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右半球も言語学習に影響

近年脳画像の分析方法が発達するにつれて、脳活動の新たな知見が明らかにされています。元来言語をつかさどる脳活動は利き手に関わらず、多くの人が左半球でなされているとされてきました。

しかし昨年アメリカの科学雑誌「the Journal of Neuroscience」に発表された日本人研究者の研究で、右前頭葉、つまり右半球も言語学習に大きく貢献していることが分かりました。

この論文の実験では、日本語を母国語とする成人が英語を短期間に集中的に学習し、学習前と学習後、さらにその1年後にその成人たちの脳画像を撮影し、分析しています。

それによると、学習前よりも右半球の前頭葉44野と尾状核の連結が学習後には強固になり、さらにその44野そのものの容積が大きくなっていたというのです。

44野というと左半球では言語野として知られている部分であり、尾状核というのは神経細胞の集まる部分に相当します。尾状核は現在では主に学習と記憶に関係すると考えられています。

継続により連結は強固に、脳の容積は増加

この連結はその短期間の学習期間終了後に、学習を続けなければ、元通りになってしまう結果だったようですが、1年後も勉強を続け、成績を維持していた学習者の同部位の連結強度はより増加した状態を保っていたそうです。

さらに英語の語彙が豊富な英語学習者の脳とそうではない英語学習者の脳を比べても、前者のほうがやはり右半球の44野と尾状核の連結が強く、44野そのものの容積が大きいとの結果が得られているとのことでした。

この結果から、新しく言語学習することで、従来使われていなかった第2の言語野とも言える右半球の一部が新しく活動し始め、学習の継続はその容積さえも増やすこと、他の領域との連結が強固になり、outputを容易にすると言えるでしょう。

「大人の頭は柔軟ではないから新しいことは覚えられない」という声をよく聞きますが、このように実際にデータとして、成人でも脳活動が衰えるばかりか、新たな活動パターンを認めることが証明されるようになっています。

脳活動については、まだまだ分からないことばかりですが、従来考えられていたよりも、さまざまなパターンで私たちの脳細胞は活性化をしているようです。

参考文献
“Dynamic neural network reorganization associated with second language vocabulary acquisition: a multimodal imaging study”