前後7日以内です)。ここから各セクションの内容と評価のポイントを詳しく解説します。
Listening(リスニング)
リスニング試験は約30分間で、4つのパートから構成される合計40問の問題に答えます。音声の内容は、日常的な会話や案内(ホテルの予約、道案内など)から、大学での講義や専門的なトピックに至るまで様々です。また、イギリス、オーストラリア、北米など、複数の英語圏のアクセントが含まれているため、幅広い発音に慣れておくことが必要です。
問題形式は、記述式、選択問題、地図や図表の穴埋め問題など多様です。音声は1回しか流れないため、聞き取りながらメモを取ることが重要になります。紙で受験する場合は最後に10分間の解答を見直す時間が与えられますが、コンピューターでの受験では入力をその場で行うため、見直し時間は約2分間と短くなります。
スコアは正答数によってバンドスコアとして算出され、40問中23~26問程度の正解で約6.0、30問前後の正解で約7.0が目安となります。また、「1語または2語以内で答えよ」などの設問指示に従うことも大切です。
Reading(リーディング)
リーディング試験は60分で、40問の読解問題に答えます。試験内容はモジュールごとに異なります。アカデミックモジュールでは、学術的な論文や専門書、雑誌記事からの抜粋が多く、図表やグラフが含まれる場合もあります。一方ジェネラル・トレーニングモジュールでは、広告、案内文、職場での資料など日常的・実用的な文章が中心で、内容自体はアカデミックより易しいですが、問題数はやや多めとなります。
問題の形式は選択問題やTrue/False/Not Given(正誤判断)、見出しのマッチング、要約文の空欄補充、文章の挿入位置を選択するものなど様々です。限られた時間内で多くの情報を処理するため、素早く必要な情報を見つけるスキル(スキャニング)が求められます。
スコアはリスニングと同じく、正答数に応じてバンドスコアで評価されますが、同じ正答数でもアカデミックのほうがやや低めに評価される傾向があります。例えば、23~26問の正解でアカデミックは約6.0、ジェネラル・トレーニングはそれよりやや高めになります。また、回答順序や大文字・小文字の指定も守る必要があります。
Writing(ライティング)
ライティング試験は60分間で、2つの課題(Task 1とTask 2)を行います。Task 1は150語以上の文章を書く課題で、アカデミックの場合は図表やグラフの要約や説明、ジェネラル・トレーニングの場合は指定された状況に合った手紙を書く問題が出題されます。Task 2は250語以上のエッセイを書く課題で、社会的なテーマや身近な問題について、自分の意見を論理的に述べます。
ライティングは以下の4つの基準で評価されます。
Task Achievement / Task Response(課題達成度)
Coherence and Cohesion(一貫性と論理性)
Lexical Resource(語彙力の豊富さや正確さ)
Grammatical Range and Accuracy(文法構造の多様性と正確さ)
配点はTask 2がTask 1の2倍あるため、Task 1に20分、Task 2に40分をかける時間配分が理想的です。また、スペルミスや語数不足は減点対象になるため注意が必要です。ライティングでは英語の運用能力だけでなく、論理的思考力や一般教養も問われます。
Speaking(スピーキング)
スピーキング試験は試験官との対面インタビュー形式で、約11~14分間行われます。スピーキングは以下の3つのパートで構成されます。
パート1(約4~5分):身近な話題(仕事、趣味など)についての質問に答える。
パート2(約3~4分):与えられたトピックについて1~2分間スピーチをする。
パート3(約4~5分):パート2で出たトピックに関連して、より抽象的な質問に答えたり、ディスカッションをする。
スピーキングの評価基準は以下の4つです。
Fluency & Coherence(流暢さ・一貫性)
Lexical Resource(語彙力)
Grammatical Range & Accuracy(文法力の多様性・正確性)
Pronunciation(発音の明瞭さ)
内容に詰まっても、黙ってしまうのではなく、言い換えたり例を挙げたりして会話を続けようとする努力が評価されます。試験官はリラックスできるように促してくれますので、自信を持って取り組みましょう。評価基準はIELTS公式サイトで詳しく公開されていますので、自分の弱点と強みを把握して練習すると効果的です。
3. 受験の流れと必要な準備
このセクションでは、IELTSの申し込みから試験当日までの流れと準備事項について詳しく説明します。初心者の方でも安心して試験に臨めるよう、一つ一つ丁寧に確認していきましょう。
申し込み方法と必要書類
申し込み方法
IELTSの申し込みは基本的にオンラインで行います。日本国内ではIELTS公式サイトを通じてアカウントを作成し、希望する試験日程、会場、試験形式(AcademicまたはGeneral、ペーパーまたはコンピューター受験)を選択して予約を完了します。現在、日本では主に日本英語検定協会とIDP(JSAFと提携)が公式のテストセンターとして運営しています。
試験日は空席があれば試験日の3日前まで申し込み可能ですが、特に人気の会場や時期はすぐに満席になることも多いため、余裕を持って予約しましょう。留学やビザ申請にIELTSスコアを提出する場合は、スコアの発行期間を考慮して試験日を設定することが重要です。締切の2~3ヶ月前までに受験するのが理想的です。
必要書類・情報
申し込みの際に必要なのは有効期限内のパスポートです。IELTSの申し込みおよび受験時の本人確認には必ずパスポート(原本)が必要となりますので注意してください。運転免許証など他の身分証明書は使用できません。また、試験を申し込む際に「アカデミック」か「ジェネラル・トレーニング」のいずれかを選択する必要があります。そのほか、住所や連絡先(メールアドレス)の入力、支払い方法の指定を行い、受験料を支払えば申し込み完了となります。
受験料と支払い方法
IELTSの受験料は、現在27,500円(税込、2023年時点)となっています。ペーパー受験でもコンピューター受験でも料金は同額です。支払いはオンライン申し込み時にクレジットカードまたはコンビニ払いで行います。支払い完了後に確認メールが送付され、席が確保されます。
受験日の変更やキャンセルは主催団体の規定によりますが、試験日の5週間前を過ぎるとキャンセルしても返金ができなくなったり、日程変更が1回のみ無料で認められたりするケースがあります。必ず各テストセンターの規定を事前に確認しておきましょう。
受験確認書
試験日が近づくと、オンラインの受験者ページで「受験確認書(Confirmation Letter)」が発行されます。これは試験会場や集合時間、持ち物、スピーキングテストの日時などが記載された受験票の役割を果たします。PDF形式でダウンロードできますので、念のため印刷して持参しましょう。
試験会場と日程(日本国内の主要会場)
試験会場
IELTSは日本全国の主要都市(札幌、仙台、東京、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸、広島、福岡、熊本など)で定期的に開催されています。最近では東京や大阪など大都市を中心に、コンピューター受験専用会場が設置されており、より頻繁に試験が実施されています。自宅から通いやすい場所を選ぶとよいでしょう。
試験日程と頻度
ペーパー試験は世界共通の日程で行われ、主に土曜日(月3回程度)と木曜日(月1回程度)に設定されています。一方、コンピューター受験は会場ごとに柔軟に設定されており、特に都市部では週に複数回の試験が開催されています。スピーキング試験は同日または筆記試験日の前後7日以内に別途設定されますので、受験確認書で必ず日時を確認しましょう。
試験当日の流れと持ち物
持ち物チェック
試験当日に必要な持ち物は以下の通りです。
パスポート(原本)
申し込みに使ったパスポートと同一で、有効期限内のものが必要です。
パスポートのカラーコピー
一部のテストセンターではA4サイズのカラーコピーの提出が求められます。
筆記用具(鉛筆HBまたはB、消しゴム)
シャープペンシルも可(ボールペンは不可)。
透明な容器の水
ラベルを外した透明なボトルに入った水のみ持ち込み可能です。
受験確認書
印刷したものを持参すると安心です。
腕時計(会場により持ち込み可・不可あり)
スマートウォッチは不可です。
それ以外の荷物や貴重品、スマホなどの電子機器は試験室には持ち込めません。会場の指定場所に預けましょう。
試験当日の受付と本人確認
試験会場に到着したら受付でパスポートを提示し、本人確認を受けます。また、スコア証明書に使用される写真撮影や指紋登録も行われます。受付完了後、指定された席に着席します。
試験(Listening→Reading→Writing)の進行
筆記試験は休憩なしで以下の順で実施されます。
Listening(約40分)
Reading(60分)
Writing(60分)
リスニングは1回のみ音声が流れます。ペーパー受験では解答を書き写すための10分間が追加されます。各セクション終了時刻が来たら試験官の指示で即座に解答を止め、次のセクションへ進みます。途中退席やトイレ休憩は原則認められないため、必ず事前に済ませておきましょう。
スピーキング試験
スピーキングは約11~14分間の対面式インタビュー形式です。筆記試験の後、同日か別の日に指定された時間に受験します。面接時にもパスポートを提示しますので、常に携帯してください。多少のミスは気にせず、試験官とのコミュニケーションを重視しましょう。
試験当日の注意点
遅刻すると受験できないため、時間厳守で行動してください。服装は自由ですが、英語の文字が書かれた服は避けることが推奨されます。また、体調管理や防寒対策、眼鏡やコンタクトレンズの準備も忘れずに行いましょう。
試験結果と成績表の受け取り
試験終了後、ペーパー受験では約13日後、コンピューター受験では3~5日後にオンラインで結果が確認できます。その後、公式のスコア証明書(Test Report Form)が郵送されます。追加送付サービスを利用して出願先の大学などへ直接送付することも可能です。
4. IELTSの勉強方法と対策
IELTSで目標スコアを達成するためには、効果的な学習計画と各セクションに応じた対策が欠かせません。ここでは初心者向けに、勉強方法や対策のコツ、役立つ教材などを紹介します。
効果的な学習計画の立て方
目標スコアを設定する
まず、志望大学や移住先が求めるスコアを明確にしましょう。公式模試や過去問を解いて現在の英語力を把握し、目標スコアとの差を把握します。たとえば、模試で5.5、目標が7.0ならば、1.5のスコアアップが必要です。
学習期間と時間配分
IELTSでスコアを1つ(1バンド)上げるには一般的に約200時間の学習が必要とされます。そのため、自分の目標スコアと現在の実力差に応じて学習期間を逆算しましょう。
例えば半年間でスコアを6.0から7.0に上げたい場合、週8~10時間(月間30~40時間)程度の学習時間が必要です。無理なく継続できるように、平日と週末の学習時間を計画的に配分しましょう。
弱点分析と学習バランス
IELTSは総合的な英語力を問われる試験です。模試などを通して自分の得意・不得意を明確にし、苦手なセクションに多くの時間を割きつつ、他のセクションもバランスよく伸ばすよう意識しましょう。週ごとに重点的に対策する分野を決める方法も効果的です。
各セクションの対策方法とコツ
Listening対策
日頃から多様な英語(イギリス英語、オーストラリア英語など)を聞く練習をしましょう。公式問題集の音声を使い、設問の先読みやキーワードの予測をする練習が重要です。また、ディクテーション(聞き取った内容を書き取る練習)を取り入れると、聞き取り精度が向上します。
Reading対策
Readingセクションでは、速読(スキミング)と情報の抜き取り(スキャニング)が重要です。各段落の主題文を素早く見つけ、設問に関連する情報を効率よく探す訓練をしましょう。英字新聞や雑誌の記事を毎日少しずつ読むこともおすすめです。問題の種類(True/False/Not Givenなど)ごとに出題パターンを理解して、間違えやすい問題を徹底的に復習しましょう。
Writing対策
ライティングは、Task 2(エッセイ)が配点の2/3を占めるため、特に重視しましょう。エッセイの構成(序論・本論・結論)を型として覚え、トピックに応じて自分の意見を素早くまとめる練習をします。Task 1ではAcademicならグラフや図表の説明、General Trainingなら手紙を書く形式に慣れましょう。書いた文章は添削を受け、語彙力や文法力、論理性を改善していくことが効果的です。
Speaking対策
スピーキングでは日常会話から抽象的なトピックまで幅広く出題されます。毎日数分でも英語で話す練習を習慣化し、模範解答例を参考に自分の答えを考えてみましょう。実際の試験と同様に、トピックに沿って1~2分間話す練習を繰り返すのも重要です。間違いを恐れず、コミュニケーションを取ろうとする姿勢が評価されます。
おすすめの教材・参考書
公式問題集(Cambridge IELTSシリーズ)
公式問題集はIELTS本番の出題傾向を掴む上で最も効果的な教材です。過去問題と音源が含まれており、繰り返し練習すると良いでしょう。最新版だけでなく、少し古いバージョンでも役立ちます。
IELTSスピーキング・ライティング対策本
『IELTSスピーキング完全対策』『IELTSライティング完全攻略』のようなセクション別の対策本も役立ちます。高得点者の回答例や、エッセイ構成のテンプレートが参考になります。
語彙強化教材
『IELTS英単語4000』などIELTS専用語彙教材は、試験によく出る語彙をテーマ別に効率よく学習できるのでおすすめです。
IELTS公式サイト・無料オンライン教材
IELTS公式サイトでは無料で模試や学習教材が公開されています。また公式YouTubeチャンネルではスピーキングの模擬面接動画があり、面接の雰囲気に慣れるのに効果的です。
語学学校・オンラインサービスの活用
独学が難しいと感じる場合は、語学学校やオンライン英会話を活用しましょう。専門家から定期的にフィードバックを受けることで、効率よく弱点を克服できます。IELTS専門コースやコーチングサービス、オンラインの添削サービスを活用し、計画的にスコアアップを目指しましょう。
短時間でも毎日継続的に学習することが、IELTSのスコアアップにつながる秘訣です。
5. IELTSのスコア活用とメリット
取得したIELTSのスコアはさまざまな場面で役立ちます。ここでは、留学・進学、移住・ビザ申請、就職・キャリアアップという3つの観点から、IELTSスコアの具体的な活用方法とそのメリットについて紹介します。
留学・大学進学でのIELTS活用
IELTSは、イギリス、オーストラリア、カナダ、ニュージーランドなど英語圏の国々に留学する際に、事実上の標準的な英語試験として扱われています。これらの国々のほぼすべての大学や専門学校でIELTSスコアが英語力証明として認められており、それぞれの教育機関が求めるスコアを公表しています。例えば、イギリスでは学部課程への入学でOverall 6.0〜6.5、大学院ではOverall 6.5〜7.0程度を求めるところが多いです。
また、アメリカの大学留学においてもIELTSは広く受け入れられており、約3,000の教育機関で公式にIELTSスコアが認定されています。その中にはハーバード大学やイェール大学など、アイビーリーグを含む著名な大学も多数あります。TOEFLのほうが有名ではありますが、スピーキングを対面で受けられるという点や、イギリス英語に慣れている人にとってはIELTSのほうが受験しやすいでしょう。
さらに、高いIELTSスコアを取得していると、入学後に英語補習コースを受ける必要が免除されたり、一部の大学や政府が提供する奨学金において有利になることがあります。例えば、オーストラリアの留学ビザ申請ではIELTSで7.0以上のスコアを取得している場合、英語能力の条件を十分満たしているとみなされ、審査がスムーズになることがあります。
日本国内でも、近年グローバル人材を育成するため、IELTSスコアを大学入試に活用する大学が増えています。AO入試や帰国子女入試でIELTSスコア提出を認め、一定以上のスコアがあれば英語試験免除や加点措置を受けられることがあります。そのため、高校生のうちからIELTS受験を目指す人も増えています。
移住・ビザ申請でのIELTS活用
IELTSは海外移住やビザ申請においても重要な役割を果たします。特にオーストラリアやニュージーランドでは、永住権や技術移民ビザの申請でIELTSスコアが正式な英語能力の証明として求められています。例えば、オーストラリアのポイントベースの技術移民制度では、IELTSの各技能6.0以上が最低条件であり、7.0や8.0を取得するとさらにポイントが加算され、移住審査が有利に進みます。
カナダの永住権申請制度であるExpress Entryにおいても、IELTSのGeneral Trainingモジュールのスコアが必要です。IELTSスコアはカナダ独自の言語能力基準(CLB)に換算されますが、各技能7.0以上(CLB9相当)を取得すると移民審査で大きく加点されるため、IELTSスコアを上げるための受験者が世界的に増えています。
イギリスの場合はビザ申請に特化したIELTS for UKVIという種類があり、特に配偶者ビザ申請などではIELTS Life Skillsというリスニングとスピーキングだけの特別な試験が求められます。国によってIELTSの活用方法や求められるスコアは異なりますが、世界的に認知度の高いIELTSを取得しておけば、多くの国で活用できるため非常に便利です。
また、海外で働く際にもIELTSスコアが役立つことがあります。特に看護師や薬剤師といった専門職ではライセンス取得の際にIELTS7.0以上が求められるケースがあります。例えばイギリスの看護師登録ではIELTS各技能7.0以上が必要です。IELTSスコアは実践的なコミュニケーション能力を証明するため、専門的な職種や海外企業の採用試験で重視される傾向にあります。
就職・キャリアアップの可能性
日本国内の就職においては一般的にTOEICスコアが広く使われていますが、最近ではグローバルに展開する企業や専門性の高い職種においてIELTSスコアを評価する企業も増えています。特に外資系企業やグローバル部門でIELTSスコアを提示すると、スピーキングやライティングの能力が証明できるため、他の候補者との差別化につながります。
一部の企業では海外赴任や国際プロジェクト参加の要件としてIELTSスコア提出を求めるケースも出ています。TOEICはリーディングとリスニングの受動的スキルが中心ですが、IELTSは能動的なコミュニケーション力が評価されるため、国際的な仕事を目指す人にとっては将来的に有利です。
さらに、転職やキャリアチェンジを考える際にもIELTSスコアは強力な武器になります。求人応募書類に「IELTS7.0」と書くことで、採用担当者にしっかりとした英語運用能力があることを伝えられます。特に通訳者や翻訳者など語学を専門とする職業でもIELTSスコアをスキル証明に活用している例があります。
最後に、IELTSの勉強を通じて英語の4技能をバランスよく鍛えることで、総合的な英語力の底上げが図れます。難しいエッセイを書いたり、自分の意見を英語で表現できるようになる経験は、自信にもつながります。スコアの有効期限は2年間ですが、そこで身につけた英語力は一生涯役立つため、IELTSへの挑戦そのものが自己成長やキャリアアップにつながる大きなメリットとなります。
6. IELTSのよくある質問(Q&A)
初心者の方がIELTSについて抱きやすい疑問や不安をQ&A形式で解説します。
Q: IELTSのスコアに有効期限はありますか?
A: はい、IELTSスコアの有効期限は試験日(筆記試験日)から2年間です。2年を過ぎると基本的に公式なスコアとして提出できなくなります。大学や移民申請の際は、期限内のスコアを提出する必要がありますので注意しましょう。
Q: 何度でも再受験できますか?スコアが上がらない場合どうすればいいですか?
A: IELTSの受験回数に制限はありません。受験料と試験日の空きさえあれば何度でも受験できます。ただし、闇雲に再受験してもスコアが伸びにくいため、前回の試験結果を分析し、自分の弱点を把握して集中的に対策するのが効果的です。また、日本でもコンピューター受験者を対象に、一度受験した試験のうち特定のセクションだけ再受験できる制度(One Skill Retake)が導入されています。
Q: AcademicとGeneral Trainingの違いは?どちらを受けるべきですか?
A: Academicは主に大学・大学院進学や専門職資格取得を目指す人向けで、学術的な内容が出題されます。General Trainingは移住、海外就労、高校や職業訓練コースへの進学を目指す人向けで、日常的・実用的な内容が中心です。ListeningとSpeakingは共通ですが、ReadingとWritingの内容が異なります。受験目的(留学ならAcademic、移住ならGeneral)に応じて選択しましょう。
Q: 日本人はどのセクションが苦手ですか?その克服方法は?
A: 日本人受験者は一般的にスピーキングとライティングの点数が低い傾向にあります。学校教育がインプット(読む・聞く)中心で、アウトプット(話す・書く)の練習が不足しがちだからです。スピーキング対策としては、日常的に英語を声に出して話す練習を積むことやオンライン英会話などを利用してネイティブと話す機会を作ることが効果的です。ライティングでは英語で直接論理的に考える習慣をつけ、簡単でも良いので英語で考えてから書くようにしましょう。
Q: TOEFLやTOEICと比べてIELTSの難易度はどのくらいですか?
A: IELTSの難易度はTOEFLと同等レベル(大学進学基準)の高度な英語力を要求します。TOEICはListeningとReadingのみでビジネス英語中心のため、スピーキングやライティングが加わるIELTSのほうがより難易度は高いと感じられることが多いです。一般的な換算では、IELTS6.5はTOEFL iBTで80〜90点程度、TOEICで900点以上に相当するとされています。ただし、個人の得意分野や試験との相性によって難易度の感じ方は異なります。
Q: どんな人がIELTSに向いていますか?
A: IELTSは留学や海外移住を目指す方、グローバル企業での就職・昇進を目指す方に特に向いています。また、バランスの良い総合的な英語力(特にスピーキングとライティング)を伸ばしたい方、コミュニケーション力を重視する方、イギリス英語や多様な英語圏の表現を学びたい方にもおすすめです。資格試験としてだけでなく、実践的な英語トレーニングとしても役立ちます。
Q: IELTSを受けるメリットは何ですか?
A: IELTS受験を通じて英語4技能(読む・聞く・書く・話す)のバランスが改善され、実践的な英語力が身に付く点が最大のメリットです。また、自分の英語力が国際的な基準で明確に示されるため、自信につながります。さらに、試験対策を通じて世界の時事問題や社会課題への理解が深まる副次的効果もあります。目標スコアに向けて段階的に学習を進めることで、達成感やモチベーション維持にも役立つでしょう。