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こんにちは、上田裕美です。前回の記事では、韓国の国際大学院という存在を知り、リサーチの結果入学のハードルが想定以上に低かったことから、実際に進学を目指すことにした経緯について、ご紹介しました。

今回は、院への入学のため、具体的にどんな準備をしたかに関して、ご説明します。さて、院への入学申請に必要な書類は主に以下5点であることがわかりました。

  1. 英語力の証明
  2. 推薦状二通
  3. 研究計画書
  4. 志望動機書
  5. 大学の卒業証明書、成績証明書

英語力の証明はTOEICでOK、TOEIC受験準備と同時に、志望校の選定

どの院を受けるにせよ、まずは(1)だろうということで、迷わず一番簡単なTOEICを選びました。TOEICはそれまでにも2〜3回受験したことがあり、Aクラス(860点以上)のスコアは取得済み。

ただ、最後の受験から5〜6年が経過していたので、再度問題の形式と時間配分を確認する必要がありました。

そこで、ソウル市内の書店で問題集を購入し、過去問題を3回分ときました。そのとき意識していたのは、主に①問題形式の確認、②問題毎の時間配分の確認、③問題を解くスピードの調整です。

TOEICは試験問題自体の難易度は高くないものの、問題数が多いので、ハイスコアをとるためには②と③が重要です。

院への申請時期を考え、スコアが悪かったときに再受験できるよう早めに受けておきましたが、初回で無事Aクラスのスコアを取得。

それでも心配だったので、念のため志望校に電話をかけ、実際のスコアを伝えてそのスコア(900点前後)で大丈夫かと問い合わせをしたところ、2校とも問題ないとの返事をもらえたので、(1)の準備は完了(こういうフレキシブルな対応は韓国の大きな魅力のひとつです!)。

TOEIC準備と同時に、どの院を受けるのか、志望校の選定を進めました。ある程度合格のめどがついていたので、SKYと呼ばれるソウル国立大学、高麗大学、延世大学を受けることに。

が、2012年9月入学に向けて受験準備を始めた同年3〜4月頃にはソウル大学の締め切りのみとっくに過ぎており、あっさり残りの2校に絞る羽目になりました(何事も準備は早め、早めに……)。

ちなみに、専攻(国際貿易/国際関係/開発)は入学以降決めるシステムだったので、悩む必要がなく、2校とも大枠の国際関係学で申請しました。

推薦状は大学の恩師と語学学校の先生に

次に、推薦状の用意。通常は大学の教授に依頼すべき性質のものですが、なにせ卒業から10年近く経っていたので、どうしようかな、と。

まずは卒論の主査をしてくださった大学の恩師、以前勤めていた職場でお世話になった元上司に連絡をとりました。同時に、直前まで通っていた韓国語の語学学校の先生はどうかと考え、志望校2校に確認してみることに。

通常なら当然NGですが、韓国はあらゆる面でいい意味のゆるさがあり、また韓国の大学付属語学学校の先生は院卒が条件と知っていたので、なんとかなるんじゃないかと。問い合わせた結果、2校ともOKとのこと。

元上司からも快く了解をいただけたものの、推薦状の性質を考え、学業面でのアピールがよりできる、大学の恩師と、語学学校の先生にお願いすることに。これで、(2)の準備完了。

研究計画と志望動機はオンラインエッセイ作成指導サービスとネイティブの友人頼みで作成

次に、研究計画書と志望動機書。高麗大学の場合、A Statement of Purposeという、この二つを合わせた内容のエッセイを1200語程度(A4サイズで3ページ前後)にまとめて提出する必要がありました。

そこまで長いエッセイではないのですが、これまでさくさくと準備を進めていたものの、ここにきた途端、ちょっとつまづいてしまいました。

正直に言って、私はこの時点では模範的な院を目指す人間(仮に、そういうモデルが存在するとしたら)ではなかったと思います。

一般的に言って、大学院とは、本来何かしら研究したい内容があって進学するものでしょうから、そういう人にとって、このふたつは当然すぐにでも書ける内容なはず。

ですが、私の場合、ソウルで生活しているという物理的な条件が前提としてあり、さらに、単純に「面白そうだから」と院に行くことにしただけなので、特定の研究テーマがあったわけでもなく、それどころか、国際関係学とは何ぞやといった知識すら、持ち合わせていませんでした。

もともとの勉強好きな性分と、韓国社会や日韓関係についてもっと知りたい、英語力は高めたいけれども「英語『を』勉強」するよりも「英語『で』何かしたい」という漠然とした気持ち。

その時点での私にはそれしかありませんでした。とはいえ、なんとかしないといけないので、まずは日本語で思いつく限りのぼやっとした考えや意見を紙に落とし始めました。

と同時に、10年ぶりの英文エッセイを書くために、オンラインで英文エッセイの書き方を指導してくれるサービスを探したり、ネイティブの友人に相談したり、と準備を始めました。

A Statement of Purposeとは、

  • 自分にはこういう能力があり、
  • その能力によってこれまで学業・職業上こういったことを成し遂げ、
  • しかしこの先やりたいことのためにまだここらへんが足りないので、
  • あなたのところに入って、さらにこういう研究をし、
  • その成果によって世の中にこういう風に貢献します
  • (そしてその貢献によって貴校の名声をさらに高めます)

ということを宣言する場だと私はざっくり解釈しました。上述したように、私はその時点で研究内容をしっかり想定していたわけではありません。

が、日本でも他の国でもなく、わざわざ韓国で国際関係学を学ぶ意義を伝える必要があると理解したので、これまでの経験とその過程で考えてきたことを、上の順序に沿うように整理して、まとめました。

その時点で書けることをすべて書いたつもりではありますが、ほとんどこじつけのようなまとめかたでしたし、実際に院に入ってした研究も、卒業後のキャリアも、そのとき書いた内容とはまったく異なっています。

これは本来のあるべき姿ではないのかもしれませんが、少なくとも私にとっては、院への進学は、これまでしてきた数々の選択のなかでも最も良かったことのひとつです。

余談ですが、個人的には、何かを始めようとするとき、あまりしっかりした理由というのは必要ないんじゃないかと考えています(もちろん現実的な制約は無視できませんが)。

このときもそうでしたが、実際にしてみないとわからないことがほとんどですし、いくら事前に想定をしていても、しているうちにどんどん想定外に広がっていくものだと思うからです。

なにはともあれ、エッセイを書き上げるまでになんだかんだで1ヶ月くらいはかかってしまいましたが、なんとか書き上げ、最後にネイティブの友人に英文チェックをしてもらい、(3)(4)とがようやく完了。

(5)は入学申請準備中にたまたま一時帰国の予定があったので、日本滞在中に母校を訪れ、無事入手し、さくっと完了。これで、入学申請に必要な書類が揃いました。

初めて国際大学院の存在を知ったのが2012年1〜2月、リサーチを始めたのが3月、実際に準備を始めたのが3〜4月、最終的に必要書類を院に提出したのは、締め切りぎりぎりの5月。

書類提出のあと、高麗大学のみ電話によるごくごく簡単な面談があり、約1ヶ月後に、無事高麗大学と延世大学から合格通知を受け取ることができました。

次回からは、院入学後の、実際の学生生活について、ご紹介していく予定です。