今の会社で、日本側での通訳採用に少しだけ関わった事があります。その際に、社内通訳を長年重ねてきている人の履歴書をいくつか見ました。それらに記載されている職務経歴は以下のようものでした。

①英文事務など、英語に関わる仕事を数年経験
②翻訳専属の仕事を数年経験
③通訳割合少なめの仕事を数年経験
④通訳割合多めの同時通訳の仕事を数年経験

おおよそ、英語を使う仕事→翻訳→通訳→同時通訳と、登ってきているイメージです。私の場合ですと、2011年4月からインドで2年インハウス翻訳、2013年7月からマレーシアでのインハウス通訳での実務を経て、2015年の1月にシンガポールで勤務を始めました。

現在では、合わせるとインハウスでの翻訳経験2年+インハウスでの同時通訳2年半になります。2011年の2月にインド行きの契約書にサインをしたのですが、当時を振り返ってふと思うことがあります。

あの時インドに行かないで日本で4年間勉強しながら求職活動をしていたら、今と同じレベルのスキルを身につけて、今対応している仕事が出来ていただろうか?

私はNoだと思っています。ある意味で上記の①~④のプロセスを一段・二段飛びで上がってくることが出来たのはラッキーだった面もあります。しかし、リスクをとりながらも海外をメインに求職活動をしたこと、給料的に安くても将来への投資と理解し業務経験を積む事を優先したこと、自分で勉強もして努力をしたこと、職場やそれぞれの国で良い出会いに恵まれたことがあって、今の状態があります。結果として、悪くはないペースでキャリアアップ出来たのではないか、と感じています。この記事では「キャリアアップ戦略」をまとめたいと思います。

そもそも「キャリアアップ」とは何か?

キャリアアップには主に3つの要素があると思います。

1)給料を上げる(例:年収300万円→400万円)
2)責任範囲や職務領域を広げる(例:翻訳が出来る→逐次通訳が出来る→同時通訳が出来る)
3)仕事での肩書きやポジションを上げる(例:係長→課長等)

しかし3に関しては、通訳・翻訳の場合だとあまり無い印象です。あえてありそうなものを上げると、

・翻訳部門のいちメンバーからその部門を統括する管理職になる
・ゲームの会社などで翻訳メンバーの一員から、製品のローカリゼーションの責任者になる

という感じで、純粋な通訳・翻訳スキルのみならず追加で他の要素が必要な場合が多い印象です。また、翻訳チームを抱えるほど常時通訳・翻訳を必要とする会社が限られていたり、翻訳部門統括に人事・総務担当者を入れて済ませたりすることもあり、あまり3の要素は関わらないと考えます。そうなると、1と2が重要になります。

社内通訳・翻訳の立場で、給料を上げるにはどうするか?

日本ではひとつの会社に入って定年まで勤め上げ、社内で出世のはしごを上るのが「普通」とされてきました。日本国外でもこういった考えの人もいなくはないですが、海外では多くの人が転職を通して「キャリアアップ」を実現しているのが主流です。また、通訳・翻訳業界では1-2年で(早いと1年以内で)次の会社へ移り、業界経験を積み上げて様々な仕事に対応できるようにするのが普通ですので、転職が最も主流のキャリアアップ手段となります

「会社側が給料を上げないのか?」と思われるかもしれませんが、基本的にはあまり無いと思います。各社で通訳・翻訳一人当たりの予算が決まっており(時給XXXX円位の人を採用する、という感じ)、どんなに有能な人でも、その人を引き止めるために給料を25%増やすといったことは普通は無いと思います(海外の仕事でスタートがよほど激安であればありえますが)。自分のスキルを客観的に見て、もっと高い給料をもらえると思えば、労働市場に問うのがフェアにして通常のやり方だと思います。

では、ただ転職をすれば良いのか?というとそういう訳でもないと思いますので、戦略を私なりにまとめました。

方法① 平均給料が高い会社で仕事をする

非生産部門である通訳・翻訳に対してかけられるお金は、一般的に会社のサイズや扱う金額の大きさによります。また、日本では「社内の給料バランス」を重視するので、製造部門の人の給料、及び他の非生産部門の人の給料がどの位なのか、といった情報をベースに通訳・翻訳の予算が決まる印象です。つまり、社内の同僚が高い給料をもらっている会社では、通訳・翻訳に対する給料も比較的に多いと考えられます。それを元に転職を考えるというのも、一つの解決法になります。

方法② 就業先をより「上流」にする

製造業(特に自動車業界)では、ティア1、ティア2といった言い方をよく耳にします。この階層構造で見たときに、一般的に扱う金額は上に行くほど大きくなり、会社のサイズも大きくなります。通訳として仕事をする場合は、できるだけ上の階層で仕事をした方が待遇が良くなることが予想されます(ただし、経験値やクオリティなどの要求事項もそれに応じて上がると思われますが)。また、同じ会社内でも、部門付きの仕事より役員対応等の仕事をする方が責任や難易度が高いので、給料も上になる傾向にあります。

方法③ 就業場所を変える

日本国内での求人を見てみると、地方では製造業の翻訳が通常時給1,400円ぐらいですが、似たような求人が東京では2,000円近かったりする事もあります。もちろん翻訳対象の文書などが違う可能性はありますし、東京と地方で物価が違うことが反映されている、という面もあり同じものを比較していない可能性はあります。とはいえ、一般に東京の方が給料は高いです。

またアジアで通訳・翻訳をする場合、現地採用として仕事をすると概ね給料は日本より下がります(その分生活費も下がっていますが)。しかしシンガポールの場合は例外で、円安傾向も手伝ってかエントリーからややミドルレベルの仕事のマーケット価格を見ると日本とほぼ同じまたはやや上になっています。

日本で時給1,700円→月給272,000円(税抜き)
シンガポールで月3,500SGD→月給297,500円(税抜き)

ただし、シンガポールでは家賃が高く、ユニット丸々借りると月給の半分以上が無くなるとほどなので、ルームシェアになります。それでもOKという人は、検討の余地があるかもしれません。

方法④ 翻訳→通訳に移る

翻訳・通訳はそれぞれで異なった難しさがあり、まったく違ったスキルが必要とされます。それぞれの人の性格や趣向、スキルも関係してくるので一概には言えないのですが、日本のインハウス通訳・翻訳を市場価格で見ると、一般的に通訳の方が給料が高い傾向にあります。ですので通訳が出来るように(特に同時通訳)なったほうが、給料が上がりやすい傾向にあります(ここではそれが良い・悪いといった議論は避けます)。

私の通訳・翻訳キャリアアップのまとめ

なんだかんだで「キャリアアップ」といっても派遣会社が「就業経験年数」で見てしまっている印象があります。しかし、海外に出て業務経験を積んで「既成事実」を作ってしまうという方法も視野に入れるのであれば、使い方は様々です。

エントリーで海外就職を使う、エントリーは日本で始めても給料額を上げる為に海外に出る、またはワンランク上の役員・現地法人社長対応などの仕事を取りに行く(案件自体は少ないですが)など、それぞれ選択肢があります。海外・国内市場の景気動向や自分のライフステージを見ながら戦略的に利用するのが良いと思っています。

次回は、社内通訳(インハウス通訳)とフリーランス通訳の違いなどをまとめます。

関連記事

矢野 文宏 (fumihiro yano)

現在は在シンガポール日系メーカーで通訳・翻訳として勤務。以前に印度で2年翻訳、1年半マレーシアで通翻経験もあり。通訳・翻訳者になる第一歩をサポートするやのなのね通翻研究所でSkype相談随時受付中! 他、海外の生活や旅行を書いた電子書籍を6冊出版。日々の海外での生活はブログにて紹介。 ツイッター@yanonanone  Google+
他にもこんな記事を書いています
comments powered by Disqus
ダウンロードするには、口コミの投稿が必要です